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2017/04/04

【大和総研】地方銀行におけるFinTech の存在~地方銀行が抱える問題とは? 第9回~

| by:ウェブ管理者
FinTechは今後の金融ビジネスにどのような影響を及ぼすのか

■はじめに
近年、FinTech(フィンテック:金融と IT の融合)と呼ばれる分野への関心が急速に高まっています。FinTech は、米欧をはじめ、国際的に急速に広まっており、今後の高い成長が期待されています。今回は、FinTech の動向が今後の金融ビジネスにどのような影響を及ぼすのかという観点から、地方銀行における FinTech の存在について考察します。

■FinTech とは何か
まず、FinTech とは何でしょうか。馴染みのない用語かもしれませんが、たとえば、仮想通貨のビットコイン(Bitcoin)、決済・送金サービスのアップルペイ(Apple Pay)やラインペイ(LinePay)、家計簿アプリのマネーフォワード(Money Forward)などが FinTech の実現例として取り上げられます。これらは一例であり、ビジネスとしての FinTech が参入する分野は、決済・送金、融資、投資仲介、資産運用、資産管理等と多岐にわたります(図表 1 参照)。
FinTech の台頭は、モバイル(スマートフォンやタブレット)端末の普及、インターネット通信の高速化・大容量化、ビッグデータの活用、人工知能(AI)の発達等、情報・システム分野における目覚ましい技術発展の波が金融分野にも及んできていることの表れと言えます。こうした動きは、金融業界のみならず、たとえば産業界では IoT(Internet of Things)や車の自動運転技術などに見られるように、それまでの伝統的なサービス・商品にイノベーションをもたらしつつあります。

FinTech は、既存の金融ビジネスを補助・強化するものから代替・変革するものまで、また、既に普及しているものから試行段階にあるものまで、多様な広がりや可能性を見せています。
たとえば、ブロックチェーンと呼ばれる技術は、ビットコインに代表されるように、既に仮想通貨や送金・決済の分野で利用されています。さらに、同技術は、将来的には決済インフラを抜本的に変える可能性を秘めているとされるなど、活用に向けた研究・開発が国内外で進められています。

FinTech を巡る動きは、今後もさらに活発化すると思われます。これまでは、IT 企業等の異業種・新興勢力が FinTech を牽引してきましたが、既に米欧金融機関を中心に金融業界がキャッチアップをしている状況にあると言え、今後も競争や提携の動きがさらに強まっていくと思われます。FinTech の分野では、全体的に米欧が先行していますが、国内でも大手行をはじめFinTech への対応や取り込みを積極化する動きが強まっています。

こうした国内外の動きに合わせて、国レベルにおいても、今後の FinTech の普及を見据えた制度面の整備やあり方を巡る議論が行われています。2016 年 5 月には、銀行法等の改正が行われ、銀行による FinTech 関連企業への出資の容易化や、仮想通貨の交換業者(取引所)の登録制の導入などが実施されました。また、FinTech や関係業界の今後のあり方などについて、金融庁(金融審議会、ワーキンググループ)、経済産業省(「産業・金融・IT 融合に関する研究会」)、日本銀行(FinTech センター、FinTech フォーラム)等で議論が行われています。

■FinTech は地方銀行にどのような影響を及ぼすのか
上述のように、FinTech を巡る動きは勢いを増しており、今後の成長性や応用可能性に対する期待も高まっています。では、FinTech の台頭は、地方銀行を含む既存の金融機関において、何を意味するのでしょうか。
総論としては、FinTech は金融機関にとって脅威とも好機ともなりうるということが言えます。

これは、金融機関が FinTech によって創出される新たな付加価値や利便性を取り込むことができれば、自らの競争力を高める可能性がある反面、これまで担ってきた役割や機能が代替されたり競合に陥ったりすれば、経営上の逆風になると考えられるからです。

現在のところ、特に国内においては、FinTech の参入による金融機関の業績面への影響自体は限定的とみられます。また、FinTech はまだ発展途上のものが多く、現時点では具体的な将来像は見通しにくいと言えます。ただし、将来的に FinTech が興隆していけば、金融ビジネスのあり方や金融システムそのものが大きく変わっていく可能性も考えられます。
既存の金融機関においては、経営戦略上、FinTech をどのように位置付け、自らの競争力強化に活用していくかが問われることになるでしょう。当面の間は、顧客利便性の向上や業務の効率化(経費の削減)を目的に活用が模索されるものと思われます。今後、FinTech の動向をフォローしつつ、機動的な対応が可能となるような態勢整備がまずは必要であると言えます。また、単独で行う方法のみならず、外部機関(IT 企業・ベンダーや学術機関等)との連携・協業を通じたオープンイノベーションがより活発化していくとみられています。

地方銀行においても、同様の取組みが想定されますが、地域密着型金融や地方創生への取組みに FinTech をどう取り入れるかという視点も重要になるかもしれません。
地域特有の課題やニーズに応じた金融サービス・経営支援の提供こそ地方銀行の大きな役割と考えたとき、その機能強化の一つとして FinTech の活用が検討されるとも考えられるでしょう。地域視点を持つことで大手の金融機関や IT 企業等との差別化につながるとも期待されます。


原文はこちら
http://www.dir.co.jp/research/report/finance/regionalbank/20170403_011880.pdf

18:09 | 金融:銀行
 

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