昨今、イノベーション、アントレプレナーシップを掲げ、スタートアップ企業、ベンチャーキャピタル、インキュベータのほか、政府、教育機関、大手・中小企業も加わる動きが加速する中、大企業とスタートアップ企業とのコラボレーションは日本企業の将来の成長と日本経済の活性化に繋る重要な取組みになっているという。
今回の出版記念イベントでは、2つのパネルディスカッションを通じて、起業ブームの潜在的な可能性やリスクについて、様々な角度からディスカッションされた。
冒頭に、Fenox Venture Capital 共同代表パートナー&CEO アニス・ウッザマン氏による挨拶の後、パネルディスカッション・第1部「スタートアップとのコラボレーションによる、大企業のイノベーション促進」では、パネリストとして、アニス氏のほか、インフォテリア 代表取締役社長/CEO 平野 洋一郎 氏、Terra Motors 代表取締役 徳重 徹 氏、日本マイクロソフト エバンジェリスト 砂金 信一郎 氏が登壇、早稲田大学ビジネススクール准教授 樋原 伸彦 氏がモデレーターを務めた。
パネルでは、東大を出てスタートアップを起こすことを応援できるような意識改革や教育システムの中におけるイノベーションの理解促進の必要性が唱えられたほか、アジアを巻き込んでビジネスを進めていく上でのフレーバーに対する嗅覚とスピード感、日本国内と海外から見た日本に対する視点の違いに対する理解、夢を本気で信じて語るパッションなど、これからはメンタリティーを変えて国境や企業の境界線を越えたシームレスに考え突破していく必要があるとした。 続いて、パネルディスカッション・第2部「日本においてスタートアップ/イノベーションブームはバブルで終わってしまうのか?」では、パネリストとして、アニス氏のほか、日本戦略情報機構(シンガポール法人)CEO 田村 耕太郎 氏、サムライインキュベート 代表取締役 / CEO 榊原 健太郎 氏、経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 新規事業調整官 石井 芳明 氏が登壇、アクセンチュア チーフ マーケティング イノベーター 加治 慶光 氏がモデレーターを務めた。
パネルでは、パネリストそれぞれの視点からバブルが起きているかどうかについて見解が述べられ、世界の規模やスピードと比べれば日本はまだ小さく成長過程にあり、人材、独立系VCの活躍、大企業によるCVCの取組み、政府のベンチャーを柱とした閣議決定など構造的な変化も起きている中で、この大事な勢いを持続的に発展させるためにどのようなハードルがありどのように克服していくべきかについて語られた。そして、海外に出ることも重要だが、いかに海外から日本に専門家を呼び込み、足りない部分を補うパートナーシップを組んで付き合っていく中で起こるイノベーションを巻き起こしていけるかが大事だとし、訪れた参加者に向けて”ぜひ一緒にやりましょう!”と呼びかけ、発表会を締め括った。 パネル終了後の交流会では、各分野で活躍する登壇者の前に参加者の長い行列が出来、パネルの感想や意見交換、名刺交換が行われた。
従来の日本国内における慣行、考え方や捉え方から脱却し、夢の実現に向けた突破力を持つベンチャーの存在が社会全体に刺激を与えることにより、大企業との新しい付加価値サービスの創出と市場拡大につながる共存共栄エコシステムの実現に向けた企業間のコンセンサスが形成されはじめつつある。垣根を越えた国内外の異業種との連携を加速し、グローバルな実績を持ったパートナーシップの活用によって実効性のあるコラボレーションとイノベーションを実現することで明日の新たなブルーオーシャン市場を生み出していくチャレンジャーが次々と登場することに期待したい。 アニス氏は、主に初期投資とファイナルラウンドを専門とし、インターネット、モバイル、ソーシャル、クラウド及び最新技術分野を中心に投資するベンチャー・キャピタリスト。現在、全世界で20億~200億円の8つのファンドを運営しており、日本の大手事業会社12社とのパートナーシップを通して、大手企業内のイノベーションを促進する実績を持つという。東京工業大学工学部開発システム工学科卒業。オクラホマ州立大学工学部電気情報工学専攻にて修士、東京都立大学(現・首都大学東京)工学部情報通信学科にて博士を取得。IBMなどを経て、シリコンバレーにてFenox Venture Capitalを設立した。