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2024/11/18

【FinGATE(平和不動産)】FinGATE Campus 第13回「医・食・農のウェルビーイング」を開催!

| by:サイト管理者

  2024年9月25日(水)、平和不動産は、東京の金融街「日本橋兜町・茅場町」に位置する金融インキュベーション施設「FinGATE CLUB」(FinGATE KAYABA 3F)にて、「FinGATE Campus 第13回 医・食・農のウェルビーイング」を開催した。

  FinGATE Campusは、2022年10月に平和不動産がコミュニティとして立ち上げて以来、起業家や金融スタートアップ等を対象に定期的にセミナーや交流会を開催している。今回は「医・食・農」の各分野がどのようにウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に充実した状態)に貢献しているのかを探り、さらにスタートアップ企業の取り組みなどを交えながら議論を深める機会となった。



  イベント冒頭では、総合司会を務める松元 絢氏(マインドフルネストレーナー / Mindful.jp 編集長)が開会の挨拶を行い、企業研修などでマインドフルネスを活用し心身を整える実践を広める立場から、「ウェルビーイング」というテーマに深く共感していると述べた。

  続いて、本イベントを主催する平和不動産の中島 優人氏が登壇し、FinGATE(フィンゲート)の理念や兜町・茅場町という日本の金融街で展開しているコミュニティの意義を改めて説明。「FinGATE Campusを通じて、新たな出会いや学びの場を創出し、この街から投資と成長のエコシステムを生み出したい」と抱負を語った。

  その後、松元氏がウェルビーイングの成り立ちを簡単に解説。ウェルビーイングは、1946年にWHOが示した「身体的・精神的・社会的に良好な状態」という定義を起源とし、企業のCSR重視やデジタル化の加速に伴って、職業的健康や生きがいなどの領域にも概念が広がっていると紹介した。そして、テクノロジーとの組み合わせによって単なる心身の健康だけではなく、豊かな生き方を追求するうえでも重要性を増していると強調した。



  本編はまず、川口 伸明氏(アスタミューゼ イノベーション創出事業本部 データ・アルゴリズム開発本部 エグゼクティブ・チーフ・サイエンティスト)による講演「2080年への未来地図:健康長寿はどこまで延伸できるのか?」が行われた。

  川口氏の講演では、世界193か国・7億件を超えるイノベーションデータの解析から浮かび上がる医療・ヘルスケアの未来像が、余すところなく語られた。腸内細菌叢(マイクロバイオーム)やミトコンドリアの機能を深く研究することにより、老化や生活習慣病の進行を抑えたり、あるいは大幅に改善したりできる可能性があることを示唆し、今後の研究や実装への期待が一層高まっていると指摘する。その一方で、そうした先端技術が活用される現場には、社会的・倫理的な課題が山積している点にもしっかり触れ、未来が単なるバラ色ではなく、多面的に検討しなくてはならない領域だという見方を示した。

  講演の中盤では、DNAのメチル化状態を指標にした「エピジェネティック時計」の概念が紹介され、従来のカレンダー年齢だけでは捉えきれない「体の実年齢」を正確に把握する技術がいかに医療や健康管理を変えうるかが解説された。本人の遺伝的要因と生活習慣、さらに腸内細菌や食事の組み合わせを総合的に評価することで、将来的には老化速度を制御したり、疾病リスクを早期に察知できたりするかもしれないというわくわくする見通しが語られた。また、AIによる創薬や疾患予測の加速が起こることで、「人生100年時代」をはるかに超えて健康寿命が伸びるシナリオは、決してSF的な夢物語ではなくなる可能性があるとも言及している。

  さらに講演後半では、新技術の実装が個人の生き方・働き方だけでなく、社会制度やコミュニティ形成にも影響を及ぼす点が強調された。たとえば、健康長寿を享受する層と、それを享受できない層との間に格差が生じるかもしれないリスクや、個人のライフプランや社会保障の仕組み自体が抜本的に変わる必要があるのではないかといった問題提起がなされた。そうした複合的な視点によって、ウェルビーイングは単に身体や精神の健康だけを意味するのではなく、社会全体のルール作りや人々の幸福観に深く結びついた広範囲な概念であることが示され、参加者からは驚きと納得が混じった反応が見受けられた。



  後半の「医・食・農のウェルビーイング」を題したパネルディスカッションでは、川口氏(アスタミューゼ)をはじめ、培養肉技術を手がけるスタートアップの川島 一公氏(インテグリカルチャー 取締役CTO・COO)、アレルギー対応プラットフォームを運営する起業家の田ヶ原 絵里氏(CAN EAT 代表取締役CEO)、人工衛星データで農業支援を行うスタートアップの掛 泰輔氏(サグリ)が一堂に会し、みずほフィナンシャルグループの藤井 達人氏(みずほフィナンシャルグループ デジタル企画部 執行役員)がモデレーターを務めた。まずは各登壇者が事業紹介とともに、「なぜ医・食・農がウェルビーイングに直結するのか」という大枠を提示し、そこから多方面に話が広がった。

  川島氏は細胞培養による肉の生産がもたらす未来の食の姿について語り、従来の畜産方式とは異なるサステナブルかつ多様な食卓の可能性を示した。それは単に「おいしい代替肉を作る」というだけでなく、医療面での臓器培養や機能性食品の開発にも波及しうる、といったより広範な応用を含んでいるという。同時に、細胞培養という言葉の響きから来る「未知への不安」を払拭するための啓蒙活動や、価格・規制といった現実的な課題も明らかにされた。

  一方、田ヶ原氏はアレルギーをもつ人々が安心して外食できる環境づくりが重要だと強調。単に「アレルゲン不使用メニュー」を設けるだけでなく、店舗スタッフへの情報共有やデータ管理の仕組みづくりを整備していく必要性を訴えた。そこには農業側との連携によって、原材料レベルでアレルゲンを可視化する視点も求められるという。また、掛氏は衛星データ解析を通じて農地の状況を把握し、持続可能な農業を実現する取り組みを紹介した。作物の生育状況や土壌の特性を正確に把握することで、化学肥料や農薬を最適化し、環境負荷を減らすだけでなく生産者の利益にもつながるという。

  そうした事業領域の異なるプレーヤーの発想が交わることで、ウェルビーイングに関する議論は「食事や栄養だけ」では終わらず、食材の生産体制や流通、飲食店や医療機関との協働などへと拡張された。とりわけ、腸内細菌や生活習慣病の予防という医療的観点と、サステナブルな食材づくりや流通の高度化という農業・食の観点が密接に結びつくことで、人々の健康寿命を延ばすだけでなく、社会全体の負荷を軽減する総合的なシステムが見えてくると語った。

  ディスカッションの終盤では、参加者からの質疑応答も活況を呈し、医・食・農の連携を支えるために必要なデータ基盤や投資・知財戦略、行政との協力枠組みなどが話題に上った。多くの登壇者が「まだ未熟な分野だからこそ、柔軟な実証と連携ができる」という認識を共有し、今後ますますの発展が見込まれる分野であることを強調。こうして「医・食・農」を軸にしたウェルビーイングの探求は、来場者にとっても具体的なコラボレーションの可能性を見出す意義深い場となった。



  クロージングでは、松元氏が再登壇し、ウェルビーイングの概念が身体的・精神的・社会的のみならず、職業的健康や生きがいなど多角的に広がっていることを改めて強調。今回のイベントを通じて、参加者同士の新たなつながりや学びが生まれたことに対する感謝の言葉を述べた。

  また、イベント中には抽選で川口氏の著書『2080年への未来地図』がプレゼントされる企画も行われ、会場・オンライン問わず多くの応募が集まった。抽選結果はクロージングで阿部 一也氏(フィンテック養成コミュニティ 共同創設者)より発表され、当選者には川口氏によるサイン入り書籍が贈呈された。

  プログラム終了後は、会場後方でネットワーキングが行われ、温水 淳一氏(GuardTech検討コミュニティ 代表)による乾杯の音頭でスタートし、軽食やアルコールを楽しみながら互いに意見交換や名刺交換が活発に行われた。複数の来場者からは「異業種のスタートアップ同士でコラボのアイデアが浮かんだ」「研究者と直接話す機会が得られた」といった声が上がり、盛会のうちに幕を閉じた。



  今後もFinGATE Campusでは、多彩なテーマでイベントを開催予定とのことである。引き続き、兜町発の金融コミュニティによる新たな学びと出会いに期待が高まる。



22:34 | 写真:金融・IT業界向け




 

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