冒頭の開催挨拶は、楽天 代表取締役副社長執行役員 穂坂 雅之氏(写真右)が登壇し、来場者へのお礼の言葉と共に楽天の利益全体の45%を占める金融事業楽天カードについて紹介。35%/年のペースで伸びている楽天カードのほか、楽天証券、楽天銀行、楽天生命などインターネットを活用した新しいサービスを開拓していくほか、楽天スマートペイ事業(スマホでカード決済)や楽天Edy(プリペイド型電子マネー)など、世界展開に先立ち国内で急拡大していることを披露。長い一日となるが、充実したプログラムをぜひ楽しんで欲しいとした。司会は経営コンサルタント ショーン マクアードル 川上氏が務めた。(写真左下) (※上記の金融グループ各社に加え、楽天インシュアランスプランニング、楽天投信投資顧問 が主催。)
SESSION 1 基調講演「アベノミクスの論点と日本を取り巻く経済環境」(慶應義塾大学 総合政策学部教授 竹中 平蔵氏)では、、先のダボス会議の印象として、テロや格差拡大が懸念される中、世界経済がゆるやかな回復過程にあるというコンセンサスの元、楽観的な基本シナリオがあるとした。その一方で、イスラム国やウクライナ情勢、原油安によるロシア危機と米国金利見通しなどリスクファクターも数多くあり、目配りする必要があるとした。
また、日本においては、規制改革、法人税引き下げ、外国人労働者と女性の活躍の場、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用改革のほか、近未来技術実証特区や民間事業者にインフラの事業運営権を付与するコンセッションによる公的資本と民間企業による価値創造、アジアの活力と2020年オリンピックに向けた強いモメンタムを取り込み、チャンスを活かす強いマインドを持つことが重要だとした。 SESSION 2 パネルディスカッション「ビットコインの台頭」では、パネリストに、経済学者 早稲田ファイナンス総合研究所顧問 一橋大学名誉教授 野口 悠紀雄氏、Bitnet Technologies 共同創業者兼CEO John McDonnell氏、弁護士 ニューヨーク州弁護士 JADA顧問・監事 中央大学専門職大学院国際会計研究科兼任講師 斎藤 創氏の3氏を迎え、日本経済新聞社 論説委員 兼 編集委員 関口 和一氏がモデレーターを務めた。 日本ではビッドコインの取引所の一つであるマウントゴックスの破綻などもありピーク時に比べて大幅に価値が下落したビットコインも、海外ではその利用が広がっており、送金コストの低さ、ブロックチェーンによる信用担保などその特徴を活かしたサービスが広がる中、今後のビットコインの可能性と課題、レガシーと新しいシステムの違い、日本における法令制度と今後の流れについて語った。
SESSION 3 パネルディスカッション「2025年、決済進化形」では、パネリストに、PayPal Asia SVP Rohan Mahadevan氏、MasterCard SVP シェアードプラットフォームサービス&エマージングペイメンツ James Anderson氏、楽天 スマートペイ事業事業長 小林 重信氏の3氏を迎え、ロイター通信 日本編集局長 Kevin Krolicki氏がモデレーターを務め、それぞれが提供しているサービスとその立場から、スマートフォンやApple Payの登場など大きく変化する決済を取り巻く環境に対する現状認識と10年後の姿に向けた取組みなど、決済の進化による新しい文化や経済活動の未来像を語った。
SESSION 4 パネルディスカッション「FinTech最前線」では、パネリストに、Highland Capital Partners パートナー Peter Bell氏、Currency Cloud CEO Michael Laven氏、Betterment 共同創業者 兼 COO Eli Broverman氏、Matchi.biz CEO David Milligan氏の4氏を迎え、CNBC戦略的コンテンツ&ニュースパートナーシップグループ責任者 「Disruptor 50」企画・制作責任者 Steve Lewis氏がモデレーターを務め、それぞれが関わっているFinTech領域での立場から、ベンチャーキャピタリストとスタートアップ企業のマッチングや投資・支援活動の事例、Currency CloudやBettermentの事業展開など、FinTechベンチャーを取り巻くトレンドと今後の見通しについて語った。 SESSION 5 パネルディスカッション「総括セッション 技術革新が生む新たなる金融サービス像」では、楽天 代表取締役会長 兼 社長 三木谷 浩史氏、 PayPal 共同創業者 Peter Thiel氏による対談、関口氏がモデレーターを務めた。 Peter Thiel氏は、PayPal創業経緯を振り返りると共に、金融とITが結びつくFinTechの流れは自然な展開だとしつつも、単なる既存の仕組みの延長上の競争ではなく、まだ他人が注目していない課題解決につながる新しいビジネスを創造していくことが重要だとした。また、三木谷氏は、FeliCa(フェリカ)がグローバルスタンダードになれなかったことを例に挙げ日本のガラパゴス問題を指摘、日本固有の規制とならないよう世界標準を意識し、イノベーションの連鎖を起こしていくと共に、デジタル通貨や参入障壁が高く価値の高いポテンシャルのある金融テクノロジーへの挑戦に向けた意欲を示した。
近年、金融機関のみならず、非金融機関であるネット・テレコム・スタートアップ企業などが生み出す金融サービスとして、スマートフォンやEコマースの分野をはじめとする新しい利用シーン、ユーザーエクスペリエンスの提案・提供が世界規模で巻き起こっている。
このような中で、日本政府が掲げる経済の活性化に向けたガバナンスや規制、金融市場の改革に加え、金融・IT融合(FinTech)の分野における最新の動向やテクノロジーを共有し、ITを活用した国際競争力のある新産業の創出に向けた環境整備と一人一人のマインドの変化に注目したい。
(取材、記事:藤野 宙志 / 撮影、編集:村上 遥 @株式会社グッドウェイ )
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