(2012/05/16)
髙木証券株式会社(本店:大阪府)に対する行政処分について
http://kinki.mof.go.jp/file/rizai/takagi240516.pdf
1. 髙木証券株式会社(以下「当社」といいます。)元顧問によるインサイダー取引事案について、金融商品取引法第56 条の2第1項に基づく報告を求め検証した結果、以下の状況が認められました。
○ 法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められる状況
⑴ 事実関係
当社元顧問は、平成22年10月26日に公表された当社の訴訟損失引当金の計上、平成23年3月期中間配当を無配とすることについての決定、及び同期の期末配当予想値に差異が生じた旨の各重要事実に関して、その公表前に職務として公表内容の事前検証に当たったことから、これらの事実を知り、インサイダー取引を行った。
⑵ 本件に関して、当社には以下の問題が認められる。
① 法人関係情報のうち、当社に関する情報の管理については、具体的な管理方法を明文化していないなど規程整備が不十分であったこと等から、いつ、どのような情報が社内で発生し、誰が、どのように情報を受領したかといった事実が確認できるような管理実態がなかった。
② 顧問の立場にある者に対する各種社内ルールの適用が明確ではなかったことに加え、行為者が直前まで役員であったことから、安易に当社に関する法人関係情報が伝達されていた。
⑶ また、本件の背景として、当社の経営管理態勢・内部管理態勢に関して、以下のような点が認められる。
① 当社では、電子データによる情報セキュリティ管理が不十分であったことに加え、本件発生まで公表前の当社に関する法人関係情報が実質的に管理されておらず、また、公表内容の事前検証部署も定められていないなど、法人関係情報に関する経営陣の責任を持った管理意識が希薄であり、適切に管理し得る態勢が確立されていなかった。また、内部監査部門も十分に機能していなかった。
② 行為者が元役員であったことから、公表内容の事前検証の依頼に当たり、周囲から牽制が働かなかったこともインサイダー取引の一因となっており、経営管理上の問題点が認められるほか、役員等の上位者を含む各種ルールの理解向上や職業倫理の強化等、法令等遵守(コンプライアンス)のために必要な研修等も実効性に欠けていた。
証券会社は、市場仲介者としての公共的な役割を担うものであり、他の市場参加者以上に、適切な経営管理の下で十分な内部管理態勢を整備し、適切な業務運営を確保する必要がある。市場の透明性・公正性に対する信頼を向上する観点からも、法人関係情報を含む情報セキュリティ管理の徹底や、役職員による不正行為の防止に向けた職業倫理の強化等に取り組むことが求められる。しかしながら、上記のとおり、当社の経営管理態勢・内部管理態勢には不十分な点が認められ、そのため、行為者によるインサイダー取引事案を生じさせたことは、金融商品取引法第40 条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123 条第1項第5号に規定する「その取り扱う法人関係情報に関する管理(中略)について法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められる状況」に該当するものと認められる。
2. 以上のことから、本日、髙木証券株式会社に対し、金融商品取引法第51 条の規定に基づき、以下の行政処分を行いました。
○ 業務改善命令
⑴ 情報セキュリティ管理をはじめとする内部管理態勢の状況を検証し、必要な整備を行うとともに、その実効性確保のために必要な措置を講じること。
⑵ 役職員の職業倫理及び情報セキュリティ管理に対する意識の向上等を図る観点から教育・研修のあり方を見直し、経営陣が率先して適切に実施すること。
⑶ 適切な業務運営を確保する観点から、内部管理部門及び内部監査部門の体制を整備し、その十全な機能発揮の確保に取り組むこと。
⑷ 責任の所在の明確化を図るとともに、経営管理態勢の強化を図ること。
⑸ 上記⑴から⑷について、その対応・実施状況を平成24 年6 月15 日(金)までに書面により報告すること。