2015年6月19日(金)、三菱東京UFJ銀行は、新丸の内ビルディングにある EGG JAPAN(日本創生ビレッジ)において、ICTを活用した「お客さまに選ばれる新しい金融サービス」の創造を目的に、ベンチャー企業や個人から技術・ビジネスモデル・サービスに関するアイデアを広く募集、優れたアイデアを表彰するイベント「Fintech Challenge 2015」の DEMO DAY(最終審査)を開催した。
このイベントは、2015年2月27日(金)に募集を開始し、2015年3月19日(木)にキックオフイベント(主催レポート)が開催され、2015年3月31日(火)までにコンテストへの参加登録のあった応募アイデアに対し、一次選考(書類)、二次選考(面接)を行いファイナリストを決定。選考にあたっては、イノベーションの度合い・利用者のベネフィット・ビジネスポテンシャル・実現性のほか、アイデアに対する参加者の熱意やユーザビリティ・実装難易度などから総合的に評価が行われたという。
そしてこの日、見事に選ばれたファイナリスト11組がDEMO DAYに臨み、デモンストレーション・最終審査・表彰式が行われた。DEMO DAYは主催による招待制であるものの、業界におけるメガバンクの新しい取組みとして注目度も高く、取材が許可された表彰式には多くのメディア関係者が訪れた。
開会の挨拶は、三菱東京UFJ銀行 専務取締役 村林 聡 氏が登壇、参加者や関係者へのお礼と感謝の言葉に続き、「Fintech Challenge 2015」開催の経緯を紹介。スマホやタブレットの登場などにより、消費者目線では、まさにこれまでの社会通念が破壊されるほどの利便性向上が起きているとし、また、企業においてもICTを活用した競争優位を築こうとしており、急速な環境の変化に柔軟に対応していくべく、オープンイノベーションの概念で新しいアイデアを取り込み変化していく必要があることから、日本の銀行としてもおそらく初めての試みとなるコンテストを開催することに至ったと披露。約200組の応募の中から選ばれた11組のプレゼンにぜひ期待してほしいとした。
続いて、審査員の紹介が行われ、メディアへの公開は一旦ここまで。その後、ファイナリストのプレゼンテーション(7分 × 11組)や、タッチ&トライが非公開で行われ、表彰式より再びメディアに公開された。
先ず、ネットワーキング賞(協賛:アクセンチュア、電通国際情報サービス、キャップジェミニ)は、マネーツリー、チーム"JThird"、チーム"One-on-One" が受賞。続いて、事業支援賞(協賛:PR TIMES、日本マイクロソフト)は、Finatext、チーム"Lucidreal" が受賞。 また、プレゼンテーション賞(協賛:日立製作所、キヤノンマーケティングジャパン)は、ZUU が受賞。そして、Fintech Challenge 特別賞(協賛:日本ヒューレット・パッカード、日本アイ・ビー・エム、シスコシステムズ)は、マッシュルーム が受賞した。 テーマ1『新モバイルサービス・Webプロモーション手法』の優秀賞(事業奨励金 50万円)は、チーム"One-on-One" が受賞、そして、大賞(事業奨励金 250万円)は、チーム"Lucidreal" が受賞した。 テーマ2『個人のお客さま向けの新しい決済サービス』の優秀賞(事業奨励金 50万円)は、チーム"RKPJ" が受賞、そして、大賞(事業奨励金 250万円)は、Freee が受賞した。 最後に、審査員特別賞は、チーム"JThird" が受賞した。その後、審査員一人一人から総評が述べられた。なお、審査員は、セールスフォース・ベンチャーズ日本代表 浅田 慎二 氏、野村総合研究所 専務執行役員(金融システムリスク管理担当)金融ITイノベーション事業本部長 齊藤 春海 氏、東京大学 先端科学技術研究センター 教授 森川 博之 氏のほか、三菱東京UFJ銀行 専務取締役 村林 聡 氏、常務執行役員 副コーポレートサービス長 加藤 昌彦 氏、常務執行役員 村上 敦士 氏が務めた。
そして、閉会の挨拶は、三菱東京UFJ銀行 常務執行役員 村上 敦士 氏が登壇、ここ数年取組んできた ”Do Smart” などポスターやWEBを一新するなどチャレンジしてきた一方、新しい技術を活用したビジネスモデルを創り上げられずに悩んできたとし、そのような中で、今回の「Fintech Challenge 2015」を通じて、リテールのみならず法人向けなどICTをキーとし、理解を深めビジネス化していくべく、経営資源を投入していくとした。そして、今回の応募者を前に、あらためて、銀行として本気で取組んでいくことを表明、真剣にぶつかってほしい、と締めくくった。 ファイナリストと審査員、主催者の関係者による記念撮影が行われ、その後、会場を移して懇親会が行われた。また、同行 専務取締役 村林氏への記者の囲み取材では、今回のコンテストのみならず、これからはもっと世の中をよくするアイデアが普段から持ち込めるよう日常化されていくといいとし、同行と方向性が合えば個別にインキュベーションしていくこともあるとした。また、今回、若い世代からの応募が多かったこともあり、高齢化社会への貢献につながるアイデアが少なかったが、今後の社会を見据えて支えていこうといくことに気づけば、斬新なアイデアも出てくるのではないかとこれからの取組みに期待感を示した。
<<ファイナリストの紹介>>
◎テーマ1 『新モバイルサービス・Webプロモーション手法』
1 elephant design ・・・ 「想い」も貯まる 結婚から始まるライフイベントを支える新しいカタチ
2 チーム"Lucidreal" ・・・ 子ども口座+親子アプリケーション
3 ZUU ・・・ 来たる資産移転時のニーズをネットで捉える 銀行が発信するオウンドメディア
4 マネーツリー ・・・ Cloud Safe: Passwords
5 チーム"One-on-One" ・・・ 「ゴール銀行」変わる、貯金体験
6 Finatext ・・・ 「FUNDECT」お客さまの投資活性化アプリ
7 チーム"JThird" ・・・ 「どこでもタイムマシン」Web3Dによる仮想体験コンテンツ
◎テーマ2 『個人のお客さま向けの新しい決済サービス』
1 Freee ・・・ 銀行振込を利用した新たなモバイル決済プラットフォーム
2 ポンク ・・・ 街じゅうの支払いを便利にする「BTMU・ポンクウォレット」
3 マッシュルーム ・・・ スマホで決済 with Flashtouch
4 チーム"RKPJ" ・・・ 「トリモチ」小額現金の貸し借りをスムーズに行える決済サービス
<<取材を終えて>>
昨今の電子商取引やITを利用した決済サービスなど、金融とITの融合による新しいサービス分野で注目されているFinTech。金融庁も銀行法の改正案を検討する方針を打ち出すなどFinTechを取り巻く環境は大きく変化する可能性があり、新産業の創出と日本経済の成長に向けた新たなステージを迎えている。また、これまでは考えられないほど、業界や規模の大小の垣根を越えたオープンなコミュニケーションの場が世界各地に広がり、知恵と工夫、そして何よりも熱意を持って取組もうとする一人一人の挑戦に門戸が開かれ、連携可能な時代にシフトしている。FinTechがもたらすムーブメントは、これからの消費者の行動パターンを変え、また、ビジネスモデル構築へのアプローチ、仕事のスタイルや企業のあり方を一変する可能性を秘めている。今後の動向に注目していきたい。
(取材、撮影、記事、制作、編集:藤野 宙志 @株式会社グッドウェイ )