【日本銀行】【講演】中曽副総裁「金融危機と中央銀行の「最後の貸し手」機能」(世界銀行主催エグゼクティブフォーラム、4月22日)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130423a1.pdf
1.はじめに
米国を起点に発生した金融危機は、2007 年夏に国際金融資本市場の動揺という形で始まり、2008 年秋のリーマンブラザーズ破綻後に影響の範囲と震度を急激に増していった。今次危機は、金融システムに内在する不安定性、そして、金融システムと実体経済の相乗的な悪化作用を改めて確認させるものとなった。各国の中央銀行は、金融危機に対して、金利の引き下げや潤沢な流動性の供給のほか、いわゆる非伝統的な金融政策などを含め、様々な対応を講じてきたが、危機の渦中において、中央銀行に求められる本質的な役割は「最後の貸し手(Lender of Last Resort、以下LLR)」であると言ってよい。
LLR の重要性は歴史が証明しており、今次危機でも、中央銀行の積極的な行動が金融システムの崩壊や景気の底割れを防ぐ上で非常に効果があった。
LLR の重要性は歴史が証明しており、今次危機でも、中央銀行の積極的な行動が金融システムの崩壊や景気の底割れを防ぐ上で非常に効果があった。
LLR の概念を広く普及させたのは、英国のエコノミスト誌の編集長であったバジョットである1。彼は、LLR の基本原則の一つとして、金融システムの動揺を防ぐために、“solvent but illiquid”な銀行(支払い能力はあるが一時的な流動性不足に直面した銀行)に対して、中央銀行は貸出を行うべきとした。
近年、経済学界の一部から、「バジョットの原則は、金融市場が未発展な時代に打ち出されたものであって、現代の金融市場のように、市場参加者が高い情報収集能力を有している場合には、もはや当てはまらない」といった指摘も聞かれていた。そうした見方は、「市場が効率的であれば、取引相手の支払能力の有無と流動性制約の問題を明確に識別できるため、債務の支払能力のある銀行が流動性制約に直面することはなく、したがって、個別金融機関に対する中銀のLLR 機能はもはや不要である」という考えに基づいていた。
詳細
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130423a1.pdf