日本CFA協会は、CFA協会(CFA Institute)の国内唯一のメンバーソサエティとして投資に関する教育プログラムを実施し、投資運用に関する専門知識の普及を目指す活動をしており、毎年1回、資産運用業界にとって重要でホットなテーマを取り上げてフラッグシップイベントである同カンファレンスを開催をしている。今回は「Gearing Up Sustainable Finance / サステナブル・ファイナンスの推進」をテーマに、内外から専門家や当局関係者を招き、終日にわたって講演と議論が行われた。
会場となった東京駅からほど近い東京スクエアガーデン内にある東京コンベンションホールでは、受付で感染対策が施される中、3年ぶりの対面開催とあって、多数の参加者が会場へ足を運び、開会後しばらくしてホールは参加者で埋め尽くされた。
冒頭、ニック・ポラード氏(CFA協会 アジア太平洋地域マネージングディレクター)が来場への御礼や本カンファレンスのテーマ解説を行いながら開会挨拶を行った。なお、当日の司会・進行は内 誠一郎氏(インベスコ・アセット・マネジメント 経営企画本部 投資戦略部部長、セルフインデックス ESG事業推進担当)が務めた。
講演
| ファンドと戦略のESG開示のベストプラクティス |
講演でクリス・フィドラー氏(CFA協会 グローバル産業基準シニアディレクター)は、CFA協会が公表しているGlobal ESG Disclosure Standards for Investment Productsの概略を述べ、SEC規制案およびSFDRとの比較について解説を行った。
<モデレータ>
太田 珠美氏(大和総研 主任研究員)
<パネリスト>
今村 敏之氏(野村アセットマネジメント 責任投資調査部長)
アレクサンダー・チャン氏(インベスコ アジア太平洋 ESGクライアント戦略責任者)
ナナ・リー氏(インパックス アジア太平洋サステナビリティ&ESG責任者)
パネルでは、SEC規制及び欧州のサステナブル・ファイナンス開示規則(SFDR)の要点解説、およびグローバル展開の運用会社のそれぞれ地域・国の規制に対する対応についての議論を行った。
高田 英樹氏(金融庁 総合政策課長)は、金融庁から最近公表されたレポートや規範等を踏まえ、具体的な中身や現状の問題点、資産運用会社への期待、および監督指針等について講演した。
スポンサー講演 | 債券運用におけるESGインテグレーションSponsor Speech |
講演 | CFA協会ESG認定証が示すことーESGの投資プロセスへの統合方法事例 |
ランチ前、最後のセッションでは、ベン・ヨー氏, CFA(RBCグローバル・アセット・マネジメント シニア・ポートフォリオマネージャー / 写真右)が前半でCFA Institute Certificate in ESG Investingのカバー範囲およびESGを投資プロセスに統合するケーススタディについて解説した後、後半ではDavid von Eiff氏(CFA協会 アジア太平洋地域インスティテューショナル・リレーションズ担当ディレクター)がモデレータとなりQ&A形式でセッションが進行した。
スポンサー講演 | グリーン経済下の投資機会とリスク管理 |
ヤオ・ルー氏(清華経管学院 金融学部副学部長 / 清華-INSEAD EMBA学術ディレクター)は、グリーン経済下の投資機会と経営リスクについて3つの重要な問題を提起しつつスポンサー講演を行った。
講演
| 誰を重視するのか - 投資家と発行企業の人的資本管理 |
サラ・メイナード氏(CFA協会 外部包括性&多様性戦略プログラム・グローバル責任者)は、グローバルに投資専門家を先導する立場から、投資家と発行企業の人的資本管理に関する論点について解説を行った。
島津 裕紀氏(経済産業省 経済産業政策局 産業人材課長)は、人的資本経営の基礎や政策を含めた最近の動向、経営のポイントやフレームワーク、各社の取組事例やコンソーシアム等についての状況を説明した。
講演 | クレジット分析におけるSに対する評価方法と、海外企業と日本企業のケーススタディ |
ポール・マルパス氏(ノルデア・アセット・マネジメントESG 販売リード)は、スポンサー講演で、ミッションやビジョンを含む同社の企業プロフィールや運用商品の特徴等を紹介した。
木原 誠二氏(内閣官房 副長官)は、岸田政権における新しい資本主義実現のためのサステナブル・ファイナンスやESG投資について解説した。
小森 博司氏(国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)理事)は、サステナビリティ開示基準統一化のこれまでの経緯と意義、進捗、および効果への期待について講演した。
講演
| 国内外におけるサステナビリティ開示の現状と見通し |
園田 周氏(金融庁 企画市場局 企業開示課 国際会計調整室長)は、2022年6月公表の「ディスクロージャーワーキング・グループ報告」を踏まえて、国内外におけるサステナビリティ開示の現状と見通しについて講演した。
パネルディスカッション | ESG情報開示の課題と投資家の期待 |
<モデレータ>
<パネリスト>
塩村 賢史氏(GPIF チーフストラテジスト兼ESGチームヘッド) サミー・ラン氏(PwC リージョナルESG サービスパートナー)
カンファレンスの最後を飾るパネルディスカッションでは、ESG投資とESG情報開示の現状、ESG 情報開示に優れた企業、情報開示の標準化と今後のESG投資について議論した後、質疑応答が行われた。
閉会に際して出川 昌人氏(日本CFA協会 会長)は、当カンファレンスが今回で14回目の開催を迎えるなか、同協会では早くからセミナーやイベントを通じてESGの情報発信に取組んできたこと、また協会の中期目標のひとつである日本の金融の国際化について、大学生を対象とするリサーチチャレンジなどの活動を通じてこれからも推進に協力していきたいとの考えを改めて表明した。さらに、全世界で通用するESGに関する資格CFA Institute Certificate in ESG Investingを日本でも紹介し広めていく意向を述べて閉会の挨拶とした。
展示会場には協賛企業各社のブースが立ち並び、ランチやコーヒーブレイクの時間帯には多くの来場者が訪れてネットワーキングが行われた。また、講演終了後にはレセプションも開催され、主催者、協賛企業を交えて、閉会まで登壇者、参加者等による歓談が続いた。
サステナブル・ファイナンスの重要性が高まる中、健全なESG投資を育成・促進する為の最新の動向・専門知識を提供し、様々な金融業界に携わるプロフェッショナル等とのネットワークを広げる機会となる「ジャパン・インベストメント・カンファレンス」が次回以降も盛況となることで、資産運用業界の未来に向けた取組みが推進されることに期待したい。
(取材、撮影、記事、編集・制作 : GoodWayメディアプロモーション事業部 @株式会社グッドウェイ )