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2016/03/16

【東京大学金融教育研究センター(CARF)】フィンテックがもたらす決済サービスや法制度、変わりゆく社会・金融・経済の行方、公開シンポジウム「フィンテックとこれからの金融システムのあり方」開催!

| by:サイト管理者


 2016年3月11日(金)、東京大学金融教育研究センター(CARF :Center for Advanced Research in Finance )は、東京大学本郷キャンパス 伊藤謝恩ホールにおいて、公開シンポジウム「フィンテックとこれからの金融システムのあり方を開催した。

 東京大学金融教育研究センターは、金融研究・教育のアジアにおける世界的拠点となることを目的に掲げ、2005年4月東京大学に設置され、金融経済学の先端理論研究や金融・資本市場に関する実証研究の推進、健全な経済発展のためにあるべき金融システムのデザインや政策提言、世界トップ水準の金融研究・金融教育を進め、最先端の資金運用・資金調達・リスク管理の手法開発を行うとともに、21世紀の金融を担う研究者・リーダーの育成を行っている。

 基調講演「フィンテックと決済サービス」では、アフラック・シニアアドバイザー(元日本銀行理事・元大蔵省銀行局調査課長)木下 信行氏が登壇。金融サービスの生産構造や決済システムとリスク管理について解説した上で、情報通信技術の革新・環境変化・ブロックチェーンの登場に伴う決済サービスに対するニーズの変化と対応、フィンテック促進・イノベーションに向けた政府の役割や金融制度上の課題などについて言及した。

 講演「フィンテックが目指す社会と法制度」では、森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 増島 雅和氏が登壇。FinTechは、最新情報技術を活用した金融サービスの再構築を図る取組みであるとし、商品、販売、インフラといった各レイヤーからの横断的な捉え方が必要になると指摘。その上で、産業における金融の役割を踏まえた理解と、スマートコントラクトなどデジタル化が進む契約制度のパラダイムシフトについて解説した。

 講演「フィンテックは金融と経済をどう変えるか」では、東京大学 経済学研究科 教授 柳川 範之氏が登壇。金融の本質は、お金よりもむしろ情報の活用にあるとし、フィンテックの進展によって金融業や日本経済がどのように変化していく可能性があるか、構造変化や本質的な変化の芽、ビジネスモデルの再構築と規制・制度の変革、ブロックチェーンや仮想通貨など検討課題を挙げ、今後の「フィンテック研究フォーラム」活動について発表した。



 パネルディスカッション「フィンテックと金融制度のあり方」では、パネリストとして、お金のデザイン 取締役COO 北澤 直氏、マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻 庸介氏、東京大学 法学政治学研究科 教授 藤田 友敬氏、増島氏が登壇。柳川氏がモデレーターを務めた。



 パネルディスカッションに先立ち、フィンテック領域を代表する企業として、お金のデザイン 北澤氏、マネーフォワード 辻氏より、それぞれの設立の背景とミッション、サービスの特徴や協業事例など、課題解決に向けた今後のビジネス展開についてプレゼンテーションが行われた。



 藤田氏は、フィンテックにはさまざまなジャンルがあるとし、個人資産管理やロボアドバイザーの領域では枠組みへの実質・本質に大きな影響はないとする一方、仮想通貨や決済・ブロックチェーンの領域では深くコミットされている既存の枠組みがハレーションを起こし制度の組み立てが必要となる領域もあるとした。また、スマートコントラクトのようにそもそもの制度のあり方を考えていく領域などについても指摘。それに対して、増島氏、北澤氏、辻氏それぞれの立場から私見が披露されるなどディスカッションが繰り広げられた。



 総括コメントでは、東京大学 金融教育研究センター長 植田 和男氏が登壇。10年以上の運営の中でもこれほどの来場者が集まったことはないとし、フィンテックに対する関心の高さをあらためて感じたとした上で、現状の国家・中央銀行がコントロールしている通貨に対するフィンテックによる変化についての論点、銀行業や資本市場におけるシステミック・リスクと規制強化の広がりなど金融は特別かという論点を紹介。そして、イノベーションをもたらすための日本の若者の競争不足を解消すべく、今後の「フィンテック研究フォーラム」に対する期待感を込めて締め括った。



 その後、会場に隣接するエリアで最初の懇親会が行われ、その後、同センター内の2階にある大正5年からあるレンガ倉庫を利用したレストランに場所を移し、歴史香るアカデミックな雰囲気の中で用意された食事や飲み物と共に、登壇者と参加者同士でリラックスした懇親会が行われた。



 足元では、大手町エリアに開設されたFinTech産業拠点「FINOLAB」(オープニング・イベントの取材レポート)や「FinPitch」に20社超が登壇し日本の金融イノベーションを世界へ発信する「FIBC2016(Financial Innovation Business Conference)」(取材レポート)など民間企業におけるフィンテックの各種取り組みのほか、自民党FinTech推進議員連盟(取材レポート)による海外のフィンテック事情と日本におけるフィンテックの取り組みなど政策対応に向けた「勉強会」の開催や、国会中継 衆議院 予算委員会の中における日本でのフィンテックの推進に関する衆議院議員 秋元 司氏(FinTech推進議員連盟 幹事長)と麻生 太郎氏(副総理 財務大臣 金融担当大臣)の質問/答弁(全文を書き起こし)など、政府レベルでもフィンテックが取り上げられている。

 東京大学金融教育研究センターでは、今後も定期的に「フィンテック研究フォーラム」を開催していくという。これからの東京金融シティ構想の実現をはじめ、新産業の創出とGDP拡大による日本経済の発展とフィンテックを取り巻く産学官連携といった取り組みと合わせて注目していきたい。

(取材、撮影、記事、編集・制作 : GoodWayメディアプロモーション事業部 @株式会社グッドウェイ )



07:38 | 取材:金融・IT業界向け

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