2017年7月27日(木)、マネーフォワードは、港区芝・マネーフォワード本社において「freeeとの訴訟に関する記者会見」を開催した。
記者会見の中では、この日、freeeがマネーフォワードを被告として提訴した自動仕訳技術の特許侵害訴訟について、約9か月にわたる審理の結果、東京地方裁判所が、freeeの請求を棄却する判決が言い渡されたことを受け、訴訟の経緯やポイント、特許に関する説明、判決に対する見解、質疑応答などが行われた。(マネーフォワードによるプレスリリース)
最初に、坂 裕和氏より、訴訟の経緯やポイント、特許に関する説明が行われた。坂氏は、迅速な判決、特許権者に対しても配慮した訴訟指揮、特許権の非侵害(両社の技術の違い)の3つのポイントを挙げ、詳しく解説。freeeの特許権の特徴を「対応テーブル」と「優先ルール」の構成とし、マネーフォワードの機械学習による自動生成アルゴリズムの違いについて、テーブルに設定されていないキーワードの取引の勘定科目の提案有無の実証結果を根拠とし、加えて、freeeによる均等論の主張に対する却下、裁判所によるインカメラ手続きの実施結果を踏まえ、freeeの請求が棄却された経緯を述べた。
なお、均等論とは、特許権者の権利を守るために一定の要件のもとで効力範囲拡張を認める理論。また、インカメラ手続きとは、文書提出を拒む正当性の判断を含めて裁判所だけが文書を確認する手続き。
坂氏に続いて、久保利 英明氏は、「今回は、わかりやすい判決だった」とし、特にインカメラ手続きについて言及。裁判官が実際に見た上で議論して判断した点を強調した。
続いて、辻 庸介氏より所感、見解が述べられた。短期間で判決が出たことに対して関係者への感謝の言葉を述べた一方、訴訟に対する社内リソースやストレス、またその結果としてエンドユーザーへのサービス提供の遅れを指摘。一般論として特許の権利の主張は認めつつも、訴訟に至る前までのコミュニケーションの必要性・重要性に触れ、今回の件を踏まえて、イノベーションを阻害する特許は良くないとしつつも、今後は特許戦略をしっかりと考えていかなければならないと私見を述べた。
辻氏に続いて、上山 浩氏は、本来、侵害の有無について事前の協議があれば当事者間で納得できる解決の可能性があったこと、また、Fintech業界における特許への不慣れを指摘。侵害の具体的な証拠については十分な事前検証の必要性を強調した。
辻氏は、どの程度のオーバーヘッドか発生したかとの記者の質問に対して、具体的なすべての工数は明かさなかったものの、ベンチャーの限りあるリソースを訴訟対応につぎ込み食い合うことは業界の発展に極めて良くないと語り、今回の訴訟事例から、本質的な価値追求に工数やコストをかけていくことにつながることへの期待を示した。
今回の訴訟は、スピーディーなイノベーションに欠かすことのできなベンチャーの限られたリソース(資本、工数)の活用とスタートアップ企業に課せられたシェアの拡大とスケールへの成長戦略において、知的財産権の尊重と防御策を含め、業界の健全な発展というエコシステムのバランス最適化においても、一石を投じるものとなった。今後のfreeeの公式見解と行方に注目したい。
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