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2023/09/11

【ブロードリッジ・ジャパン】「日本における技術革新 25周年記念インタビュー」

| by:サイト管理者

Tom Carey氏
ブロードリッジ プレジデント、グローバル・テクノロジー&オペレーションズ(GTO))

Germán Soto Sanchez氏
ブロードリッジ シニア・バイス・プレジデント、コーポレート・ストラテジー)

【1】日本進出25周年、おめでとうございます。この25年間でブロードリッジの事業はどのように進化し、どのような独自の価値を提供しているか教えてください。

【Tom Carey氏】今回、ブロードリッジ・ジャパンが25周年を迎えられたことはとても素晴らしく嬉しく思うと共に、次の25年も楽しみにしています。1998年に最初の顧客とともにスタートした時から、私たちは世界の主要市場のすべてにサービスを提供していくというビジョンを掲げてきました。ブロードリッジでは、グローバル市場にサービスを提供するグローバル企業になるにはどうすればよいかを常に考えていますが、その鍵は、現地の市場で優れたサービス・プロバイダーになるにはどうすればよいかにあります。日本市場は非常に重要で大きなチャンスがあると認識しており、日本市場で積極的に存在感を高め、顧客、テクノロジー、そしてソリューションを成長させてきました。今では日本国内で30社以上にサービスを提供しており、東京証券取引所(以下、東証)との合弁会社であるICJも立ち上げるなど、東証でも大きな存在感を示しています。日本においては主に、顧客と従業員双方との関係構築の重要性に注力してきました。今回、日本市場における顧客とのミーティングを通じて、私たちの取組みをとても高く評価していただいていることが明確になりました。私たちはグローバルな大企業として市場に適合する先進的なソリューションを構築し、多くの革新的なアイデアを市場に提供してきました。

【2】ブロードリッジと東証とのジョイントベンチャーであるICJは日本のコーポレート・ガバナンスの向上にどのように貢献していますか。また、今後の成長戦略について教えてください。

【Germán Soto Sanchez氏】ICJは2004年にブロードリッジと東証のジョイントベンチャーとしてスタートしました。株主総会に関連するプロセスのデジタル化の促進を目指し、発行会社と国内外の機関投資家との対話による企業価値向上を支援する「議決権電子行使プラットフォーム」を運営しています。現在では1,800社超の東証上場会社が参加しています。このサービスでは電子投票プラットフォームとしてバーチャル株主総会の開催や将来の成長を見据えたデータサービスを提供しており、これからも、まだ参加していない残りの約2,000社の上場企業の利用を促すと共に、ESGをはじめ新たな分野の開拓も進めていきます。投資家が上場企業の一員となり、より深く関与できるようにすることで、より良いガバナンスを実現し、日本の資本市場の競争力の強化に大きく貢献しています。それが私たちの望みであり、ブロードリッジの使命です。私たちは「より優れた金融活動を実現する」ため、投資家が投資先企業に関与できるようにしています。これはICJの重要なミッションのひとつです。 

【3】日本の資本市場において顧客はどのような課題に直面し、その課題を克服するためにどのような支援を行っているか教えてください。

【Tom Carey氏】キャピタルマーケットはとても複雑なビジネスです。顧客は成長を望み、そこには多くのプレッシャーもあります。常に新しい規制、新しいコンプライアンス、新しいルールに準拠する必要があります。米国や欧州の市場においても決済期間の短縮化が進み、顧客はグローバル化やデジタル化への対応が求められています。米国ではT+2からT+1へ決済が短縮され、欧州では企業サステナビリティ報告指令(CSDR)という新たな規制に準拠しなければなりません。現在のマクロ経済環境においてコスト削減の圧力を受けつつも、いかにして成長を続け、コンプライアンスを遵守できる状況をつくり出すことができるかを模索しており、そのためには最新のテクノロジーの活用が欠かせません。最近注目を集めているAIに関する話題についても、私たちはどのようにAIや新しい技術を自社のテクノロジーやサービスに組み込み、顧客に貢献できるかを常に考えています。そうしたアイデアを持ち寄り、顧客の皆さまと共に成功と成長を目指しています。私たちはサービスを創造し、新しい規制やテクノロジーへの対応など、いち早く市場にソリューションを投入し、多くの顧客が安心して私たちを信頼し、ビジネスにフォーカスできるように取組んでいきたいと思います。

【4】ブロードリッジの革新的なソリューションの中で、市場規模の大きな取組み事例について教えてください。

【Germán Soto Sanchez氏】これまでイノベーションを推進する企業は高い業績を上げることが示されています。リーダー的な存在になりたいのであれば、イノベーションを起こすことが非常に重要です。そのため、私たちのイノベーションに対するアプローチは3つあります。実験すること、志を同じくする企業と提携すること、そしてエコシステムや規制当局と協力することです。では、具体的にどのようなことをしてきたか。いくつかの事例を挙げたいと思います。

一つ目の例はDLT(分散型台帳技術)に関するものです。分散型台帳を活用したイノベーションのユースケースとして2021年に立ち上げた分散型台帳レポ・プラットフォーム(DLR)は、レポ取引の市場参加者が取引に合意し、レポ取引を追跡し、決済することを可能にするものです。レポ市場の規模は1日あたり約10兆ドルにのぼり、金融サービスのエコシステムの重要な一部であり、大企業や大口投資家はレポ市場を活用して資金を調達しています。また、歴史的にレポ取引は手作業に依存するところが非常に多く、フェイル発生などの原因となっていました。今回、分散型台帳技術やスマート・コントラクトという技術を活用することで、手作業を合理化し、より効率的に処理することができるようになりました。DLRでは、現在、1日あたり約700億ドルの取引が行われており、時間の経過とともに取引総額は劇的に増加しています。

二つ目の例はデジタル化に関するものです。私たちのビジネスコミュニケーション支援の分野では「Wealth InFocus」というソリューションがあります。Wealth InFocusは投資家が受け取る情報とコミュニケーションを全体的に再構築したものです。これまでの電子メールやファックスなど静的な情報とは異なり、Wealth InFocusは非常に充実しており、顧客は従来の単なる「口座保有明細書」ではなく、インタラクティブなコミュニケーションを求めています。顧客は常にダイナミックで、インタラクティブで、魅力的かつ有用なデータの満載を求めています。従来の静的な明細書(保有ポートフォリオ全体の期首残高、期末残高、取引内容など)とは異なり、本来の明細書のあるべき姿を再構築するために、さまざまなインサイトが得られる要素を組み込んでいます。

三つ目の事例はイノベーションに関するものです。議決権行使に於いて、従来の議決権行使委任状のプロセスでは委任状カードに必要事項を記入し、そのカードに記載された情報を解釈するのも手作業でした。私たちはこの委任状プロセスに対してAIを活用することで情報やデータ抽出を自動化しました。これは私たちがAIを活用した一例で、私たちは会社全体で絶え間なく革新に取組んでいます。

【5】日本における資産運用のトレンドをどのように見ていますか。また、ブロードリッジは業界の成長をどのように促進していますか。

【Tom Carey氏】私たちは15年以上にわたり、資産運用業界にサービスを提供してきました。私たちは市場における包括的なソリューションを提供しており、バイサイドに提供するものとセルサイドに提供するものとの間には強いつながりがあり、私たちが行っていることは非常に密接な関係にあります。私たちは、資産運用会社やヘッジファンドが市場に参入し、新しいファンドを迅速に立ち上げ、現地市場やグローバル市場で私たちのサービスを利用することでビジネス機会を創出できるよう支援してきました。特にこの市場では、バイサイドとセルサイドの両顧客に対して、より良いコネクティビティとシームレスなアクションを可能にするサービスを提供しています。私たちが開発しているいくつかの技術により、顧客により良いインサイトを与え、データを効果的に活用し、新しいビジネスチャンスを見出し、業績を上げていけるよう取組んでいきたいと思います。

【6】ブロードリッジのパーパス「より優れた金融活動を実現する」の達成に向けて取組んでいることを教えてください。

【Germán Soto Sanchez氏】私たちは舞台裏で支援するような会社です。私たちの顧客は個人投資家ではなく、金融機関がメインです。そのため、多くの人はブロードリッジのことをあまり知らないかもしれません。そのような中で、「より優れた金融活動を実現する」という点で私たちが果たす役割は、金融市場における重要なインフラを提供し続けていくということです。私たちが提供する重要なインフラは、銀行、ブローカー・ディーラー、ウェルス・マネージャー、アセット・マネージャー、上場企業などのガバナンスやコミュニケーションを強化し、ネットワークをつなぎ、グローバルレベルでの投資を支えています。私たちは多くの上場企業、投資信託と、世界中の個人および金融機関をつなぐグローバル・コミュニケーション・ネットワークを持っています。これは、ブロードリッジを通じて私たち全員がつながっている非常に強力なネットワークで、年間約70億件の顧客へのコミュニケーションを処理しています。加えて、私たちは世界中で何千ものバーチャル株主総会を運営しています。このように、より良いガバナンスを実現するためのコミュニケーションを促進することにより、財務的な生活や株主の投資活動をより良くすることができるのです。また、グローバル・テクノロジー・オペレーションズの部門では1日に約9兆件の債券及び株式取引を支える重要なインフラを提供しています。加えて、ウェルス・マネージャー向けの重要なインフラや、資産運用会社向けのインフラやサービスも提供しています。私たちは世界規模で金融エコシステムの重要な一翼を担っているのです。世界中で15,000人の従業員を擁し、顧客のために価値を提供し続けていくため、日々その実現に力を注いでいます。

【7】 日本の金融機関や投資家にメッセージをお願いします。

【Tom Carey氏】これまでの日本での25年間にわたる活動を誇りに思うと共に、それは始まりに過ぎず、次の25年に向けた活動も楽しみにしています。この1週間、私は日本で多くの顧客の皆さま、従業員と共に対話の時間を過ごし、私たちのサービスを利用いただき提供できることをどれほど誇りに思っているかを目の当たりにしました。また、常にサービスを改善し、価値を向上していこうとする姿勢や、私たちの考え方、新しいテクノロジー、新しい技術をこの市場に持ち込み、顧客のインサイトや収益の見通しを向上させ、それを目指して達成しようという意欲も強く感じました。私たちはこの市場に専念していくことで新たな顧客との取引を広げ、私たち自身にとっても、また顧客にとっても、非常に素晴らしい明るい未来を描いています。そして、東証とのジョイントベンチャーでもあるICJと共に日本のすべての企業に私たちが提供できる最も効率的で価値の高いサービスをご利用いただき、新たな顧客をお迎えできることを楽しみにしています。


【Germán Soto Sanchez氏】私たちは日本市場にとても力を入れており、ブロードリッジのアジア戦略を考える上で、日本市場はその礎だと考えています。また、日本の企業や機関投資家に向けてさらなる価値を提供できる分野が数多くあると考えています。特にESGにおいては従来のデータ提供だけではなく、コンサルティング・サービスやメトリックスなどの提供も考えており、これらは私たちがとても得意とする分野です。私たちはグローバル市場で強力なデータ分析ビジネスを手掛けており、将来に向けた新たな高い付加価値サービスの提供を積極的に考え、顧客にとってより大きな価値をもたらす追加的なソリューションやデータを提供できると確信していることを最後に強調させていただきます。


ブロードリッジの詳細については、ウェブサイトをご覧ください:www.broadridge.com/jp.

(取材、撮影、記事、編集・制作 :株式会社グッドウェイ@メディアプロモーション事業部 )




18:44 | 取材:金融・IT業界向け

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