講演「日本取引所グループ(JPX)の現況」では、日本取引所グループ 常務執行役CFO 岩永 守幸氏より、第二次中期経営計画(2016年度-18年度)STEP UP TO THE NEXT について解説。アベノミクスを追い風に過去最高益を達成するも、これからはマーケット環境によらず自律的に収益を確保できるよう統合の成功を基礎に市場の持続的な発展に向けた投資を強化するとし、株の一本足打法からデリバティブや周辺ビジネスを含めたバランスのとれたビジネスポートフォリオの実現を目指していくとした。また、2016年7月19日に稼働を予定している新J-GATEシステム、および既に稼働している新arrowheadシステムによる変更点や改善効果などに触れ、今後も東証マザーズ指数先物の上場や東京商品取引所(TOCOM)へのシステム提供をはじめ、清算・決済サービス拡大に向けてリスク管理や担保管理などシステム基盤強化のグランドデザインを見直し、グローバルに広がる選択肢の中でこれまで以上に意見を尊重し、競争力を高めていくと語った。
講演「決済制度の将来 The NEXT Step」では、ブロードリッジ・ジャパン チーフ・オペレーティング・オフィサー 星野 好幸氏より、いまから20年前に遡り、国債の5・10日決済からローリング・セトルメントへと変化し、当初はT+5 (1996年)、T+3 (1997年)、その後、長い期間をかけて現在のT+2 (2012年)、そして最終段階と言われているT+1 (2018年予定)へと日本の決済制度の歴史について解説。一方、決済リスク・カウンターパーティーリスクを無くすという本来目的においては、T+1を実現してもリーマンショックのような週末を跨ぐ際のリスクが残ることも指摘。技術的な制約やプロセスの限界・現物や現金といったイメージの呪縛に捉われることなく、FinTech・デジタル化・クラウド・ブロックチェーンなど急速に環境変化が進む中、T+1が終わりではなく、ゲームや音楽ソフトの売買のようなT+0・リアルタイム決済の可能性に向けて、この次のことを考えて行く必要があるとした。その上で、証券取引所・市場統合による統一化・標準化、XMLフォーマット・ISO20022メッセージによる標準化が加速する中、決済分野の国際的な標準化の流れは避けられないとし、バックオフィスはこれまでの差別化の時代から統一・統合へと変わっていくと私見を披露。金融業界において自分たちで未来を見据え目標を立ててリスクを削減しマーケットを守るため、これからも一緒に取組んでいきたいと抱負を述べ締め括った。
講演終了後は、隣室に用意されたカクテル・レセプション会場に移動。乾杯の挨拶は、ブロードリッジ Head of Asia Pacific, David Becker氏より、参加者・講演者・関係者への御礼の言葉と共に、2017年が更なるチャレンジと成長の年になることを願っているとし、乾杯した。(ブロードリッジ・ジャパン 営業部 部長 茅壁 慎二氏が司会・通訳を務めた。)