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2018/01/31

【日本銀行】【挨拶】岩田副総裁「最近の金融経済情勢と金融政策運営」(大分)

| by:ウェブ管理者
1.はじめに
日本銀行の岩田でございます。本日は、大分県の行政および金融・経済界を代表する皆様との懇談の機会を賜りまして、誠にありがとうございます。また、皆様には、日頃より、私どもの大分支店の様々な業務運営にご協力頂いております。この場をお借りして、改めて厚くお礼申し上げます。

日本銀行は、先週開催された政策委員会・金融政策決定会合において、2019年度までの経済・物価見通しを「展望レポート」として取り纏め、公表いたしました。本日は、その内容をご紹介しながら、わが国の経済・物価情勢と金融政策運営に関する考え方についてお話しします。

2.日本経済の現状と先行き
最初に、経済情勢についてお話しします。わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大しています。7~9月期の実質GDP成長率は年率で+2.5%と、7四半期連続のプラス成長となりました(図表1)。また、景気改善の裾野は幅広い経済主体に拡がっており、昨年12月に公表した短観の業況判断DIをみると、大企業や製造業だけでなく、中小企業や非製造業でもプラスの判断が続いています。地域別にみても、日本銀行が先日公表した「地域経済報告」、いわゆる「さくらレポート」では、この九州地区を含め、全国9つの全ての地区で、「緩やかな回復、ないし拡大」という明るい景気判断が並びました。以下では、こうしたわが国の経済の現状と、今後の見通しについて、やや詳しくお話しします。

海外経済
最初に、海外経済の動向について触れておきたいと思います。振り返りますと、海外経済は、2008年のリーマン・ショック以降、抑制された状態が続いていました。しかしながら、2016年後半頃から、先進国の景気回復の好影響が新興国に波及し始め、最近では、先進国と新興国の経済が互いにシンクロして成長する、「同時成長」(synchronous growth)ともいうべき姿が実現しています。こうした中、世界的な在庫調整の一巡や設備投資の増加から、製造業の生産・貿易活動が活発化しており、世界の貿易量は、昨年、6年ぶりに世界経済の成長率を上回る高い伸びを回復しました。先行きについても、世界経済は、当面、しっかりとした成長を続けると考えられます。IMFが1月に公表した2018年、2019年の世界経済の成長率見通しは、いずれも+3.9%と、1990年以降の長期的な平均を超える、高めの伸びが見込まれています(図表2)。

わが国経済の現状
こうした海外経済の成長にも後押しされて、冒頭申し上げたように、わが国の経済は緩やかに拡大しています。企業部門をみると、輸出は、資本財や情報関連を中心に高い伸びを示しています。特に最近は、中国やNIEs・ASEAN向けが急増しており、昨年11月、わが国の実質輸出は、グローバル金融危機前の水準を超えて、過去最高を更新しました。生産も、内外需要の増加を背景に増加基調にあります。こうしたもとで、企業の売上高経常利益率は既往ピーク圏で推移しているほか、12月短観では、全産業・全規模ベースの業況判断DIが6期連続で改善し、1991年以来、26年ぶりとなる良好な水準となっています。企業収益や業況感が改善するなか、設備投資は、幅広い業種において増加傾向を続けています(図表3)。中でも、飲食や小売、建設といった非製造業における省力化・合理化投資の増加が顕著です(図表4)。インターネットによる予約処理やセルフレジの導入は、全国どこでも、もはや珍しくありません。こうした投資を促す直接の要因は深刻化する人手不足ですが、近年の技術革新により、ロボットやAIなどの新技術が実際のビジネスに活用できるようになったことの影響も大きいと思います。例えば、最近では、介護施設での力仕事にロボットを活用したり、配送業務にドローンを利用したりするなど、最新技術を活用したアイディアが次々と生まれてきています。金融機関の緩和的な貸出スタンスも、こうした前向きの企業活動をしっかりとサポートしています。

次に、家計部門をみますと、今申し上げたように、景気拡大のもとで、労働需給は着実な引き締まりを続けています(図表5)。昨年12月の有効求人倍率は1.59倍と、1974年以来、約44年ぶりの水準まで改善し、失業率も約24年ぶりの水準まで低下しています。こうしたもとで、賃金は緩やかに上昇しています。特に、景気動向に感応的なパート労働者の時給は、足もと2%程度の高めの伸びとなっています。正規雇用者の賃金上昇ペースは、パートに比べて鈍い状況が続いていますが、それでも、状況は少しずつ変化してきています。2014年にはベースアップが復活しましたし、最近では、必要な人材を確保するために、多くの企業で正社員の初任給を引き上げる動きもみられています。こうした雇用・所得環境の改善を背景に、個人消費は、振れを伴いながらも、緩やかに増加しています(図表6)。内訳をみると、自動車や家電などの耐久財は、買い替え需要を主因に緩やかな増加傾向にあるほか、衣服や食料品などの非耐久財は、このところ持ち直しています。良好な雇用環境は、株価の上昇などとともに、消費者マインドの改善につながっており、これも消費活動を下支えしています。


原文はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180131a.htm

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