決済システムの安全性と効率性の向上を責務とする中央銀行にとって、デジタル社会における決済システムの将来像を考えることは非常に重要です。こうした中、中央銀行が、銀行券や貨幣などの現金に替わる決済手段としてデジタル通貨を発行すべきかどうかという点が重要な論点として取り上げられるようになってきました。 中央銀行が発行するデジタル通貨のことを“Central Bank Digital Currency”と言いますが、以下ではこれをCBDCと略します。国際決済銀行が世界各国の中央銀行を対象に、CBDCに関する興味深いアンケート調査を行っています(図表1)。回答した63の中央銀行のうち、約7割の先が何らかの形でCBDCに関する取り組みを行っており、その多くは調査・研究や実験・概念実証が主目的です。実際にCBDCを発行することを念頭に開発に取り組んでいる中央銀行は少数派であり、そうしたケースは、銀行券の流通が急速に減少しているスウェーデンや、銀行券に関するインフラが十分に整備されていない新興国・途上国など一部の国に限定されています。これらのケースを除くと、中央銀行の多くが先行きにおけるCBDC発行の可能性は低いと回答しています。