2016年9月9日(金)、Finatextとナウキャストは、帝国ホテル3F 雅の間において、初の東大発Fintechベンチャーの経営統合にあたり、「Finatext×ナウキャスト 合同戦略発表会見 記念Fintechシンポジウム」を開催した。
今回の経営統合により、Finatextの持つ個人投資家を中心とした膨大なデータ活用・資産運用サービス構築力と、ナウキャストの持つ新しい指標やアルゴリズム開発力を活かし、資産運用分野での新規ビジネス、グローバルマーケットでの成長を目指していくという。
冒頭に、ナウキャスト 代表取締役、Finatext 代表取締役 林 良太氏が登壇。両社の会社概要と経営統合の背景、新経営体制について紹介。なお、この日の司会進行は、ナウキャスト 取締役会長 研究院客員教授 赤井 厚雄氏が務めた。
Finatextは、ユーザーエクスペリエンスを革新するデザインソリューションと金融テクノロジーを提供するFintech企業で投資モバイルプラットフォーム/ロボアドバイザーエンジン/リアルタイムソーシャルデータ解析などのサービスを提供し、過去2年間の累積約100万ダウンロードを達成し日本最大級の金融コミュニティを形成しているほか、グローバルでも高いプレゼンスを発揮している。
また、ナウキャストは、ビッグデータ解析によるリアルタイム経済分析ソリューションを提供するFintech企業でリアルタイムアナリティクス/Monetary Policy Insights/ビッグデータ事業化などのサービスを提供し、金融政策を先読みする「日経CPI Now」をはじめとする独自経済統計「NowcaSTats(ナウキャスタッツ)」を250社以上の会員企業に配信、政策や投資の重要な判断材料として活用されている。
Finatextの経営陣(取締役CFO/COO 伊藤 祐一郎氏(写真右)、取締役/Co-Founder 経済学博士 戸田 真史氏(写真左))を紹介。
林氏は、Fintechに対する考え方として、金融サービスのアンバンドリングは「日本やアジアでは起こらない(Definitely No!)」とし、「特に日本においては金融機関の力が強すぎる一方、規制強化もあり金融機関ができることは増えない中でテクノロジーに対するニーズは増えており、どうやってユーザーの変わりゆくニーズにうまくマッチしていくのか、そのようなときに我々のようなFintech企業が必要になる。」と語り、新しいエクスペリエンスやテクノロジーを金融機関と(競合ではなく)協業して進め提供していくことを明言。あくまでも、金融機関になるのではなく、テクノロジープロバイダーとしてサービスを提供するというスタンスで、同社の強みであるビッグデータを活用したリアルタイム経済解析技術、金融におけるユーザーエクスペリエンスの革新力、アカデミア・公官庁との強固なリレーションを活かし、金融機関に対するテクノロジープロバイダーとして取り組んでいくというビジョンを明らかにした。
その上で、今後の事業戦略として、ゲーミフィケーション事業、データ・アナリティクス・ソリューション事業、パーソナル・アドバイザリー・ソリューション事業について詳しく紹介。また、カブドットコム証券との提携(実際の取引記録などを活用し、個別の顧客にマッチしたハイクラスなプライベート・アドバイザリー・サービスの開発・提供)について発表した。
続いて、海外戦略について、Finatext Japan Head of Asia / Finatext Taiwan Chairman & CEO 森永 康平氏が登壇。今後の海外展開計画の展開先として台湾、マレーシア、インドネシア、英国、スペインを挙げ、ロードマップとして短期的には各国で日本のサービスをローカライズして提供するところから手掛け、中期的には各国でオリジナルサービスを提供、そして、長期的には各国で独立したチームを組成していきたいとした。また、欧州大手のサクソバンク証券との提携(ナウキャストのオリジナル経済データを使用した独自レポートの配信、グローバル展開を視野にまずは日本国内で配信を行う計画)について発表した。
また、今後の事業戦略について全事業横断の取り組みとして、FIBL(Financial Big-data Innovation Lab:全事業を横断する基礎研究開発機関)、FED(Finance Experience Design:全事業横断のエクスペリエンスデザイン向上の研究開発)の二つを発表。
FIBLの責任者と務めるナウキャスト チーフデータサイエンティスト/R&Dマネージャー 林 祐輔氏より解説、アカデミアとビジネスの架け橋として購買、画像、テキストなどを研究対象にビッグデータ解析によるリアルタイム経済分析のフロンティアとして大学や官公庁、ビッグデータを保有する事業会社との連携を目指すとした。
FEDの責任者と務めるFinatext CCO(Chief Creative Officer) 保田 容之介氏より解説、ファイナンスサービスにおける経験・体験の向上を図り、インターフェース、エクスペリエンス、グラフィックなどを研究対象に金融デザインの啓蒙とデザイン的見地からトレンド研究や金融の触れる化や見える化など一般化を目指すとした。
基調講演「フィンテック業界の今後~産業構造の革新を考える」では、東京大学大学院経済学研究科 教授 柳川 範之氏が登壇。
パネルディスカッション「国内外の政府/規制当局のFintechの取り組み」では、パネリストとして、東京大学 大学院経済学研究科経済理論専攻 教授 渡辺 努氏(ナウキャスト創業者)、金融庁 総務企画局 企画課 信用制度参事官室 企画官 神田 潤一氏、柳川氏が登壇、日経Fintech 編集長 原 隆氏がモデレーターを務めた。パネルの中では、「シードベンチャー同士の経営統合は珍しいが、立ち上げるまでの経緯は?」、「今回はスタートアップ企業同士の経営統合について」、「スタートアップコミュニティと積極的な交流について」などのテーマについて、それぞれの立場から私見が披露された。
全てのプログラムが終了し、会場を移して懇親会へ。短期間で成長を遂げている両社の原動力となるパートナー企業や支援者、メディア関係者が集い、Finatextとナウキャスト両社の今後の更なる成長に向けて、しばし歓談のひと時を祝い楽しむ姿が広がった。
東大発という創業間もないフェーズでのFintechベンチャーの経営統合。その珍しくも迅速な経営判断の背景には、教授や生徒、同じ大学の先輩後輩であることのつながりがもたらす信頼感、安心感、そして挑戦に対する志を共有できる関係がもたらしたところは少なくない。コンシューマの金融体験を革新するテクノロジープロバイダーを目指すFinatextとナウキャストの新体制のもと、テクノロジーとアカデミア・公官庁との強固なリレーションを通じたグローバルレベルの新しい金融サービスの登場に期待が高まる両社の今後の展開に注目したい。
(取材、撮影、記事、編集・制作 : GoodWayメディアプロモーション事業部 @株式会社グッドウェイ )