IBMリサーチの暗号研究者でIdentity Mixerの共同発明者であるヤン・カメニッシュ博士(Dr. Jan Camenisch, cryptographer and co-inventor of Identity Mixer at IBM Research)は次のように述べています。「Identity Mixerには、10年以上の研究成果が組み込まれており、個人の識別に関わるデータの開示を必要最低限に抑えるというコンセプトを実現したものです。」
Identity Mixerの共同発明者で現在ブラウン大学コンピューター・サイエンス学科の教授であるアナ・リシャンスカヤ博士(Dr. Anna Lysyanskaya, a co-inventor of Identity Mixer who is currently a professor of computer science at Brown University)は次のように述べています。「わたしたちは、個々人が、自分の個人情報の公開を管理できるようにしたかったのです。クラウド上で利用可能となったIdentity Mixerによって、開発者は個人情報の保護を実現化する非常に強固な暗号化ツールを手に入れることができます。これは、どんな個人識別管理サービスにも組み込むことができるソフトウェアであり、他の個人情報を公開することなく個人が認証されたユーザーであるか、検証することを可能にします。」
ヨーロッパとオーストラリアにおける試験運用でIdentity Mixerの可能性を実証
新しいクラウド版Identity Mixerを実証するため、IBMの研究者たちは、AU2EU(Authentication and Authorization for Entrusted Unions)と呼ばれる新しい試験運用プロジェクトにおいて、ヨーロッパとオーストラリアの産学パートナーと連携しています。2年間、860万ユーロをかけた試験運用において、科学者たちは2つの想定のもとにIdentity Mixerをテストします。ドイツでは、ドイツ赤十字(Deutsches Rotes Kreuz (DRK))と、オーストラリアでは、国立研究開発期間であるオーストラリア連邦科学産業研究機構(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation (CSIRO))と共同でテストを実施します。
ドイツ赤十字ライン-ネカール/ハイデルベルグ社団法人の地域担当責任者であるカロリン・グライナー(Caroline Greiner, the district manager of the German Red Cross for Rhein-Neckar/Heidelberg e.V.)は、つぎのように述べています。「現在のわたくしたちのゴールは、これまで150年間続けてきたように、紛争や災害の犠牲者のみならず,その他の弱者への支援を行い、日常における危機に直面した人々に家庭支援、交通・移動介助を提供します。新しいテクノロジーは、この支援、とくにわたくしたちの家庭緊急警報サービスにおいてこの支援を実現する重要な役割を担っています。例えば、高齢者が快適でなじみのある環境の家に留まることができるようにサービスを提供しています。わたくしたちがAU2EUにおいて試験している個人情報保護のテクノロジーは、このような支援において効率的かつセキュアに利用者の個人情報を高いレベルで保護することを確実にします。」
CSIROの主任研究者であるジョン・ジック(John Zic, principal research scientist, CSIRO)はつぎのように述べています。「病気発生へのスピードと迅速な対応は、人間と動物の命を助けるために絶対に不可欠です。この試験運用における先進テクノロジーを活用して、セキュリティ、プライバシー、信頼の有効性を維持しながら、対応能力を得ることを期待しています。」
AU2EUは、ヨーロッパとオーストラリアに渡る産学連携プロジェクトです。アイントホーフェン工科大学(Technische Universiteit Eindhoven)、フィリップエレクトロニクスネーデルランド有限会社(Philips Electronics Nederland B.V., Bicore Services B.V.)、NECヨーロッパリミテッド(NEC Europe LTD)、IBM基礎研究所(IBM Research)、ドイツ赤十字(Deutsches Rotes Kreuz)、 タレスコミュニケーションズアンドセキュリティ株式会社(Thales Communications & Security SAS)、オーストラリア連邦科学産業研究機構(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation)、エディスコーワン大学(Edith Cowan University)、ロイヤルメルボルン工科大学(Royal Melbourne Institute of Technology)、ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)、マッコーリー大学(Macquarie University)が参加しています。