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2019/07/08

【日本銀行】日本銀行はデジタル通貨を発行すべきか~「ロイター・ニュースメーカー」における講演~

| by:ウェブ管理者
1.はじめに
本日は、講演の機会を頂戴し、大変光栄に存じます。
わが国の決済システムを取り巻く環境には、近年、様々な変化がみられています。まず決済サービスの需要面をみると、夜間や休日にも利用できる決済手段や低コストの国際送金など、より利便性の高い決済サービスが求められるようになっています。消費者のライフスタイルの多様化やeコマースの普及といった変化がその背景にあります。一方、決済サービスの供給面をみると、スマートフォンやICカードなど、人々が決済サービスを利用できる媒体が拡がってきました。このようなキャッシュレス決済サービスの提供においては、金融機関に加え、情報技術などに強みをもつノンバンク企業――いわゆるFinTech企業――など、多様な主体が関わるようになっています。

決済システムの安全性と効率性の向上を責務とする中央銀行にとって、デジタル社会における決済システムの将来像を考えることは非常に重要です。こうした中、中央銀行が、銀行券や貨幣などの現金に替わる決済手段としてデジタル通貨を発行すべきかどうかという点が重要な論点として取り上げられるようになってきました。
中央銀行が発行するデジタル通貨のことを“Central Bank Digital Currency”と言いますが、以下ではこれをCBDCと略します。国際決済銀行が世界各国の中央銀行を対象に、CBDCに関する興味深いアンケート調査を行っています(図表1)。回答した63の中央銀行のうち、約7割の先が何らかの形でCBDCに関する取り組みを行っており、その多くは調査・研究や実験・概念実証が主目的です。実際にCBDCを発行することを念頭に開発に取り組んでいる中央銀行は少数派であり、そうしたケースは、銀行券の流通が急速に減少しているスウェーデンや、銀行券に関するインフラが十分に整備されていない新興国・途上国など一部の国に限定されています。これらのケースを除くと、中央銀行の多くが先行きにおけるCBDC発行の可能性は低いと回答しています。

このように、多くの中央銀行は、近い将来、CBDCを発行する計画はないが、調査研究は行っていくというスタンスにあり、日本銀行も同様の考えです。では、なぜ、中央銀行はこうした、一見矛盾するかのようなスタンスをとっているのでしょうか。その背景を説明することが本日の講演のメインテーマです。
以下では、まず、わが国のリテール決済の現状――つまり、個人間や個人と企業間の決済の動向――について整理し、その後、CBDCの発行形態や期待される役割について説明します。その上で、CBDCに関する調査・研究を通じて、民間デジタル通貨を含めた決済システム全体の将来像に対して、どのような示唆が得られるのか、考えてみたいと思います。


原文はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190705a.htm/

16:04 | 金融:行政・取引所・団体
 

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