野村證券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2012/2012/20120731-1.htm
1.勧告の内容
証券取引等監視委員会が野村證券株式会社(東京都中央区、代表執行役社長 永井 浩二(ながい こうじ)、資本金100億円、役職員12,997名、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資運用業、投資助言・代理業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。
2.事実関係
野村證券株式会社(以下「当社」という。)においては、以下のとおり公募増資案件に係る法人関係情報に関する管理について不公正取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていない業務運営状況及びそのような状況のなか有価証券の売買その他の取引等につき法人関係情報を顧客に提供して勧誘する行為が認められた。
(1)公募増資案件に係る法人関係情報に関する管理について不公正取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていない業務運営状況
コンプライアンス態勢に係る問題
内部管理部門の役職員が、当社における法人関係情報の管理態勢の整備・運用状況は適正であり問題は生じ得ないと過信していたことなどから、内部管理部門は下記イからエの状況につき、法人関係情報の管理・営業の実態把握・法令遵守確認等を十分に行っていなかったなど、牽制機能が十分に発揮されていない状況が認められた。
また、法令遵守態勢、法人関係情報の適正な管理態勢を構築・運用する責務を負っている役職員が、その責務に照らして求められるべき認識を持たず不十分な対応に終始したことから、本件問題点を早期に把握・分析し、金融商品取引法の趣旨・目的に照らして適切な対応を取るという金融商品取引業者及び市場のゲートキーパーとして求められる役割を果たしていなかった。
チャイニーズ・ウォールを越えた情報の伝達
機関投資家営業部署の職員が、収益第一主義の営業態勢等を同部署内に徹底したことにより、同部署内における法令遵守意識を欠落させ公募増資案件に係る法人関係情報の管理が不徹底な状況になっていた。機関投資家営業部署の職員は、「銘柄名を聞かなければ銘柄が推測できても問題ない」などの安易な考えから、恒常的に公募増資案件に係る情報を保有する他部署から、公募増資案件に係る法人関係情報又は銘柄名を推知し得る情報を積極的に取得し、営業に活用することが常態化していた。
セールス側から社内アナリストへの積極的な情報取得
機関投資家営業部署内でヘッジファンドを担当する職員は、社内アナリストが知り得る公募増資に係る情報等を聞き出そうと執拗に接触を行い、公募増資案件に係る法人関係情報の積極的な取得を行っていた。なお、一部の社内アナリストにおいては、公募増資予定銘柄に関する売買管理部のチェック状況を安易に回答していた。
機関投資家営業部署内での情報共有
機関投資家営業部署内においては、職員が取得した公募増資案件に係る法人関係情報について、銘柄名を言う場合には、「噂だが」などの付言をすれば問題ないとして、部内で公募増資案件に係る法人関係情報の共有が行われた。
(2)有価証券の売買その他の取引等につき法人関係情報を顧客に提供して勧誘する行為及びその他不適切な業務運営状況
有価証券の売買その他の取引等につき法人関係情報を顧客に提供して勧誘する行為
(ア)法人関係情報を保有する部署から恒常的に法人関係情報を入手していたA部長は、甲社株式の公募増資案件に係る法人関係情報(以下「甲社情報」という。)を入手し、部下のB課長とともに、顧客に対し、甲社情報が公表される以前に、甲社情報を提供して甲社株式の売買及び公募新株式の取得申込みの勧誘を行ったと認められる。
また、A部長は、他の顧客に対し、甲社情報が公表される以前に、甲社情報を提供して甲社株式の公募新株式の取得申込みの勧誘を行ったと認められる。
(イ)乙社株式の公募増資案件に係る法人関係情報(以下「乙社情報という。」)を入手したC部員は、顧客に対し、乙社情報が公表される以前に、乙社情報を提供して乙社株式の公募新株式の取得申込みの勧誘を行ったと認められる。
(ウ)社内アナリスト等から情報収集を行い、丙社株式の公募増資案件に係る法人関係情報(以下「丙社情報」という。)を入手したD部員は、顧客に対し、丙社情報が公表される以前に、丙社情報を提供して丙社株式の売買の勧誘を行ったと認められる。
イその他不適切な業務運営状況
(ア)公募増資案件に係る法人関係情報を顧客に提供して勧誘した可能性が高い複数の事例が認められた。
(イ)公募増資案件に係る法人関係情報を顧客に提供した可能性のある複数の事例が認められた。
上記(1)及び(2)の実態を把握していなかったという点で、当社経営陣の法人関係情報の管理態勢に関する実効的な管理・監督が十分行われておらず、経営管理態勢は十分なものではなかったと認められる。
また、当社における上記(1)及び(2)イのような、公募増資案件に係る法人関係情報の管理態勢は、不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていない業務の運営状況にあるものと認められ、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められる。
さらに、上記(2)アのような、有価証券の売買その他の取引等につき法人関係情報を顧客に提供して勧誘する行為は、当社における法人関係情報の管理態勢に不備が認められる状況の下で発生、看過されているものであり、会社行為と認められ、金融商品取引法第38条第7号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第14号に該当するものと認められる。