◎NISAが始まって投信の販売状況に変化はあったか?また、投資家層にも変化は出ているか?
税制変更もあり年末に現金化されたものがNISAに流れ、1月以降、それら現金がNISAを通じて流入し、継続的な買い注文や積立が増え、販売状況はポジティブに積み上がっている。今のところ既存の投資家が中心でNISA自体を普及していくフェーズでもあり、投資家層にドラマティックな変化はまだ無いが、今後、相場環境が良くなれば出てくると思う。
年末にプールされたキャッシュもあり1月は過去最高の買い越し幅となった。NISA口座開設の比率は全体の1割ほどだが、積立・投信デビューした20代、30代での利用も広がっており、NISAに占める割合としては3割ほど。今後の啓蒙により、積立は増えていくだろう。若年層や女性のNISA新規デビューの比率を見ていると、先ずは感応度の高い層から来ており、今後の伸びしろはあると考えている。
昨年の解約ラッシュから一転し、足元の1月~2月は過去最高の水準で、販売額は2.2倍、ネット証券を通じたシェアもプロジェクトをはじめた当初の0.8%から1.7~2%以上となっており、手応えはある。商品では、パフォーマンスが良い国内外のREIT関連が売れている。NISA新規口座では女性比率が5割超えと驚異的。今後、グループの銀行仲介も4月中旬から力を入れていく予定。
まだNISAの活用は既存の投資家が中心で、新しい投資家の掘り起こしはまだまだ。期間やリバランスの制約など制度上の改善を共同で行政に提案して直していくことで、裾野を広げていきたい。女性の比率が半数超えと高いが、本格的な成長はこれから。デフレを実感している人は株をやっていた既存投資家に限定されており、NISAを通じて広く実感を伴っていくことが重要。そういう意味では、今年から来年にかけては、とても大切な時期だと考えている。
◎取引所の取引時間延長研究会の内容、夜間の取引について、証券会社で意見が様々あるようだが、どのように考えているか?
取引時間、取引機会が増えることには賛成。進める上で、市場の公正性や投資家保護という二つの観点でしっかり吟味し、課題を集めていきたい。はじめ方はいろいろあると思うが、やってみないと分からないこともある。証券業界の意見が一つになることはないので、本当に夜間のニーズがあるかどうか、第一弾として先ずはじめてみるというのも一つだ。
取引所のアンケートによると前向きとのことだが、SBIグループ内にはPTS(SBIジャパンネクスト証券)があり、公開はしていないが独自のアンケートの結果を見る限り、SBIの顧客からのニーズはないと判断しており、必要だと考えていない。
本市場の時間延長ではなく、別市場としてのPTSであれば、参加するしないはそれぞれの経営判断だ。一方で、上場企業の情報開示タイミングに影響を与えることなどについて考えていく必要があるだろう。本音としては賛成だが、むしろ、デリバティブ先物市場がFXと同じように祝日でも出来るようになってほしいという意味では、東証のPTSよりも、大証のデリバティブ市場に頑張ってもらいたい。
東証の案は、SBIジャパンネクスト証券やチャイエックスと同じく、あくまでもJPXグループとしてPTSをやりたいという単純なお話なので、やりたければやれば良いし、参加したければ自由に参加すれば良い、という整理をしている。当然に、対面証券会社に必要性を問えば要らないという回答になるだろうし、SBIジャパンネクスト証券のPTSで取引している投資家に問えば既にやっているという回答になるし、他のネット証券に問えばあったほうがいいとなる。別市場である、といった瞬間に、おおごとに捉える必要なない。ただし、東証の取引時間が1日に5時間しかないというのは世界的に見てもなく、企業活動がグローバルに24時間行われている中、価格発見機能が5時間しかないというのはおかしい話でもあり、今後、取引時間が伸びること自体は自然なことだ。
◎デリバティブ市場の統合について、どのように影響があると考えているか。
Tdex+(東証デリバティブ市場)とJ-GATE(大証デリバティブ市場)が統合するわけだが、取引のほとんどが日経225ということもあり、あまり変わらない。一方で、場口銭が合算でかかってくるという統合の逆効果がある点については、何とかしてほしい。
両方取り扱っているが、ほとんどが日経225なので、変化はない。
これまでTOPIXを長く取り扱ってきて、NT倍率など投資家のリテラシーも高まっており、取引所にとって大きなイベントである統合後には、新商品、時間拡大(祝日の取引を含め)など、取引所で新しいチャレンジが出てくることに期待している。
証券会社としては同じ意見。一方、全体でみると、新しい指数JPX400(取材レポートはこちら)などに、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などいろんなお金が入り、ROE(株主資本利益率)を意識した経営を要求されるようになることは良いことだ。そのためにも、先物市場がないとモメンタムを作れないので、JPX400の先物市場ができることに期待したい。
◎ネット証券として投信のシェアの伸ばす上での課題と施策について教えてください。
IRA(退職年金プラン)や401K(確定拠出年金)など、公的年金の問題がある中、資産形成における社会制度の背景が変わっていく必要がある、地道な活動を続けていくとともに、資産形成をどうするか、世代間の資産の移転をどうするか、などについて支援していきたい。
対面コンサルティングを受けて買いたいという層にもアプローチすべく、グループ内外の仲介業者との裾野やネットワークを広げている。ネットのチャネルでは、NISAに関するコンテンツやプロモーションがまだ不十分という状況な中でも伸びていることから、今後も取り組む余地はまだまだあると考えている。
投資信託は主に対面向けに商品開発されており、ネット証券で作っていないので、株のように安ければ取引されるというところに至っていない。とは言え、ネット上位の販売力もついてたこともあり、これからのキーワードとして捉えている、積立て、動画による販売手法の変化(店舗の在り方の変化)などに取り組んできたい。
ネット証券で売れている投信は、ノーロードを中心としたお客様が買いたい商品が売れている。一方、世間では、売る側が売りたい高いロードの商品が売れている。デフレが長く続いたこれまでは、投信を買いたいというディマンドは投資家ではなく、販売側が作ってきた。今後、デフレから脱却し、投信を買いたいというディマンドが投資家側から出てくると、ノーロードを中心に提供しているネット証券が有利になる。そのようにマーケットが変わった時に、しっかりと良いナビゲーションできるよう、用意しておくことが大切だ。