2015年09月28日(月)、Orb(旧:コインパス)は、ブロックチェーンを利用した独自の認証技術を元にした非中央集権型クラウドコンピューティングシステム「Orb (version1)」を発表するリリースイベントを、東京都渋谷区にあるイベント&コミュニティスペース dots.で開催した。当日は、その第一弾として、同技術に基づく「SmartCoin」ソリューションを同年9月28日より提供開始したとして、その概要が発表された。
いうまでもなく、ブロックチェーンは、パーソナルコンピュータ、インターネットに続く、「第3のIT革命」になると言われている革新的な技術で、利用者同士で監視しあう分散型(非中央集権型)システムにより、全ての産業における第三者機関(仲介役)を省くことが可能になるなど、無限大の可能性を秘めたテクノロジーであることから、日本国内でもにわかに注目を浴び始めている。仮想通貨「ビットコイン」もこの技術を基盤としたもので、今や世界中でブロックチェーンを応用した技術とプロダクトが開発されており、ほぼ全ての産業において、テクノロジーの影響を受けることは避けられないといわれている。
当日の会場は東京・渋谷駅最寄りのエンジニアのためのイベント&コミュニティスペース dots.。イベント開催時以外は作業スペースとして個人ワーク・打合せに利用できる、同年8月にオープンしたばかりの新しい施設だ。
◎Orbはブロックチェーン技術を使った革新的なプロダクト。決済認証、契約認証など幅広い用途に応用が可能
冒頭の挨拶に立ったOrb 代表取締役 仲津 正朗氏は、来場の御礼の後、「近年、ブロックチェーンが出てきて色々と話題になっていますが、まだ世の中にこの技術を使った革新的なプロダクトが出ていない中で、その一つになる可能性のある我々自身のプロダクトの紹介、およびその技術を使ったビジネスオポチュニティについて議論を深めていくパネルディスカッションを通じて、ブロックチェーン技術が新しい産業を興していくとの認識を深めていただければ。」と語った。
挨拶の後は再び同氏が、Orbおよびその技術を利用した「SmartCoin」のプロダクトデモンストレーションを行った。ブロックチェーンは高度な認証を必要とされるサービスに利用され始めているが、Orbでは、経済圏ごとにブロックチェーンを分ける「マルチブロックチェーン方式」を採用することで、ビットコインでは10分程度かかる認証に、Orbでは同じ認証を5秒で実現させるという世界最速を誇る革新的な認証方法を開発、利用者がストレスなく利用できる環境を提供するという。また、データマイニング(大量のデータを分析し、有益な情報を導き出すこと)のためにデータセンターのサーバ等を利用せず、スマートフォンのアプリのレベルでブロックチェーン認証が可能となるため、今後は決済認証のみならず、契約認証など幅広い用途に応用が可能だという。
そして、Orbをベースにして開発された仮想通貨発行・運用プラットフォーム「SmartCoin」は、オンラインビジネスの事業者等が、時間とコストがかかる自社開発に頼らず、同社API、SDKを使って、簡単にオリジナルの仮想通貨を発行・運用でき、さらに、チャージボーナスによる仮想通貨自体への利用意欲の向上、また自然減価による、店舗過多となりつつあるオンラインショッピングにおける取扱商品以外での購入体験の差別化を図ることができるプロダクトだという。
また同社は、SBIインベストメントの運営するファンド、セレス、ユナイテッド、アドウェイズ、マネックスベンチャーズを引受人とする、合計2億7,400万円の第三者割当増資を同年10月6日までに実施予定であることも紹介された。
続いて、同社チーフサイエンティスト 斉藤 賢爾氏がOrbのテクノロジーについて説明。Orbの特徴などについて、技術者の観点からテクノロジーについて詳しい解説を行った。
パネルディスカッションでは、冒頭の挨拶に立った同社 仲津氏がモデレーターを務め、「Orbプラットフォームを活用したビジネスの可能性」について、議論が交わされた。
◎パネリスト(写真左から)
Orb チーフサイエンティスト 斉藤 賢爾氏
Fab Cafe共同創業者、MIT Media Lab Japan Liaison 林 千晶氏
凸版印刷 情報セキュリティ商品開発部アシスタントマネージャー 増永 優作氏
マネックスベンチャーズ 取締役 高岡 美緒氏
リアクティブ 取締役・最高執行責任者 飯沼 純氏
パネルでは、「地域通貨」、「デジタルコンテンツのC2C取引」、「証券・債券のC2C取引」等へのOrbの応用について議論が交わされた。仲津氏によれば、特に「証券・債券のC2C取引」については、株式市場の内、「IPO(公開)+プライマリ(PO)」や「公開+セカンダリ」また未公開株市場、および社債市場はブロックチェーンテクノロジーを応用し易い分野として、具体的に参入のロードマップが出来上がっていることを紹介した。
最後は、同社取締役 妹尾 賢俊氏がモデレーターを務め、「Orbを活用したサービスに関する法規制について」をテーマとしたパネルディスカッションが行われる。
◎パネリスト(写真左から)
森・濱田松本法律事務所 弁護士 増島 雅和氏、同 堀 天子氏
パネルでは、地域経済活性化のためのOrb金融ソリューションとして、FinTechを用いた地域創生に貢献する金融サービスの開発・提案が課題として、以下の提案例が紹介された。
1)地銀・信金・信組への提案(地域通貨・地域ポイント施策支援、およびポイント・電子マネーの流動化)
2)地場証券への提案(地域企業の株式流動化、および事業承継支援)
パネリストはこれらのサービスについて、弁護士の立場から法的な課題の有無などについて、様々な見解を述べた。
リリースイベント終了後は懇親会が開催され、参加者は軽食を摂りながら名刺交換や情報・意見交換を行った。
Citibankが独自のデジタル通貨のプラットフォームを開発し実験中、あるいはNasdaqがブロックチェーン技術を提供する企業と提携して未公開株式市場で同技術を使うと報道されるなど、既にアメリカではブロックチェーン技術応用と利用へ向けて金融大手が動き出している。日本国内でもFinTech同様に、ビットコインの技術的基盤であるブロックチェーンの注目度がにわかに高まってきていることから、新テクノロジーによって金融システムのインフラが、今後どのような革新的な進化を遂げていくのか、その過程と取組が大きな注目を浴びそうだ。
(取材、撮影、記事、編集・制作:柴田 潔 @株式会社グッドウェイ )