~チームフエフキの活動と焼きプリンタルトついて~
高村:榊原さんの立ち上げたチームフエフキには、どんな方が参加されていますか?
榊原:チームメンバーは基本笛吹市に関わりある方々です。地域に住む人が自分たちの住む町のことを知らないことを課題に感じ、「まずは僕らが知っていこうよ」という想いを持った仲間が集まっています。
高村:具体的な活動内容としてはどんなことを行っているんですか?
榊原:実際、メンバーの中にも、地域の旅館や飲食店のうち、行ったことのないお店が多くありました。そこで、地域のお店を回れるようにするためにマップを作っていこうと思っています。他にもチームの学生さんに地域の宿泊施設に実際に泊まってもらい、そこで感じたことをチームで共有することを行いました。そこで感じた不便や課題に対して、解決策を考え、今後実行していきたいと考えています。その過程で私たちが笛吹市をもっと好きになり、周囲にも広げていけたら良いなと思っています。
高村:まずは地域を知り、そこから好きになり、そして同じ想いを持った人たちが繋がっていくということですね。とても素敵な活動だと思います!活動の中で焼プリンタルトを販売していると思いますが、それはどういった経緯だったんですか?
榊原:コロナウイルスの影響で観光業が大打撃を受け、自分の仕事にも大きな影響が出ていました。しかし、その中で観光を切り離すことはできませんし、会社としても売上を出さなければいけない状況でした。そこで、よりローカルな部分に目を向け、地域の方に喜んでいただけえるものは何だろうと考えました。その中で、給食で人気がある、焼プリンタルトにたどり着きました。休校もあり、焼プリンタルトを楽しみにしている生徒さんを思い、販売することにしました。その時、新型コロナ感染拡大の観点から、なかなかお目にかかれないドライブスルー方式で販売を行いました。
高村:焼プリンタルトが家庭でも楽しめるのはとても嬉しいですね。地域の方に喜んでもらえるものを、地域の方の声を聞きながら届けるという部分が、チームフエフキの活動とも重なっていたんですね。
榊原:そうですね。ありがたいことに次回5回目のドライブスルーを開催することになっており、キャラメル味も新しく登場します。実際の地域の方とのコミュニケーションでは「姪っ子が大好きだったので買いにきました」という方や、ドライブスルーの開催の度に購入いただくお客さまもいらっしゃいます。嬉しいことに現役の高校生が開催を知って足を運んだりしてくださいました。「焼プリンタルト大好き!!」とエールもいただいています。このような活動をしなければ、こういった声を聞くことができませんでしたし、改めて尊いお仕事をさせていただいていると気づかせてくれました。
高村:そういった地域の方の声は、励みになりますよね。キャラメル味もぜひ食べてみたいです!ありがとうございました。
~飲食の道へ方向転換したきっかけと婚活事業について~
高村:次に、宇田さんよろしくお願いします。元々は電気系や、ものづくりの分野でお仕事をされていたと思いますが、飲食の道へ進むきっかけは何だったのですか?
宇田:実家が和菓子屋でよく手伝いをしていて、学生時代もずっと飲食業でアルバイトをしていたこともあって、元々飲食の道には興味がありました。就職した時は、当時の会社で3年間はやってみようと思っていましたが、飲食業界は実力主義なので早く技術を磨きたいという思いと資金の準備ができたこともあり、途中で飲食の専門学校に入学しました。
高村:元々飲食業に興味を持たれていたとはいえ、会社を辞めて専門学校に入るのは大きな決断でしたね。専門学校を卒業後は東京の飲食店で修行されていたと思いますが、山梨に戻ってくるきっかけは何だったのですか?
宇田:親の知り合いだった今のお店のオーナーに、修行2年目くらいから「山梨に戻ってこないか」と打診されていました。その時は、まだ東京で勉強したいという気持ちだったのですが、4年目くらいに東京のお店で店を回すポジションまでいったので、そこで山梨に帰ることにしました。
宇田:やっぱりお店をやっていると大変な時期があって、そこでなにかしなきゃと模索しているときに、婚活支援について山梨県(行政)の発信で知り、やってみることにしました。初めは婚活に興味を持っている人が少しくらいお店に来てくれたら嬉しいなと思っていましたが、多くの方にご好評いただき活動が拡大していきました。
高村:始めはお店の集客のひとつのチャレンジだったんですね。今では婚活の講師もされていますが、「婚活 × イタリアンレストラン」の良さってなんだと感じていますか?
宇田:多くの婚活が人と人の関わりをメインでやっていますが、私の店では料理をメインでやっています。なので、おいしい料理から参加者同士の会話が生まれることや、他に比べて食事が充実していることでイベント自体の満足度が高くなっていると思います。また、イベント以外の日にも参加者さんがご飯を食べに来てくれることも多く、そこでは個別相談にのることもあります。このような繋がりが生まれているところも良いところだと感じています。
高村:お話を聞いているだけでもすごく楽しそうな雰囲気が想像できます。婚活をきっかけにお店のファンも増えていますね!
宇田:そうですね。他にも、私が主催で地域の近隣のお店で婚活イベントを行わせていただくこともあるのですが、それをきっかけに地域の飲食店さんを知ってもらうことができ、地域活性化にも繋がっているのではないかと感じています。
高村:確かにそうですね。地域活性化の方法というのはたくさんあっておもしろいですね。ありがとうございました。
~こども食堂の活動と山梨のコミュニティについて~
高村:次に酒井さんよろしくお願いします。ソーシャルビジネスに興味をもたれていたと思いますが、こども食堂という形で活動を始めた理由は何ですか?
酒井:ソーシャルビジネスは、社会課題に対して収益を得ながら解決していくという非常に難易度の高いものです。当初、ソーシャルビジネスを実際に始めるには、まだノウハウや人の繋がりなどの不足、収益化が難しいと感じていましたが、確実に誰かの役に立てる活動だと考え、まずはスタート(家守屋山梨)することにしました。その活動の中で、ソーシャルビジネスのノウハウを学ぶことや同じ思いを持った仲間と出会うことをやっていこうと思っています。
高村:ソーシャルビジネスの2軸が社会課題の解決と事業性がある中で、まずは社会課題の解決に重きを置いた活動をスタートされたということですね。
酒井:そうですね。ソーシャルビジネスとしては準備期間になっていますが、準備期間をただ頭の中で考えるだけではなく、誰かの役に立ちながら過ごすことに意味があると感じています。実際に始めてみると、すぐにコロナウイルスの影響で身動きが取れなくなってしまった部分もありますが、これもやってみなければわからなかったことなので、活動をスタートさせて良かったと思っています。
高村:コロナウイルスの中でこの活動を続けていくためには、ビジネス的な視点も必要になってくるかと思います。具体的に行った対策はありますか?
酒井:こども食堂の目的は、人の繋がりを生んでいくコミュニティ形成と食事でお腹を満たす貧困対策の大きく2つに分かれていて、目的をコミュニティ形成においた時に、コロナの状況下でこども食堂という形で行うのは合っていないという考えに至りました。そこで、山梨県内のこども食堂の活動を行っている団体の集まり(にじいろのわ)で連携して、形を変えてフードパントリーという食べ物を配る活動を始めました。配布活動の時に生まれるコミュニケーションで、本当の困りごとを聞けるような環境も同時に作っていきたいと思っています。
高村:目的と手段を分けて判断したことによって活動が続けられているということですね。酒井さんの活動には「コミュニティ」や「コミュニケーション」が重視されているされているように感じます。山梨県におけるコミュニティは、今後どのような変化をしていくのでしょうか?
酒井:山梨県のコミュニティの特徴として、最初は外の人に対して距離がありますが、一度仲良くなると人間関係が濃密になるというものがあると感じています。無尽文化などが例に挙げられますが、山梨県はコミュニティが濃い地域だと思います。ですが、過去に比べると、そのコミュニティは衰退していると思います。昭和から平成までにお金で物事をはかる世の中の風潮みたいなものがありましたが、東日本大震災や令和への御代替わりのタイミングで、近年は地域の絆や家族の絆を見直していこうという動きもあります。その中で山梨のコミュニティでは、ただ昔みたいに戻すということではなく、昔の良いところを今の暮らしに合わせて、それぞれの良い部分を兼ね備えた社会を作っていきたいと考えています。
高村:山梨県の繋がりの強いコミュニティが色々な部分で活かしていけると良いですよね。自分たちのような若者が積極的にコミュニティに参加していくことも大切だと感じました。ありがとうございました。
~学生の山梨の「食とコミュニティ」への関わり方について~
高村:最後に学生の山梨の「食とコミュニティ」への関わり方について、期待やアドバイスがあれば教えてください!
榊原:これまでは良い「お店」や良い「商品」が理由で訪れる場所が決まっていましたが、これからは良い「人」が居ることが基準になる「人検索」の時代に入っていくと感じています。学生さんには、ぜひ検索される人になってもらいたいです。検索される人になるための重要な要素に発信というものがありますが、特にFacebookには発信している学生さんを応援したい大人たちが沢山います。今から有効活用していくことが、5年後、10年後の資産になってくると思うので、「人検索」時代に上位にいるような発信を続けてもらえればと思います。
宇田:食はコミュニケーションを円滑にするものだと思っています。まだ関係が深くない人とでも、おいしい物を食べ、おいしいお酒を飲むと仲良くなったように感じると思います。なので、学生さんにはコロナが落ち着いたら、ぜひ山梨のお店に集まってみんなでワイワイ盛り上がってほしいと思います。山梨県は特に個人店が多いので、色々なお店を回り、それぞれの良さを感じ、その中で色々な人と交流を深めてもらいたいと思います。それによって、地域経済やまちの雰囲気も良くなると思うので、山梨の食とコミュニティを全力で楽しんでください。
酒井:普段のこども食堂の活動で子どもたちとコミュニケーションをとる時に、経験がある大人よりも年が近い学生さんがコミュニケーションを取った方が良いと感じることが多くあります。子どもたちは大人のことを別の生物のように感じているので、より自分に近い存在の学生さんの方が、コミュニケーションしやすいようです。このように、人生ではフェーズごとに有利なことと不利なことが必ず出てくると思います。学生時代の有利な部分はチャレンジしやすいことです。学生時代に経験したことや多くの人と繋がることは将来に活きてきます。ぜひ先々を見ながら積極的にチャレンジし、いろいろな経験を学生時代に積んでいってください。
高村:みなさんありがとうございます。「人検索」されるような人になること、山梨の食やコミュニティを全力で楽しむこと、学生の有利な部分を考えチャレンジすること、どれも心に刺さるメッセージでした。貴重なお話ありがとうございました。
(ライター:高村 大夢)
山梨県山中湖村出身。法政大学経営学部3年。准認定ファンドレイザー。学生団体トップファン共同代表。山梨県韮崎市のローカルメディア「にらレバ」の学生ライター。