2014年2月18日(火)、テクマトリックスは、東京駅前にある丸ビルホール&コンファレンススクエア会場において、”規制対応を含めたFINCADソリューションの取り組み、展望”をテーマに、今年で2回目の開催となる金融市場関係者向け「FINCAD カンファレンス2014」(定員60名の先着順:無料)を開催した。
最初の挨拶は、テクマトリックス代表取締役社長 由利 孝 氏より、「FINCAD国内発売20周年を迎えて」と題し、国内での独占販売代理店契約を締結して20周年を迎える中、200金融機関、2,500ライセンス使われている現状を踏まえ、資本関係にもあるFINCAD社との密なコミュニケーションを通じて、サブプライムやリーマンショックなど市場環境の危機や変化を乗り越え、金融市場で求められるトータルソリューションを提供していくとした。なお、由利氏は20年前にバンクーバーでこの販売代理店契約を締結した当の本人であり、FINCAD社の取締役を14年間にわたり現在も務めているという。
続いて、基調講演「国際金融市場における2014年の展望」(リサーチアンドプライシングテクノロジー代表取締役 倉都 康行 氏)では、倉都氏自身が30年前にロンドンではじめてデリバティブと出会った当時の様子を振り返りつつ、デリバティブにおける実体経済と関連性の重要性から客観的な視点で国際金融市場を捉え、昨今の特徴として、①危機発生インターバルの短期化、②実体経済とマーケットへの政治の影響、③システミックリスクの波及経路の不透明化、④中央銀行への依存度の高まり、の4点を挙げ、同氏が定義する市場リスク・マップをもとに、新興国や中国と欧州における金融危機の可能性や米国資本市場動向に触れ、日本市場への影響と見通しについて解説した。
次に、来日公演「The Evolution of FINCAD Solutions」(FINCAD Director Analytics Dr. Tony Webb 氏)では、アナリティクス部門の責任者の立場からプロダクトマネジメントと製品の進化について来場者と共有すべく、マーケットのトレンド/ビジョン/製品紹介/2014年の計画について解説した。高速なプライシング、マージンや担保の最適化、CVA、DVA、FVAの取引前におけるリスクの把握とコンプライアンスチェックの重要性の高まりを背景に、バイサイドがセルサイド並みのリスク分析機能を取り込み全社リスクの把握を一層強化している中、ソリューションやプラットフォームへの依存度が高まっている傾向にあるとした。そのような中で、FINCAD社の取組みとして、幅広いプロダクトに対応した分析、拡張性を持ったプラットフォーム、専門家やパートナーによるソリューション、それらを利用できるデスクトップといった4階層の構成とその狙いに触れ、現状の標準製品「FINCAD Analytics Suite」における個別銘柄分析からポートフォリオ分析への進化の仕組み、また、近年オブジェクトモデルをベースに開発を進めている「F3」への中長期的な移行方針と準備プロセス、エンタープライズ化と既存製品のサポート継続を表明、足元の2014年におけるリリース計画(4半期ベース)の内容について紹介した。
その後、休憩をはさみ、特別講演「店頭デリバティブ取引に係る証拠金規制」(メッセージ代表取締役 吉野 正康 氏)では、規制の目的としてシステミック・リスクの回避と清算集中機関への移行促進を挙げ、対象機関、導入時期、証拠金(当初証拠金、変動証拠金)の内容について詳しく解説、さらに、証拠金規制の導入に付随して想定される問題点についても触れた。
そして、最後に、製品紹介「FINCAD最新製品機能紹介」(テクマトリックス カスタムメイドソリューション事業部 高田 光範 氏)では、FINCADソリューションマップとして金融商品評価・分析ツールキット「FINCAD Analytics Suite」、オブジェクト指向型プラットフォーム「F3」、クラウド型サービス「Insight Solutions」について、それぞれのビジネスコンセプト、現状、提供サービスを紹介。また、FINCADの導入支援や開発支援などのプロフェッショナルサービスのほか、ライブラリを利用した市場/信用リスク管理「Trading VaR」、ポートフォリオ管理「Apreccia.3」、ALM「ALARMS」をはじめ、日本独自の仕様に合わせたテクマトリックス独自のサービスを提供していくとした。
全ての講演が修了し、全員で隣接する懇親会会場へ移動。目の前には、ライトアップされた改装されたばかりの東京駅の眺望が広がる中、用意された料理や飲み物と共に、講師やスタッフを交え、参加者同士で意見情報交換するなど、普段、なかなか現場で直接接することのないFINCAD利用ユーザーとメンバーが共にリラックスした雰囲気の中、歓談の場を楽しむ様子が印象に残った。
変化の激しい金融デリバティブ商品の評価とリスク管理といった分野で、20年という長い年月と大きな節目を迎えたテクマトリックスとFINCAD社の取組み。数々の金融危機やシステミックリスクをはじめとするグローバルに複雑化した連鎖に対して、いかに金融機関として不測の事態に備えていけばよいか、環境整備への各国における規制強化に向けた本質的な制度設計の正しい理解と解釈、その上で膨大な危機シナリオに備えた経営判断に必要となる全社リスクの把握と判断基準の明確化など、机上の世界だけでは通用しない世界の中で、国内外のベストプラクティスにもとづき収益向上とリスク管理につながるソリューションやプラットフォームが求められている。属人的なスペシャリストがリードする最先端領域ナレッジのコンポーネント化、ガバナンスに基づく企業組織・オペレーションへの実装に向けた業務プロセスの構築など、FINCADを活用する金融ビジネスに関わる大勢のメンバーが一堂に会した今回の「FINCAD カンファレンス2014」を通じて、より高度な市場形成につながる取組みが広がっていくことに期待したい。
(取材、撮影、記事、編集・制作:藤野 宙志)@株式会社グッドウェイ