2018年6月11日(月)、企業のビジネスを支えるICTサービスをトータルに提供する三井情報(以下、同社)は、金融機関の経営・管理者層を招き、毎年恒例となった「三井情報 金融フォーラム2018」を、皇居に隣接するパレスホテル東京で開催した。
幅広い業種にサービスを提供する同社は、金融業界に対しては企業財務分析診断の業界標準システムである「CASTER」や、決済業務支援、融資渉外支援などのソリューションを提供。この日は、金融機関の経営・管理者層を中心に多くの来場者が会場を訪れ、FinTechやオープンAPIをテーマとした講演を聴講。終了後は同ホテルで懇親会も盛大に行われた。
昨年同様、会場となったのはパレスホテルグループの旗艦ホテルであるパレスホテル東京。受付で手続き後、来場者は次々と講演会場に移動。ほどなく開会時刻を迎えた。 【開会挨拶】三井情報 代表取締役社長 小日山 功氏「金融サービスと非金融サービスとの融合により、これまでの垂直型ビジネスモデルから水平型ビジネスモデルへの転換を促す」 小日山氏は来場者、登壇者に対する御礼を述べた後、4月から始動した第五次中期経営計画について、従来のシステムインテグレーターから、ICTをベースとした価値創造企業へのトランスフォーメーションを命題に掲げたと述べ、現在まで培ってきたすべての「KNOWLEDGE」を結集して、内外ステークホルダーとともに新たなビジネスを創出する『共創』事業に積極的に取り組んでいくと力強く語った。
その後、同社の金融ICT事業についての新たなビジネスの取り組みとして、金融機関と企業・消費者の相互データの連携を行うデジタルエンゲージメントハブ、およびデータの収集・蓄積、さらにそれらを分析、解析するデータ分析プラットフォーム(次世代エンゲージメントプラットフォーム)について詳しく紹介。また、金融サービスと非金融サービスとの融合により、これまでの垂直型ビジネスモデルから水平型ビジネスモデルへの転換を促し、新たな『共創』事業の確立を金融機関とともに目指していきたいと抱負を語った。
さらに、デジタルエンゲージメントを付加価値の高い商品・サービスに転換するデータ分析分野において、英国Black Swan Data社との協業によりデジタルマーケティングの高度化を実現。財務分析ソリューション「CASTER」のリニューアル、三井物産でのノウハウを活用した市況予測等を活用することで金融サービスと非金融サービスの領域から取り込まれたデータの集積・集約・分析を効率的に行うことで、金融機関のみならず企業や消費者に対しても付加価値を提供していくことができるだろうと語って挨拶を終えた。 【特別講演】京都大学公共政策大学院 教授、元日本銀行FinTechセンター長、岩下 直行 氏「FinTechで描く金融の未来」 京都大学教授で元日本銀行 FinTechセンター長である岩下氏は、FinTechの概観を語った後、日本の金融ITが抱える課題、規制当局の対応、金融機関に期待される対応について解説。またFinTechの前提条件としてインターネットバンキングの現状やイノベーションの次のハードルとして金融オープンAPIについて語った後、日本のキャッシュレス化、仮想通貨を巡る動き、金融庁における検討状況に至るまでのテーマについての講演を行い、来場者は熱心に耳を傾けた。【講演】Token, Inc. Founder, CEO スティーブ・キルシュ氏「Why smart digital money is the future of banking~オープンAPIを銀行の強みに~」
キルシュ氏は次世代支払い基盤を構築するシリコンバレーのスタートアップ企業で、PSD2(欧州の決済サービス指令)に対応したオープンAPIプラットホームを提供するToken社のCEO。冒頭の自己紹介で、シリコンバレーで起業した企業の時価総額が数十億ドルに達したことなどに触れた後、Token社の企業紹介および銀行のオープンAPIをどのように強みにしていくかなどについて解説した。
【閉会挨拶】三井情報 執行役員 金融営業本部長 高田 康博氏 最後の閉会挨拶で高田氏は、会場に4点ほど新しいソリューションを展示しているとして、30年以上にわたって融資・審査部門で使われているソリューションの最新版「CASTER X(テン)」をはじめ、自然言語処理を用いて企業間の関係性を可視化する企業類似性可視化ソリューション「NLP」、ブロックチェーンを用いたデジタル通貨ソリューション「Billon」、自然言語処理を用いた音声認識型の自動応答システム「りらいあ・ボイスクラウド」を紹介した。
講演会終了後は隣接する会場で懇親会が行われ、同社 取締役副社長執行役員 菅野 達志氏(写真左)より開会の挨拶、JA 三井リース 代表取締役 社長執行役員 古谷 周三氏(同右)による乾杯音頭で懇親会がスタート。会場内が歓談で盛り上がるなか、デモコーナーにも多くの参加者が立ち寄ってスタッフの説明に聞き入った。歓談も弾むなか、お開きの時間を迎え、閉会の挨拶を同社 取締役執行役員 渡邉 辰夫氏(同右下)が行って懇親会も終了した。
金融リスク分析・管理に強みを持ち、銀行、保険、証券、リース業などの金融機関の基幹業務システムの企画・立案から開発、運用・保守までのトータル・システムインテグレーションを提供している同社は、ICTをベースとした価値創造企業への転換を推進。2017年4月新設の「デジタルトランスフォーメーションセンター」では、デジタルテクノロジーの研究・開発を軸に、コンサルティングサービスやワークショップ・ビジネスモデルなどを通じて、顧客の新たなビジネス創出に貢献しているという。金融機関にとって待ったなしの変革時期を迎えた今、金融フォーラムでは迅速な経営判断に役立つ、時代を読み込む鍵となる感度の高いテーマを設定して毎年開催してきた。こうした取組が、金融機関と企業・消費者の相互データの連携と活用、金融サービスと非金融サービスとの融合という同社の新たな金融ICT事業の推進を後押しし、金融機関との『共創』事業に結びつくことを期待したい。