2015年9月11日(金)、商社・金融・流通・不動産・通信・公共など幅広い業界へ、ICTマネジメントサービス、コンサルティング、システム開発・構築、運用・保守サポートまでをワンストップでサービス提供を行う三井情報(MKI=MITSUI KNOWLEDGE INDUSTRY。以下、同社)は、「MKI金融ソリューションセミナー in 東京~「地方創生」に向けた地域金融機関のICT活用と人材育成」と題する金融業界向けのセミナーを東京本社で開催した。
地方創生においては地元の経済活動に密着する地域金融機関に大きな役割が期待されているなか、本セミナーではキーポイントとなる「ICTの活用」と「人材育成」という面から、同社の取組やアプローチ、およびソリューションが事例も交えて紹介され、来場した地域金融機関の地方創生部門 、融資審査部門、営業推進部門等の担当者らは熱心に講演に耳を傾けた。
会場は東京都港区の愛宕グリーンヒルズMORIタワー内にある、同社の本社セミナールーム。晴天の日は高層階から東京タワー等の都心の景色を望むことができる。セミナールームでは今回の「MKI金融ソリューションセミナー」のほかに、最近では「サイバー攻撃防御 セキュリティ最前線 & 最新動向セミナー」など、様々なジャンル、カテゴリーのセミナーが定期的に開催されている。(セミナー開催案内)
セミナーの開始前には、受付を終えた地域金融機関の担当者や同社担当者同士などで挨拶や名刺交換が行われた。地域金融機関担当者にとっては地方創生という課題と具体的にどう向かい合っていくべきか、紹介される事例等を踏まえ、その道筋を探りながら取組を加速させるセミナーとなる。
◎単なる財務諸表や担保をベースにした融資のみならず、企業の価値、企業が持ちうる資産や事業の価値を評価しながら、その融資を通じて企業発展と地方創生に貢献していく。
開演後、冒頭の挨拶に立った同社 金融営業本部長 佐々木 亨氏は、来場への御礼の後、「本日は地方創生というテーマをもって皆様と情報交換をさせていただきたい。昨年は(金融機関が保証や担保等に必要以上に依存しない)事業性評価について説明させていただいたが、あれから1年を経て、試行錯誤しながらソリューションの改善や新しいソリューション導入に取り組んでいる。そして今年は地方創生をテーマに、地方創生に関して弊社の視点でICT面で皆様をご支援できるよう、現在、弊社が考えていることを皆様にご紹介したい。」と挨拶。
また、「銀行業務 融資業務で我々もソリューションを提供しているなかで、事業性評価も然ることながら、単なる財務諸表や担保をベースにした融資のみならず、企業の価値、企業が持ちうる資産や事業の価値を評価しながら、その融資を通じて企業発展と地方創生に貢献したいと考えている。」と述べたほか、「今後は親会社である三井物産と一段と協働して展開していく。商社では融資機能を全国の企業に対し提供し、産業を作りその企業を発展させてきた経緯もあるが、今後皆様ともますます協業して地域活性化と創生に貢献したい」と抱負を語った。
最後に、「今日は、様々な活動事例などをご紹介するのでぜひ参考にしていただき、また情報交換の場も設けているので、弊社のメンバーも入れていただき、ご要望 課題等を共有させていただくと共に、それを活かして改善や商品開発し、新たなサービスの提供に繋げられればと考えているので、長丁場の一日になるが宜しくお願いします。」と述べて挨拶を締め括った。
セミナーがスタートし、最初のセッションは、金融営業副本部長 吉田 有氏による、「地方創生に向けた攻めのICTソリューション~将来の地域金融機関を支えるICTとは」。まち・ひと・しごと創生「総合戦略の外観」や地方創生の課題、地域金融機関の取組強化事項やICT導入による成功事例などが紹介され、特にICT導入の成功例として、光ファイバ網とオフィス開設・運営費支援を活用してサテライトオフィスを整備し、多くのベンチャー企業進出と移住を実現した徳島県神山町の事例などが紹介された。
こうしたなか、同社の地方創生に資するICTソリューションの取組として、吉田氏は以下を取り上げて紹介した。
①医療ケアを骨子としたコンパクトシティー実現モデル
超高齢化社会への社会システム構築の実践提案。住宅での未病対策を支える具体的な仕組み・システム
②遠隔世代間を繋ぐ金融とICT融合のサービスモデル~相続資産流出への対応
大都市金融機関が資産運用商品・ノウハウを提供。地域金融機関が見守りサービスを引き受ける。
③オープンデータを活用したビッグデータ解析ソリューション
地区の企業数社の有価証券報告書をビッグデータ解析し、企業と様々なキーワードの関連性を表現~融資先企業連鎖・宅的な企業分析への活用
④企業事業性評価による経営資源の効率化・利活用
販売や資金面の支援だけでなく、経営改善コンサルを通じてICTサービスを提供
⑤事業性・成長性に評価に資する業種別需要・市況予測サービス
業種に応じた成長判断、事業性評価を促進
⑥融資・審査を主軸としたCASTERファミリーの貢献シナリオ
事業性評価、取引先支援のフローチャート~地方創生と収益拡大の実現
続いて、金融営業部 第三営業室 櫻井 光彦氏が同社提供のICTソリューションの具体例として、「予兆管理と企業育成支援のために」のテーマに基づいて、ALARM機能の他、中小企業分析機能を強化された内容を紹介。「予兆から予防へ」として、CASTER-CDR (予兆管理・企業育成支援システム)の活用方法などを解説した。
また、同氏はこの後、「コスト削減だけではない効率化を目指して~サービス向上支援機能」の説明も行い、同社提供のサービス向上支援システムで総合コンプライアンスソリューションである「Mamola」を通じての苦情・要望処理&報告事務の一元管理により、ニーズ分析とサービス改善に繋げる活用方法も紹介した。
◎法定要件に則るもの以外の、ほぼ全ての紙は電子化される
午前最後の講演は同社取引先である、富士ゼロックス マーケティング部 マーケティング企画室 業種マーケティンググループ マネジャー 中村 哲氏。審査・融資ソリューションを提供する同社と、ペーパーレス化・電子化等を通じて金融機関の事務効率化を促進する富士ゼロックスは協業関係にあるといい、この日は外部講師として招かれて講演。未だに金融機関の業務が完成された「紙」を中心とした業務となっている中で、法定要件に則るもの以外の、ほぼ全ての紙は電子化されるとして、富士ゼロックスが手掛ける事務効率化についての技術とサービス内容が詳しく紹介された。
◎地域金融機関の最近の、そして永遠の課題は「人材育成」
ランチ休憩を挟んで午後の最初のセッションは、「人材育成の為の『財務分析講座』の紹介」と題して、同社金融営業部 第一営業室 川合 信之氏が担当。地域金融機関の課題が「人材育成」にあるとして、地域の事業を創出し経済を活性化しようとする人材と共に、その企業の持続可能性を含む事業性を重視し、融資等の支援を行っていくための「目利き」ができる能力を持つ人材の育成と活用が、地域金融機関にとって大きな課題であるとして、「人材育成」の重要性を強調した。同社は、まずは財務に対する目利き能力開発が重要であるとして、説明会や講習によるカリキュラム提供を通じて、能力開発を通じた人材育成に積極的に取り組んでいるという。
そして最後のセッションでは、同社の強みであり財務分析のディファクト・スタンダードともいえる財務分析&融資・審査システム「CASTER」の実務講習が行われ、的確な財務分析をする為のポイントとして、「CASTER分析のミカタ」、「あらかん(アラーム管理)分析のミカタ」などについて詳しく解説が行われた。説明は金融営業部 第一営業室 向井 俊男氏が担当し、特に「あらかん」については、倒産企業が倒産直前にとる資金繰り確保の行動パターンから、その危険性を見破る指標を決算書から構築したとして、そのノウハウも紹介された。
「CASTER」は1982年に発売されて以来、30年以上に亘り金融機関にソリューションを提供し続け、「CASTER」だけで170以上の導入実績(2014年時点)があるといい、地銀を中心として多くの金融機関が導入している。参加した実際の業務に携わる金融機関担当者は実務に生かそうと、熱心に講師の話に耳を傾けた。
終了後は名刺交換会を兼ねて情報交換が行われた。実際の審査・融資部門で発生する大小様々な課題と問題点を真摯に受け止め、ソリューションの改善と新サービス開発に繋げるべく同社担当者も積極的に情報交換を行った。
安倍内閣の重要政策の一つである地方創生で、実効的な政策と共に地域活性化のカギを握るのは「地域金融機関」および「人材」であるとして、地銀等でも社内専門組織設立や提携・協業、起業家・ベンチャー支援など、多くの取組が進展しつつある。こうしたなか、地方活性化の動きをICTの面から支えていこうとする同社のテクノロジーとパッションが、待ったなしの活性化に迫られる地方の創生に大きな役割を果たし、新しいビジネスモデル構築への貢献を果たすことを期待したい。
(取材、撮影、記事、編集・制作:柴田 潔 株式会社グッドウェイ)