タイトル:【FinGATE(平和不動産)】FinGATE Campus 第10回「改正金商法のチャンスとリスク」を開催!
2024年5月29日(水)、平和不動産は東京の金融街「日本橋兜町・茅場町」にある金融インキュベーション施設「FinGATE KAYABA」にて、「FinGATE Campus#10 改正金商法のチャンスとリスク」を開催した。
FinGATEは2022年10月から平和不動産が始動したコミュニティで、起業家や金融スタートアップなどに関心のある方々を対象としたセミナーや交流会を定期的に開催している。今回のセミナーでは、金融商品取引法等の改正について解説が行われ、投資家やビジネスサイドに与えるメリットやリスクについての議論も行われた。
総合司会は水津 朱美(Fintech協会 事務局 広報・国内PR グループリーダー)が務め、オープニングでは、中島 優人(平和不動産)より、兜町近隣地域の再活性化を目指すFinGATEの事業について解説があった。
FinGATEは金融分野の起業家や企業を支援するもので、かつて渋沢栄一氏が多くの企業を創業した兜町を再び活気ある場所に変えようとしている。すでに、FinGATEには90社を超える企業が入居しており、オフィススペースの提供だけでなく、スタートアップ向けのイベントスペースや特別サービスも提供している。このFinGATE Campusセミナーはこの街で知識を共有するものであり、これ以外にもFinGATE Clubという交流を深める場まで設けられていることが説明された。
FinGATEの解説後、水津氏より本日のプログラムが基調講演とパネルディスカッションの2部構成であることが紹介された。
前半は関口 諒氏(弁護士)による基調講演が行われた。講演のタイトルは『令和6年金融商品取引法等の改正の概要~投資運用業者の参入促進・非上場有価証券の流通活性化~』で、大きく3つの項目について解説があった。
1つ目は、投資運用業者の参入促進についてである。これは、ミドルバックオフィス業務の委託業者の任意登録制度の導入や、登録要件の緩和により、投資運用業への参入ハードルを下げることを目的としている。さらに、外部委託業務の品質確保のための登録制度、任意登録を受けた業者に対する業務管理体制の整備義務、資本金要件の緩和(5,000万円から1,000万円への引き下げ)、運用権限の外部委託の許容についても解説があった。
2つ目は、非上場有価証券の流通活性化である。今回の法改正ではかなりの緩和が行われているようである。具体的には、スタートアップ企業の株式の流動性向上、非上場株式のセカンダリ取引の活性化、外国籍投資信託の国内流通のための規制緩和、非上場有価証券の仲介業者の登録要件の緩和、PTS(施設取引システム)業務の参入要件の緩和などがあり、個々について解説が行われた。
最後に、金商法や法律自体の改正には関与しないが、投資型クラウドファンディングの活性化についても言及があった。今後の政令の改正で登録要件の緩和、発行総額の上限引き上げ、投資家の年収や準資産に応じた投資上限の見直しなどが予定されていることが共有された。
後半のパネルディスカッション「改正金商法のチャンスとリスク」では、関口氏に加えて、鵜飼 剛充氏(FUNDINNO レギュレーション本部 弁護士)、髙尾 知達氏(ファンズ 代表取締役CLO、Funds Startups 取締役、Fintech協会 常務理事)が登壇し、藤井 達人氏(みずほフィナンシャルグループ デジタル企画部 執行役員 デジタル企画部 部長、日本ブロックチェーン協会 理事)がモデレーターを務めた。
まず、改正金商法のインパクトについて議論された。ここでは非上場株式の今後の改正により、株式投資型クラウドファンディングの上限が1億円から5億円に増えることが最も話題となった。また、非上場株式のPTSに関する規制の緩和が非常に大きなメリットであることが言及された。例えば、ベンチャーデッドの重要性とスモールIPO問題の解決策として、PTSにおける非上場株式が上場マーケットを前提としない新しいマーケットの創出に寄与することなどが挙げられた。
さまざまなリスクについても議論が行われた。非上場株式のセカンダリー取引の課題として、譲渡制限の解除方法や、PTSを利用する際の譲渡制限や先買権の問題が指摘された。また、非上場有価証券の情報開示として特定証券の情報開示義務にも課題があり、スタートアップが適時開示を適切に対応できるかどうかが問題視された。一方で、社会問題のリスクを軽減するためには、国や業界が情報提供を進めることが重要であることも言及した。
一転して、投資運用業のルール変更による影響についても議論が行われた。運用業の外部委託については海外からの参加が見込まれることや、運用業者の企画力が重要となり、尖った商品が増える可能性があり、一般投資家の興味を引く商品が増えると予想された。業務委託や外部委託による情報の集中が新しいビジネスを生む可能性が示唆されたが、優秀な人材や企業には限りがあるため、競争の激化が起こることも述べられた。
最後に、株式型クラウドファンディングのリスクについても議論された。倒産リスクや株式価値の棄損について、情報開示と発行者審査の強化が重要であると指摘された。今後、この改正が国策として非常に重要であることは間違いないが、リスクへの対策も不可欠である。
閉会の挨拶では、パネリストへの感謝の意が表明され、参加者に対して懇親会での質問の継続が促された。
全てのプログラムが終了し、藤井氏による乾杯が行われた。その後、登壇者と参加者はネットワーキングを通じて交流した。懇親会には、波多江 直彦氏(イークラウド 代表取締役)も駆けつけ、株式投資型クラウドファンディングなどを解説した新刊『(日本一やさしい スタートアップ投資の教科書』が2024年6月15日に発売されることを紹介し、コミュニティに贈呈した。
この交流の時間は、参加者にとって有意義な情報交換の機会であり、新たなつながりや知見を共有する場となった。
FinGATE Campusは、今後も引き続きセミナーを活発に開催する予定なので今後の活動に注目したい。
講演内容は、下記のアーカイブ動画にて視聴されたい。