2015年11月7日(土)、ネット専業証券大手の楽天証券(以下、同社)は、資産運用やETFに精通する講師陣やETF運用会社のスペシャリストを講師に招き、「楽天証券ETFカンファレンス2015 プロに学ぶ!マーケット環境とETFを使った資産運用」を東京都千代田区にあるJA共済ビル カンファレンスホールで開催した。
この日のテーマであるETF(Exchange Traded Fund)とは、証券取引所に上場している投資信託(上場投資信託)のことで、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)といった株価指数等へ連動するETFを、株式と同じように証券会社を通して取引ができるもの。一般の投資信託と比べ、取引所の立ち会い時間中はいつでも売買ができ、成行、指値注文、および信用取引も可能などといった多くのメリットがあることから、ETFは投資商品として人気も急拡大、2015年3月には国内で上場するETFの数が200本を超える状況となっている。
会場となったJA共済ビル カンファレンスホール。前回の「楽天証券ETFカンファレンス2014」(グッドウェイの取材レポート)も同会場で開催されており、この日も会場にはおよそ400名もの個人投資家が詰めかけた。
◎海外のETF運用会社とも積極的にコンタクトし、売れ筋のETFを国内に持ち込めるようにすることで、ETFのさらなる拡大を目指す
開演冒頭の挨拶に立った楽天証券 プロダクト本部副本部長 兼 事業開発部部長 新井 党氏は、来場者への御礼を述べた後、「弊社はNISA口座で、国内株、外国株、投資信託など、多岐にわたった取り扱い商品を提供することで、初めて投資を始める若い世代を中心としたお客様にもNISA口座の利用が進んでいる。」と述べ、さらに「新サービスとして、2014年12月から長年皆様のご要望が多かった外国株式の特定口座対応を開始した。米国、香港、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアなどの海外の個別株、ETFを対象としており、これにより、海外株式投資の確定申告等の手間が省け、より身近なものになるだろう」と語った。
また、楽天証券ETFカンファレンスがETFに特化したイベントとして、同社として今回で3回目の開催で、楽天証券だからできるオリジナルなイベントと自負していると述べたほか、「NISA口座における国内株式、国内ETFの売買手数料を無料にし、海外ETFも買付時無料(キャッシュバック)にしているほかに、日本に拠点を持たない海外のETF運用会社とも積極的にコンタクトし、海外の売れ筋のETFを国内に持ち込めるよう日々考えることで、ETFの拡大を目指している。」と語って挨拶を終えた。
続いて最初の講演は、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元氏による「超合理的ETF活用術」。ファンドマネジャー、コンサルタント等の経験を踏まえ、経済評論家として資産運用分野の専門雑誌やウェブサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍する山崎氏は、冒頭で、ETFは「E(いい)、 T(手数料の)、 F(ファンド)」ともいうとして、コストが安いETFの強みを踏まえて、運用商品としてのETFの活用術を詳しく解説した。
山崎氏に続いて登壇した、GCIアセット・マネジメント チーフ・マーケティング・オフィサー 太田 創氏は、「ETF投資入門~投資を始めるなら、まずETFを考えてみよう~」と題する講演で、日本や米国のETF市場の拡大の軌跡や2000年代前半から注目していた理由、そして、どのようなETFに投資するべきかについてを紹介。米国市場では1997年に0.8兆円だったETF残高が、2014年12月には約200兆円まで急激に拡大したといい、コストが安くて流動性も高く、指数に連動するために個別株と比べて分かり易いETFへの投資のポイントを分かり易く解説した。
休憩を挟み登壇したのは、個人投資家にもお馴染のアナリストである武者リサーチ代表 武者 陵司氏。「世界経済・日本経済と市場展望」をテーマに講演し、中国経済にはネガティブな一方で、日本、米国、欧州については概ねポジティブな見立てで、数々の国内外の経済指標を紐解きながら自身の今後の展望を披露する武者氏の講演を、来場者はメモを取りながら真剣な眼差しで聴講した。
講演が終了後、今回のカンファレンスを協賛した各運用会社からのプレゼンテーションが行われる。登壇順に、日興アセットマネジメント、三菱UFJ信託銀行、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、ブラックロック・ジャパン、リクソー投信/ソシエテジェネラル証券の各担当者が自社商品の特徴や強みをそれぞれPRした。
各運用会社プレゼンテーションの合間に登壇した、楽天証券経済研究所ファンドアナリスト 篠田 尚子氏は、「ETFをネットで選ぶ、ネットで買う」と題する短時間のPRセッションで、NISA口座でも特定口座でも取引できる同社で取扱っている国内ETFおよび海外ETFにおける、過去5年間の分配金履歴や分配金利回り、経費率、組入上位銘柄を株価チャートとともに確認することができるようになった「ETFスクリーナー」や、海外ETFについては「海外株式・ETF」のコーナーでも検索が可能なことを紹介した。
休憩時間中は多くの来場者でブースも賑わいを見せるなど、カンファレンスは本年も成功裡のもと無事終了した。
世界のETF残高の7割を占める米国市場の残高が200兆円を突破するなど、21世紀で最も成長した金融商品の一つであるETFは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの代表的な国内指数のほか、海外株式指数、金や原油の商品価格などに連動する様々な商品も提供されている。現状では日経平均株価に連動するETFが売買代金の相当数を占める状況となっているものの、日本取引所グループが毎月発行する月刊ETF・ETNレポート10月版によれば、全体の月間売買代金は4カ月連続で5兆円を突破するなど、国内でのETFの売買高や認知度は着実に高まりつつあるといえる。こうした中、同社はETFとしては国内最大規模のイベントの開催や取り扱い銘柄の積極的な拡大などを通じてETFの普及に注力しており、今後の新たな取組が大いに注目される。
(取材、撮影、記事、編集・制作 : 柴田 潔 @株式会社グッドウェイ )