冒頭に、三菱UFJフィナンシャル・グループ 常務執行役員 亀澤 宏規氏より開催の挨拶。来場者や関係者へのお礼の言葉と共に、このアクセラレータ・プログラムを開催するに至った経緯を紹介。スマートフォンの登場など生活は一変し、リアルとバーチャルの境界がなくなるなど社会通念の破壊が知らず知らずに起きているとし、これまでの銀行サービスの延長線上に捕らわれず縛られない、AIやビッグデータの活用など、競争力向上に努力していきたいと語った。その上で、急速な環境変化への柔軟な対応には、オープンイノベーションの概念が必要だとし、これまでもいろいろ取り組んできたが、銀行業界初となるこの「MUFG FINTECH ACCELERATOR」を本丸として位置づけ、4ヶ月間にわたる取り組みの成果が発表されることへの期待感を示した。そして、この場を通じた新しいつながりからオープンに知見を共有し、一緒にイノベーションの波を起こしていきたいと結んだ。
続いて、三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタルイノベーション推進部 シニアアナリスト 藤井 達人氏より、プログラム概要と4ヶ月間にわたる取り組みについて紹介。また、メンターや審査員の紹介のほか、賞の紹介(グランプリ、準グランプリ、パートナー賞)、審査の観点(①イノベーションの度合い、②利用者ベネフィット、③事業性、④サービス・商品の完成度、⑤MUFGとのシナジー)が示された。
<<審査員>>
今回のアクセラレータ・プログラムでは、MUFGグループ各社社員や各事業領域で活躍する著名な専門家、起業家、ベンチャーキャピタリストなど、総勢約40名のメンバーで構成するメンター陣と共に、MUFGグループの総力をあげて、事業プランのブラッシュアップ、プロトタイプの構築支援、事業プランの方向性に合わせたパートナー選定、アライアンスなど、事業化に向けたステップを全面的に支援。今回の第1期生となる5社と共に新たな事業の立上げに向けて取り組んだ約4ヶ月間のアクセラレータ・プログラムの成果を披露した。
「「親指ひとつで」できるコイン経済圏」
イスラエルで創業した同社は、ブロックチェーンを活用した事業化として、顧客の「行動」を「コイン化」するプラットフォーム「ZEROBILLコア」を開発。位置・時間・センサー・人をモバイルウォレット「Z-WALLET」の活用案としてキャンペーン型のユースケースをデモを通じて披露。今後については、歩数や運動に応じた”生保コイン”やテレマティクスや診断コネクターと連動した”自動車保険コイン”などのアイデアを披露したほか、三菱東京UFJ銀行との社内リワードのテストユース開始、カブドットコム証券との外向きサイトのポイントシステム導入への検討開始、三菱UFJニコスの提携パートナー向けリワード2.0の仕組みの提案などを予定しているという。
「言葉を理解して決算分析をする人工知能を開発」
個人投資家にとって、上場銘柄の86%にあたる中小型株を中心とした決算分析レポートが無いという課題に対して、自力で行うと膨大な資料を収集・分析する必要がある手間を、XBRL解析、PDF表解析、PDFグラフ解析など分析アルゴリズムと自然言語処理により、数値の背景を分析文章から探しピンポイントで抽出するなど、過去の重要な利益インパクトを解析・整理分類、企業がどのような事象に影響を受けるかが解析時間平均1分以内で一目でわかる「ゼノ・フラッシュ」を披露。2016年内にカブドットコム証券とリリースの予定しているという。今後は、個人投資家のみならず、営業マン、銀行員、コンサルタント、証券アナリスト、機関投資家向けにも対象を広げ、すべての決算分析を人の手から解放していきたいとした。
「20代・30代女性が絶対に使う新マネーアプリ」
どこでもその場で瞬時に入力でき、わかり易いグラフで自分の支出を確認できる「おカネレコ」(350万DL)における20代・30代女性の149万人(20代・30代女性の全人口1,378万人の10%に相当)をターゲットセグメントとし、同セグメントの女性が迎えるライフイベント(結婚、保険加入、妊娠出産、育児、学資保険、車、復職、住宅購入、教育)を挙げ、金融機関からなかなか接点が持ちにくい層に対して、集客の革新的な仕組みとして、恋愛ゲームといったエンターテインメントによる習慣化する「おカネNavi」、「Robo Financial Adviser」の2つのFintainment(フィンテインメント)を披露。今後、三菱UFJ信託銀行と20代・30代女性向けライフプランセミナーを9月に共同開催するという。
「AIで業務を変える、AIへの代替・分担が想定できる銀行業務」
限られた人材を高度な業務に集中するためAIを活用すべく、AIへの代替・分担が想定できる銀行業務として、中小企業の融資先判定、優良投資先検出、振り込め詐欺、マネーローンダリング検知、資産運用リスク対策、クレジットカード審査、不正融資検知、購入見込企業抽出を挙げ、従来のAI活用における専門家の試行錯誤など多額の資金と期間がかかっていた取り組みを、同社の「ナムコムAI」によるモデル作成の自動最適化(アルゴリズムとパラメーター調整を自動化)により、大幅にコストと期間を圧縮。三菱東京UFJ銀行の法人企画部内で、実際に中小企業の財務データで貸出判断のトライアルを実施したところ、結果を0か1で判定するだけでなく、1に近いか0に近いかをスコアで返ってくるため、どのお客さまにアプローチすればよいか非常に役に立ったとした。今後の活用案として、融資業務のストレステスト、特定サービス契約者と同じ特徴を持つ見込み顧客リスト、資金需要がありそうな貸出候補リストなど検討しているという。
「投資とトレーディングをAIで簡単に」
メンター: アーキタイプ 代表取締役/マネージングパートナー 中嶋 淳氏
AI技術とビッグデータを組み合わせ金融の様々な問題に挑戦する技術集団である同社は、何の金融資産をどのタイミングで買うべきか、そのトレード機会の発見とトレーディングの自動化を行う「アルパカAIエンジン」のほか、金融データ特化高速データベース「MarketStore」により、リアルタイムでの膨大な計算を既存の効果のツールの同等以上のパフォーマンスを提供。コストやデータサイズの大幅な削減を可能としている。また、米国株の特定パターンの発生を常時監視する「アルパカスキャン」、AI技術を用いて取引パターンを簡単に自動化する「キャピタリコ」など、個人ユーザー、企業ユーザーに提供することで、様々サービスを展開していくという。今後、じぶん銀行とのAIによる外貨預金積立サポートツールの提供や、カブドットコム証券とのAI技術を活用したトレーディング技術の提携など進めていくという。
20分間の休憩時間には、ピッチを終えて、ホッとした様子の登壇者やメンター、参加者同士で談話する姿が広がった。また、ホール入り口では、三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタルイノベーション推進部長 柏木 英一氏を囲み、ぶら下がり取材が行われた。
続いて、審査が続く中、ゲストスタートアップのプレゼンテーションとして、「世界標準の資産運用とリスク管理をすべての人に」(ウェルスナビ Founder&CEO 柴山 和久氏)、「東大発Fintechスタートアップについて」(Finatext CEO 林 良太氏)が行われた。
受賞結果は、以下の通り。4ヶ月間の取り組みを振り返りつつ、満面の笑みで記念撮影が行われた。
【パートナー賞:PR TIMES 賞】 5社全て
閉会の挨拶には、三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタルイノベーション推進部長 柏木 英一氏が登壇。200名を超える参加者、メンター、審査員、事務局関係者へのお礼の言葉と共に、銀行が直接手掛けたアクセラレータープログラムの成功に感謝の気持ちを伝えた。審査は大激論となり、イノベーションのいろいろな観点や中間発表からのピボットなど、プランを練り、悩み抜いてブラッシュアップしてきた経緯を振り返るなど、すんなり決まらなかったことを明かす一方、「今日がゴールではない、本当の意味でのゴールは、事業が成長していくこと」だとし、今後も5社と頑張っていきたいと語った。そして、今回、MUFGとしても複数の協業が生まれたことに触れ、オープンイノベーションの考え方は大きな威力を発揮しているとし、続く第2回の開催を発表、秋口には第2期生を募集したいとした。
全てのプログラムが終わり、会場後方に用意された「タッチ&トライ」スタートアップブースへ移動。各社のブースの前には、興味を持った参加者が訪れ、個別の質疑や意見交換、名刺交換が行われた。その後、用意された料理と飲物と共にネットワーキングへと続いた。
およそ一年前にあたる、2015年6月19日(金)に開催された「Fintech Challenge 2015 DEMO DAY(取材レポート)」から、2016年3月12日(土)~3月13日(日)に開催された「Fintech Challenge 2016(取材レポート)」を挟み、この4ヶ月間にわたる取り組みの成果が発表された今回のアクセラレータ・プログラム「MUFG FINTECH ACCELERATOR」(DEMO DAY)。より実践的なアイデアを具現化し、ビジネスとしてのリリースを前提とした提携先との取り組みなど、多方面から関わるメンターによる業界の壁を超えて一体となった大きな進化を遂げた内容に感銘を受けた参加者も多かったに違いない。今回の答案企業のサービス展開の行方と、第2期生に向けた次のステージからも目が離せない。
(取材、撮影、記事、編集・制作 : GoodWayメディアプロモーション事業部 @株式会社グッドウェイ )