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2016/06/01

【三井住友トラスト・アセットマネジメント】「SMTアジア新興国株式インデックス・オープン」 高成長期待から持続的な安定成長へ。変化を続けるアジア新興国に低コストで分散投資できるのが魅力~運用5年目を迎えるネット証券専用ファンドを徹底レポート【6】~(ネット証券4社資産倍増プロジェクト)

| by:ウェブ管理者


 アジア地域の新興国株式に投資する、三井住友トラスト・アセットマネジメントの「SMTアジア新興国株式インデックス・オープン」。現在は、同社のSMTインデックスシリーズの1本となっているが、実は2011年の設定当初はネット証券4社の専用ファンドだった。

  中国をはじめ新興国株式が軒並み大幅に下落した2015年、ファンドの基準価額はどう推移したのだろうか。2015年3月~2016年2月末までの1年間の運用状況と今後の見通しについて、古賀幸治郎・三井住友トラスト・アセットマネジメント株式運用グループシニアファンドマネジャーに話を聞いた。

1本でアジア新興国の約530銘柄に分散投資できるファンド

 まず、ファンドの概要を確認しておきたい。「SMTアジア新興国株式インデックス・オープン」は、新興国の中でもアジア圏の8カ国に絞って投資するインデックスファンドだ。具体的には、アジア新興国の株価指数である「MISCエマージング・マーケット・アジア・インデックス(円換算ベース)」に連動する投資効果を目指す。

 「1本で、アジア新興8か国の約530銘柄に幅広く分散投資できるというのが、ファンドの大きな特徴であり魅力です。ベンチマーク構成銘柄は約550銘柄ですが、中にはウェイトが非常に小さかったり、1件あたりの取引コストが割高だったりという銘柄もあります。そこで、最適化法という手法を用いて、取引コストを抑制しつつ指数との連動性を保つため、一部の銘柄に関してはファンドの規模に応じて組み入れるという判断をしています。

 また、ファンドマネジャーが個別に銘柄を選ぶアクティブファンドに比べて、運用コストが相対的に低く抑えられていることもこのファンドのメリットと言えます」(古賀シニアファンドマネジャー、以下カギカッコ同)

 投資対象国は、中国、韓国、台湾、インド、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピンの8カ国。国の構成についても、運用スキームも、設定当初からの変更はない。ただ、この1年では組み入れ銘柄に関して、一つの変化があったという。

●MISCエマージング・マーケット・アジア・インデックスの国別構成比



「2015年11月末に、米国株式市場に上場している米ドル建ての中国株(預託証券(DR))が指数に採用されたため、当ファンドも新規に組み入れを行いました。銘柄としては、たとえばEコマースで中国最大手のアリババや、検索大手のバイドゥなどです」

 一方、前回の取材時に、預託証券の指数組み入れと共に「可能性がある」としていた、中国A株のMSCIエマージング指数への組み入れについては見送られた。「可能性はあると見られていましたが、A株に投資する際の資本移動に制約があり、株主の権利が必ずしも保障されているとは言えないといった理由などから、採用されませんでした」。

2015年5月の最高値から、▲25%を超える下落となった基準価額

 次に、直近1年程度(2015年3月末~2016年2月末)の運用状況について聞いた。2015年5月27日に、このファンドは設定来最高値となる基準価額2万2814円をつけた。ただ、その後は大幅に下落し、2016年2月29日の基準価額は1万5481円。1年間では、実に▲25%を超えるマイナスのリターンとなってしまった。

「1年間の動きを一言にまとめると、中国主導の下げ相場で右肩下がりに推移したと言えます。下落の理由にはいくつかありますが、大きなものとしてはまず中国本土株式市場が実体経済以上に上昇して、その結果、混乱したことと、米国の利上げ観測の影響で新興国から資金が引き上げられたことが挙げられます」

                                           ●基準価額の推移
 1年間を4つに分けて、さらに詳しく解説してもらった。まず、2015年4~6月末まで。この時期の中国株は好調で、指数ベースでは+4.2%と上昇していた。「2014年11月に香港・上海相互取引が開始され、その頃から中国A株が急騰。2015年に入っても、ブームの様相で毎月上がり続けている状況でした」。

 逆に、大きく下落したのはインドネシア市場だ。前述の米国利上げ懸念による資金引き上げに加えて、主要企業の決算がよくなかったことで、企業業績への懸念が高まったためだという。こうした中、前述のとおり、ファンドとしては5月27日に設定来高値をつけた。

 次の7~9月末までは、アジア新興国だけでなく世界的に株式市場が大幅下落した。「中国では、大幅上昇で株価が割高になっていたことや、PMI(購買担当者指数)の悪化による景気減速懸念の強まりなどが下落の引き金です。中国市場は指数ベースで▲20%以上も下落しました。またこの時期は、ギリシャの債務不履行懸念が深刻化し、実際にアテネ株式市場が一時閉鎖され取引ができない状況に陥りました」。

 10~12月末は、その前の大幅下落の反動もあって、アジア新興国の多くが上昇に転じたという。「プラス要因としては、たとえば中国では、自動車減税などの景気対策が打ち出されるといったことがありました」。下落が続いていたインドネシアも、10月以降は積極的かつ継続的な景気対策が功を奏し、この3カ月は指数ベースで+13%を超える上昇となった。

 しかし、1月以降は再び下落へ。「1月に、中国政府は市場の安定化を目指して中国A株のCSI300指数にサーキットブレーカー(※)を導入しましたが、導入による混乱で結局すぐに撤廃。その影響で、中国本土市場が急落しました。また、一時は中国など中華圏の代替投資先として資金が流れたインドも、企業業績の不調や不良債権の増加などが嫌気され、1月以降は▲10%を超える下落となりました」。

※サーキットブレーカーとは、株価が大きく変動した際や相場に過熱感が出たときに、一定のルールに基づいて取引を一時的に中断する措置のこと。

 古賀シニアファンドマネジャーは、実は株価の水準自体は変わっていないと指摘する。「株価を1株あたりの利益で割った予想PERで見ると、グラフの通り、比較的安定しています。つまり、利益水準が下がっているということです。資金の引き上げなどでかなり売られた印象ですが、その背景にはやはり業績の悪化、特に資源価格下落によるエネルギーや素材関連企業の悪化があるのではないでしょうか」。

●MSCI エマージング・マーケット・アジア・インデックスの予想PER


 
持続可能な安定成長を目指していく、今後のアジア新興国

 気になるのは、今後のアジア新興国の経済環境とファンドの見通しだ。これまでアジアの新興国は、高い成長期待が魅力だったが、今後は果たしてどうなっていくのだろうか。まずは、経済環境について、ポジティブとネガティブの材料をそれぞれ挙げてもらった。

「ポジティブな材料としては、中国では不動産価格の持ち直しと鉄鋼などの素材価格の上昇があります。また、石油価格が下落し、インフレが鎮静化しているインドには、金融緩和や利下げが期待できるでしょう。インドネシアでは、前述のとおり積極的な景気対策が継続中です。さらに、米国の利上げのペースが鈍化していることも、アジア新興国にとってはポジティブと言えるでしょう」

 ただ、中国の中長期的な景気減速懸念は足元では変わっていないことはネガティブ材料とのこと。しかも、「中国は、GDP6.5~7%程度を2016年の目標としていますが、ここに来て中国のGDP(国内総生産)の数値は正しいのかという疑問を提示するエコノミストも出てきています」と古賀シニアファンドマネジャー。「中国の鉱工業生産指数が+5%程度まで鈍化してきているのに、GDPは安定して6.5~7%はおかしい、というのがその理由です」。

 一方、MSCIエマージング・アジア指数自体にも、動きがあるという。「先ほど、指数に米国上場の預託証券が採用されたと申し上げましたが、市場へのインパクトを考慮して、この変更はまだ半分しか実行されていません。残りの半分は5月末に採用される予定です」。

 すでに採用された部分も含めて、指数に採用される米国株式市場上場の預託証券はすべて中国銘柄だ。そのため、指数に占める中国株の割合は現在の3割からさらに数パーセント程度、増えることになるという。また、組み入れ業種では成長性の高いソフトウェアや消費関連の比率が高くなり、3割を超えてくると予想される。

「もう一つの動きとしては、昨年見送られた中国A株のMSCI指数への採用についても、6月にはMSCI側のレビューが発表されます。採用されれば、上海・深セン市場から400銘柄程度が加わることになり、投資ユニバースが大幅に拡大します」。中国本土の有望な銘柄を取り込むことで、より高いパフォーマンスを目指していくことが可能になる。

「当局も採用に向けて、QFII(適格国外機関投資家)であればA株への投資枠の上限を撤廃するなど緩和策を進めています。今回、必ずA株が指数に採用されるとは限りませんが、いずれ中国A株のグローバル化が進展すると考えてよいでしょう」

 これまで、中国などアジア新興国への投資では、何より「高い成長」が期待されてきた。各国も、財政投入などで無理にでも高い成長を実現させてきたという面があると古賀シニアファンドマネジャーは語る。「しかし、中国もインドもインドネシアも、今は財政を悪化させずに、安定して長く成長を続ける道へと方向転換しています。個人的には、その方向は評価できると考えています」。

 では、安定成長を目指すアジア新興国のファンドと、個人投資家はどのように付き合っていけばよいのだろうか。「前回もお話しましたが、たとえば外国株式に投資していて、先進国と新興国の割合が7:3という場合は、『3』の部分をこのファンドで運用するといった方法が考えられるでしょう」。

 なお、「アジア新興国」といってもそのうちの3割以上が中国である点はよく理解しておきたい。A株の指数採用などがあれば、今後はさらに中国株の比率が高まることも考えられる。「中国株への投資の意向は、人によってさまざまだと思います。ただ、中国は米国に次ぐ経済規模であり、まったく投資しないのは『持たざるリスク』もあるかもしれません。そういう意味で、中国株がある程度含まれるアジア新興国に、低コストで分散投資するという考え方は十分にあると言えるでしょう」。

 最後にコスト面だが、「SMTアジア新興国株式インデックス・オープン」をネット証券4社で購入した場合の購入時手数料は0円(ノーロード)。運用中にかかる信託報酬は0.648%(税抜0.6%)で、換金時には0.3%の信託財産留保額が必要になる。

 ファンドの詳しい情報については、こちらのページも参照して欲しい。

(取材・記事:肥後 紀子 / 撮影:/柴田 潔 / 編集・制作:グッドウェイメディアプロモーション事業部)

(オリジナル記事掲載元:ネット証券4社共同プログラム「資産倍増プロジェクト」ネットで投信を買う!




18:53 | 写真:投資家向け




 

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