2013年11月11日(月)~12日(火)、英国・ロンドン中心部に位置するホテル(Grange St. Paul's Hotel)において、「フォレックス・マグネイト ロンドンサミット2013」が開催を迎えた。今回のロンドンサミットは開催期間を拡大し、これまでのサミット開催前夜の早めの参加登録の受付を兼ねたウェルカムパーティーを午前中の受付とウェルカムブランチに繰上げ、午後はパネルディスカッション(Technological Trends in FX)やプレゼンテーション(Leverate: Forecasting 2014 FX Tech Trends)が行われた。二日目は、基調講演(The Bank of England)や3つのパネルディスカッション(The HFT Challenge / Buy & Sell: Two Sides of The Coin in FX / Efficiently Execute FX)のほか、フォレックスマグネイトアワードの授賞式が行われるなど、ほぼ丸2日間にわたり世界各国からFX業界の関連企業(ブローカー、リクイディティプロバイダー、システム開発・情報やツール等サービス提供企業など)の経営者、幹部が750人集結する見通しだ。
ロンドンサミット2013に先立ち、2013年7月17日(水)にマンダリン オリエンタル ホテル 東京で開催された「フォレックス・マグネイト 東京サミット2013」のパネルディスカッションの一つ、FXの海外展開に取組む企業を代表する4社のキーマンが登壇し、海外展開の現状と今後の取組みについてそれぞれの見解と方向性を示した「日本のブローカー海外拡張 前進のための慎重なステップ」を振り返ってみたい。なお、パネリストは、マネックスグループ 松本 大 氏(Chairman and CEO)、GMOクリック証券 高島 秀行 氏(CEO)、ヒロセ通商 石原 愛 氏(取締役)、OANDA Japan Eric Hayes 氏(Head of Compliance)、モデレーターは、グッドウェイ 藤野 宙志(Founder and CEO)が務めた。
(藤野)
世界的に拡大が続くFX、今後のグローバル展開の展望とM&Aの決断時の重要なファクターは何でしょうか?
(松本 氏)
グローバルビジョンを掲げ、世界中の投資家とマーケットを対象に、日本ではFXだけでなく株や先物オプションのほか債券など全般を取扱い、世界では6か国・12拠点の事務所と150カ国に上る投資家に向けて、サービス展開に必要なプラットフォームの内製化を進めています。その中でも、レギュレーションのみならず各国の取引所に接続する株式など他の金融商品に比べて比較的簡単なFXについては、B2B2C、現地企業とのパートナーシップやホワイトラベルの展開を通じて先行して推進し、その後に他の商品も順次グローバル展開していくことを考えています。
トレードステーションのM&Aについては多額を投じましたが、彼らが持つ技術力に注目しました。投資家であるクライアントを手に入れるというよりは、今後のグローバル展開に活かせる技術や強みを持っているかどうかが重要なファクターだ考えています。
(藤野)
海外のFXブローカーの視点から、実際に日本市場に参入してみて、どのような感触をお持ちでしょうか?
(エリック 氏)
世界的に見ても取引量の上位を占めている日本のブローカーは、日本国内市場の中で高度に発展していると思います。もちろん、競争は厳しく、スプレッドもタイト、取引システムのプラットフォームのレベルも高く、デジタルマーケティングも発達しています。これらは、あくまでも競争原理による結果だと思いますので、タイトなスプレッドにより取引量が増える、コスト削減努力により競争力を高めるという点において、国内外で違いがあるというものではありません。
(藤野)
日本のFXブローカーとして業界で先駆けて海外のUK(英国)市場に進出を果たしている中、今後の更なる展開(時間軸、ライセンス、エリア)について教えてください。
(石原 氏)
UK(英国)には2年前に進出し営業展開を開始して1年ほど経ちました。現在は、HK(香港)でライセンスの申請を進めており、ヨーロッパとアジアの市場展開に向けて準備を進めると共に、インドネシアの現地市場調査なども行っています。海外市場で対象とする投資家は特に富裕層を狙うというようなものではなく、日本と同じく広く一般の投資家層に向けて同じ目線でサービスを提供していくというスタンスです。
(藤野)
同じく、日本のFXブローカーとして業界で先駆けて海外のHK(香港)市場に進出を果たしている中、今後の更なる展開(時間軸、ライセンス、エリア)について教えてください。
(高島 氏)
HK(香港)市場で海外展開をしてみて感じたことは、世界への第一歩はUK(英国)市場から展開するというのが正しかったということです。当社は自分達でシステム開発を行っていることもあり、当初は時差が少なく距離も近いシンガポールやアジアから始めました。しかし、実際にHK(香港)市場で進めてみると、規制も厳しく日本よりも自由度が少ないことが分かりました。また、HK(香港)には、数多くの企業が進出していますが、実際に中国本土の投資家はHK(香港)のブローカーではなく、UK(英国)のブローカーに口座を開設する傾向があり、口座開設者のおよそ4割が中国本土の投資家という話もあるようです。そのため、現在は、UK(英国)でライセンスの申請を進めています。
(藤野)
グローバルなM&Aを通じた取組みの中で経験したオペレーションの難しさや困難を乗り越えるために工夫したことがあれば教えてください。
(松本 氏)
会社には個性があり、人がやっているものなので、国の文化という違い以上に人の違いがとても大きいため、M&Aした企業の経営者によってオペレーショナルな管理手法やコンプライアンスに関する考え方も異なるので、最後は一つ一つ見ていくしかないと思います。大事なことは、M&A企業の経営者との信頼関係です。外部から圧力で変えようとしてもなかなか難しい、内部について詳しく知っている経営者との信頼関係を通じて目的に向けて取組んでいくしかない。そのため、M&Aに先立ちデータやポートフォリオといった材料だけで判断するのではなく、人間的な相性を見極めることが何よりも大事だと、これまでの経験から強く思っています。なお、FXのグローバル展開としては、既にあるアメリカ、オーストラリア、日本、香港に加え、今度はUK(英国)においてもオペレーショナルな体制を整えていきたいと思います。
(藤野)
海外でも日本並みのタイトなスプレッドで展開していくのでしょうか?その場合、世界のFX市場にどのような影響を与えると思いますか?
(高島 氏)
当社は、これまで日本市場において、後から参入してどこよりも安くサービスを提供することで圧倒的なシェアを獲得するという戦略で取組んできました。当初、HK(香港)でも日本と同じことを考えていましたが、実際にやってみると、香港でのマーケティング、これがなかなか難しい。実際にオフィスに訪れたり、電話で長く話をする投資家も多く、スプレッドの安さということの前に、いかにして香港の居住者に存在を知ってもらうかという点で、日本のインターネット広告とは異なるアプローチが必要ということが分かりました。そのため、今は香港の伝統的な手法でもあるバスや看板といった広告を活用し、セミナーの開催や紹介者を通じて口座を集めるという取組みを行っています。また、規制の厳しいHK(香港)では口座開設にかかる手続き関連書類が多いこともあり、狭い土地柄でもあることから、投資家の方にはオフィスに来てもらった方が、お互い開設のプロセスを簡単に行えるというもあり、投資家にとっても都合が良いこともあります。一方、UK(英国)では郵送などでの開設手続きができるので、海外展開においては、”どうやって宣伝するか?”というプロモーションの手法は進出する国毎に合わせていくしかなく、日本の手法はそのままでは通用しないということが実際にやってみて分かりました。
(藤野)
海外市場における口座開設までのマーケティングに加え、口座開設後のカスタマーサポートについては如何でしょうか?
(石原 氏)
当社では、日本、香港、上海、UK(英国)などの各拠点を通じて英語によるサポートを24時間対応しています。中国語でのサポートは時間が限られていますが、これまでの問合せ内容を見ると、その多くは日本で受ける内容と通じるものがありますので基本的には問題なく対応することができています。一点、大きな違いとしては、企業としての信頼性に関する視線が厳しいかなと思います。実際に会社に訪れたり信頼性の根拠についての問い合わせなどが比較的多くありますが、最初の入り口を理解すればその後はむしろ安心して取引をされるようです。今後は展開先に合わせて、英語、中国語たけでなく、例えばインドネシア語など言語の対応は広げていく必要があると考えています。
(藤野)
昨年の「フォレックス・マグネイト ロンドンサミット2012」で最も革新的なサービスとして評価され受賞したtradableとの提携による日本でのサービス展開について教えてください。
(松本 氏)
tradableは、”fun to trade”、”easy to trade”、ビジュアルなトレード環境をもたらす新しいサービスです。サービスを支えるデベロッパーのコミュニティーを通じて、投資家の皆さまに次々常に進化するサービスを提供し、より楽しく便利な取引環境を享受できるようにしていきたいと思います。
(藤野)
貴重なお話の数々、ありがとうございました。国内外のブローカーやベンダー、サービスプロバイダーが一堂に会する「フォレックス・マグネイト 東京サミット2013」に来場した皆さまの、今後の事業展開に向けた参考になれば幸いです。
(記事・編集・制作: グッドウェイメディアプロモーション事業部)