2015年1月8日、日本金融監査協会(IFRA)は、法政大学ボアソナードタワーにおいて、金融庁 検査局長 遠藤 俊英氏による基調講演のほか、日本取締役協会 コーポレートガバナンス委員会 原 良也氏(大和証券グループ本社名誉顧問)、および、日本金融監査協会リスクガバナンス研究会、FFR+代表 碓井 茂樹氏(日本銀行金融高度化センター)による講演が行われた
開催会場の法政大学ボアソナードタワーは、創立120周年記念として建設された校舎。当日は快晴となり、最上階からは、周りには高いビルがないため、富士山も良く見えた。
最初に、金融庁 検査局長 遠藤 俊英氏が「最近の金融行政~ビジネスモデルとガバナンスの変革に向けて~」と題して基調講演を行った。
昨年中、内外の金融機関や先進的な企業のガバナンスに関する事例調査にもとづき、検査・モニタリングの際の検証項目を明確にしたことを明らかにした。今後の検査・モニタリングでは、これを用いて金融機関の社外取締役への面談などを含め、取締役会の機能度を重点的に検証していくとした。
また、会社法改正、コーポレートガバナンス・コードの策定を受けて、今後は、銀行でも社外取締役の受け入れや、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社への移行が進むとみられる。このとき、形式を整えることが重要なのではなく、実質的に取締役会で十分に議論が行われ、ガバナンスの実効性が上がることが重要であると強調した。
さらに、質疑応答の中で、ガバナンス改革は、まず、できることから、実際にやってみることが大事である。社外監査役を取締役・監査等委員に任命したり、あるいは、独立性の基準を充足しない社外取締役を任命したとしても、取締役会の活性化、機能度アップに繋がるのであれば良い。まず、できることをやってみて、その結果、何が起きるのか、そして、次にどうするかを考えるというステップを踏むべきであるとした。
続いて、日本取締役協会 コーポレートガバナンス委員会 委員長 原 良也が「グローバル水準のコーポレートガバナンスを目指して」と題して講演を行った。
日本取締役協会は、独立取締役の導入を早くから提唱し、独立取締役が果たす役割に関する啓蒙活動を行ってきた。今回のコーポレートガバナンス・コードの策定に係る有識者会議に対しても積極的な提言を行い、日本のコーポレートガバナンス改革に貢献した。
今回のコーポレートガバナンス・コードの策定で、日本のガバナンス改革が終わるのではない。コーポレートガバナンス・コードの改訂作業などの機会をとらえ、今後もグローバル水準のコーポレートガバナンスの実現に向けて活動を続けていくとした。
最後に、日本金融監査協会リスクガバナンス研究会、FFR+代表 碓井 茂樹氏による講演「金融機関のリスクガバナンス~グローバル・スタンダードの実現に向けて」では、金融危機後、海外の金融機関では、リスクガバナンスの態勢を再構築したため、日本との格差が広がったとした。
社内取締役中心の取締役会、監査役制度など日本独自のガバナンス態勢を取り続けることは国際社会からの理解を得られないばかりか、もはや容認されない時代に入った。こうした事態を直視し、海外のベスト・プラクティスを踏まえ、わが国でも早くガバナンス改革を進める必要があるとして、今後の改革ステップを示した。
具体的には、会社法改正で認められた監査等委員会設置会社に移行するとともに、社外取締役を1~2名程度、追加任命するだけで、わが国の銀行はグローバル水準を満たす十分な数の社外取締役を確保できるとの調査結果を示した。
また、取締役会・監査委員会が、内部監査部門の人事権、予算権をもって、直接指揮する体制を構築することの重要性を指摘した。社外取締役が、内部監査部門に対して、業務計画の達成状況やリスクマネジメントの有効性などを検証させ報告を受けることが、監督者としての社外取締役の役割の自覚を促すことになると強調した。
会場の様子。全国から金融機関の役員・監査役・内部監査部門長が集まり、ガバナンス改革を巡る最新の議論に耳を傾け、活発な質疑応答が行われた。
(取材・撮影・記事・制作: 藤野 宙志、村上 遥、編集:日本金融監査協会 @株式会社グッドウェイ)
(参考)以下、過去に開催された「リスクガバナンス研究会」の様子です。
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「リスクガバナンス研究会」 (2014年9月12日 開催) 「構造改革下の金融機関経営」 日本金融監査協会顧問/ 元金融庁長官 五味 廣文 氏
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