2013年8月30日(金)~8月31日(土)の2日間、日本経済新聞社は日本取引所グループ、日本証券業協会の特別協力、QUICK、日本IR協議会、NPOエイプロシスの協力のもと、東京ビッグサイトで「日経IRフェア2013 STOCKWORLD」を開催した。
企業と個人投資家を結ぶ、投資家向け広報(IR)のためのイベントである日経IRフェア。100社を超える上場企業の展示ブースでのプレゼンテーションやミニセミナー、著名人や専門家による講演会、投資関連セミナーや会社説明会などが2日間にわたって行われた。事前登録無しで誰でも入場でき、来場者は講演会や説明会で様々な投資情報や企業情報を収集し、興味のあるブースを訪れノベルティーを受け取ったり、IR担当者と触れ合うなど、終日多くの個人投資家で賑わった。
主催者発表によれば、初日の来場者は8,690と昨年を1,000人上回り、 2日目の8,718人を加えると2日間合計では17,408人の来場者数を記録。アベノミクスによる企業業績の回復と投資環境の好転を背景に、出展社数も昨年を上回ったという。
各社の展示ブースでは自社をPRするプレゼンやミニセミナーなども多く行われ、アンケートに答えた来場者には飲食優待券やお菓子、文具など、様々なノベルティも配布された。気軽にIR担当者とコミュニケーションをとりながら企業情報を収集し投資のヒントを得られるほか、来場者の中にはブースの雰囲気から企業の活力を探ろうとする投資家もいる。オリンピック関連など、自分なりのテーマやセクターで投資対象を絞り込んでブースを回る個人投資家も多いようだ。
講演会場では2日間で全10セッションの講演が行われた。主な講師(またはモデレーター)としては、竹中 平蔵 氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)、澤上 篤人 氏(さわかみ投信 取締役会長)、藤沢 久美 氏(シンクタンク・ソフィアバンク代表)、武者 陵司 氏(武者リサーチ代表)など著名人が登壇したほか、A~Dの4つのセミナー会場では、約50に上る協力・協賛企業による会社説明会や投資セミナーを開催、多くの個人投資家が参加して投資の判断材料を収集した。
IR(インベスター・リレーションズ=投資家向け広報)は、企業の証券が公正な価値評価を受けることを目的に、企業とステークホルダーとの間に効果的な双方的コミュニケーションを実現するために行う戦略的な企業活動で、米国においてIRが本格化したのは1990年代に入ってから。日本企業のIRへの取り組みは、さらに遅れて1990年代後半から急速に活発化したという。
企業経営に占める株価(時価総額)の比重が高まっている中、企業にとって投資家が必要とする情報をすばやく的確に提供し、株主と良好な関係を作っていく取組みの重要性は高まっている。また、法定開示と違って、どういう情報を、いつどのようにディスクローズするのかは、すべて企業側の裁量に任されていることもあり、IRをうまく活用することができれば良好な企業イメージ作りに貢献する余地は大きく、実際、IR優良企業は株価も高いというケースも多く、市場に受け入れられる企業になっているという。
金融業界を見れば、金融機関は直接投資家や顧客と触れ合う機会が多い一方、取り扱う金融商品の多様化などに伴い、一般に難しい知識が必要な業界だと思われていることも多い。しかし、日本経済の復活に果たす役割と責任がますます増大している中、金融業界が果たす貢献の度合いと存在意義はいっそう高まっており、IR活動を通じた良好な企業イメージの確立と適正な株価の形成、健全な財務内容を維持していくことで、経済の血脈である金融という軸から日本経済の成長をしっかりと支え続けていく役割がこれからも期待されている。
なお、次回の日経IRフェアは2014年8月下旬~9月上旬に開催が予定されているほか、東京証券取引所も先日2013年8月27日に、2014年 2月21日(金)~22日(土)の2日間、東京国際フォーラムにおいて「東証IRフェスタ2014」を開催することを発表している。投資への興味の有無に係わらず、ぜひ気軽に足を運び出展企業と触れ合うことで、日本企業の活力と会場の熱気を感じて欲しい。
◎日経IRフェア2013の金融協賛企業(順不同)
大和証券、野村證券、フィデリティ証券、三井住友銀行、SMBC日興証券、 東海東京フィナンシャル・ホールディングス、東京金融取引所、みずほフィナンシャルグループ、三井住友信託銀行、 三菱UFJフィナンシャル・グループ 三菱東京UFJ銀行 三菱UFJ信託銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、カブドットコム証券、三菱UFJ投信、国際投信投資顧問、(日本株セミナー協賛)アバディーン投信投資顧問、インベスコ投信投資顧問、シュローダー・インベストメント・マネジメント、三菱UFJ投信。
(取材:藤野 宙志、柴田 潔 / 撮影、記事、編集・制作:柴田 潔)