2014年12月9日(火)、相互接続データセンターとグローバル コロケーションをグローバルに展開するEquinix, Inc(本社、米国カリフォルニア州、以下、エクイニクス)は、幅広い地域において資産運用や金融市場における顧客から形成されているプラットフォームである金融サービスエコシステム上に、BME、FXCM、 SmartTrade Technologies、 Triana そして Chi-X など、複数アセットクラスを手掛ける金融サービス事業者にグローバル展開が進んでいると発表した。
グッドウェイは、2014年12月18日(木)に港区の世界貿易センタービルディング33階にあるエクイニクスの東京オフィスを訪ね、同社 ビジネスデベロップメント シニアディレクター アジア・パシフィック デイビッド ウィルキンソン氏を取材した。
近年、「データセンター」という言葉をひんぱんに目にする機会が増えた。データセンターとは、ひと言で簡単に言ってしまえば、大量のインフラ機器やデータを保管・運用するための専用施設である。利用者にとっては、大容量回線の引き込みやサーバーの設置やメンテナンス等にかかる運用を一元化することで、コスト削減や安全性の確保などメリットは多い。一方で、急成長を見せるデータセンター市場は、今後も拡大が見込まれ、巨額の設備投資を積極的に行い参入する業者も多く、世界的に厳しい競争が繰り広げられている。
データセンター事業者は世界に数多く存在するが、中でもグローバルに大きな展開を見せ、成長を遂げている企業の1社がエクイニクスだ。
同社の創業は、「デジタル経済において、企業のビジネスに対する信頼性の場を提供し、企業同士が重要な情報を交換し合い相互に事業を繁栄させる手助けをする」というビジョンを描いたことに起因する。このビジョンを実現するには、並々ならぬ忍耐、献身、そして絶対にやり遂げるという強い決意が必要だった。
この持続的なビジョンによってエクイニクスは、現在、従業員数 3,600名を超え、世界32都市で100を超えるインターナショナル・ビジネス・エクスチェンジ(IBX)データセンターを通じて、450超のアセットマネージャーおよびブローカー、100超の取引所およびトレーディング・プラットフォーム、150超のテクノロジーおよびサービスプロバイダーに、サービスを提供するまでに成長した。同社の株価(米ナスダック市場:EQIX)が、2009年から著しい上昇を示しているのは、同社の成長を反映していると言えるだろう。
米国での創業から約2年後の2000年11月、日本法人であるエクイニクス・ジャパン株式会社(以下、エクイニクス・ジャパン)は東京データセンター(TY1)をオープンした。海外と比較して、保守的な日本の企業であってもデジタル経済を享受するためには、データセンターの導入に積極的にならざるを得ない。現在 70社を超える日本の金融機関にサービスを提供するようになり、日本での展開も拡大を辿っている。
デイビッド・ウィルキンソン氏は、「当社には競争相手はいません。その理由をご説明しましょう」と、エクイニクスの主な特長を以下に挙げる:
1.「キャリア・ニュートラル」
顧客は、グローバルで1,000以上のネットワークから最適なものを自由に選択することができる。これだけの数のネットワークを揃えているのはエクイニクスだけ。
(※)キャリア・ニュートラルとは、データセンターサービスで、利用するラック内へ引き込める回線提供業者(キャリア)やインターネット接続業者などに制約がないことを意味する。顧客は各々のシステムに最適なインターネット接続サービス(通信事業者)を選択する事ができ、また可用性の高いネットワークを構築することも可能。
2.「デジタル・エコシステム」
データセンターの中で、データが交換され、顧客はクラウド、コンテンツ、金融サービス、モバイル、ネットワークサービスといった主要な業種における各ビジネスのユニットをつなぎ合わせてエコシステムを形成することができる。エコシステムへの接続によって、大幅なコストの低減、アプリケーションパフォーマンスの向上、データセンター配備の簡素化が可能。
(※)エコシステムとは、複数の企業や登場人物、モノが有機的に結びつき、循環しながら広く共存共栄していく仕組みを指す。
「キャリア・ニュートラルな金融サービスエコシステムを展開し、顧客が求める選択肢を提供するハブを目指す」
これがエクイニクスの最大の強みであり、同業他社と比較して競争上の優位性は大きい。
最近は、FXビジネスで同社を利用するFX会社のニュースが相次いて発表されている。
たとえば、FXCM社(米国)。2011年以来エクイニクスを利用しているが、FXの超高速マッチングエンジンである「ファストマッチ(FastMatch)」においてレイテンシ(遅延)短縮のためにニューヨーク、ロンドンに続き、2013年に東京データセンター(TY3)にマッチングエンジンを追加した。また2014年12月には、LMAX Exchange社(英国)が提供するスポットFX向けのMTF(Multilateral Trading Facility:多角的取引システム)におけるマッチングエンジンをEquinixの東京データセンターで稼動開始している。
電子トレーディングの世界ではミリ秒単位で遅延を減らしたいという要求が近年高まっている。通常のケースだと、ニューヨークのデータセンターでリクイディティを獲得する場合、東京~ニューヨーク間のレイテンシは、往復で100~200ミリ秒程度かかるが、東京都内のデータセンターのメトロコネクトでリクイディティを獲得すれば、7~8ミリ秒程度に大幅短縮できる。そればかりではなく、リジェクション率やスリッページ幅の大幅な減少も期待される。
(※)メトロコネクトとは、例えば、東京のデータセンター(TY1~TY4)など集中しているメトロ(都市)内 でのデータセンター間をダークファイバー等で接続するサービス。パートナー企業や同じ企業内でEquinixの違うデータセンターにコロケーションしている場合などでも、高速で格安に提供。
エクイニクスは現在、東京に4カ所のテータセンター、大阪に1カ所保有しており、東京に新たなデータセンターの増設(TK5)も計画されているのは、こういったニーズが増えていることが理由の一つではないだろうか。また、FXのみならず、株式、株式デリバティブ、債券先物取引、上場デリバティブなど、マルチアセットを取引や運用する金融企業のグローバルな展開も進んでおり、同社のデータセンターの利用はいっそう高まる気配を見せている。
ウィルキンソン氏はこう語る。「データセンターは資金力があれば誰で作ることは可能ですが、そこにどうお客様を持って来ることができるかが問題です。お客様目線で、データセンターの使い方を考えて、いかにビジネス促進に貢献できるか対話を継続していれば、たとえ、その時にうまくビジネスが締結できなくても、将来的に当社をご利用いただくことができる、そういったリレーションシップが重要だと思っています。データセンターは最先端テクノロジーですが、お客様とはヒューマンリレーションシップを大事にしています。」
グローバルに4,500社以上もの顧客と、データセンター分野のエキスパートとして長年培ったノウハウを持つエクイニクスが創造する世界的なフィナンシャル・コミュニティーは、金融機関、取引所、マーケットデータ、クリアリング、データ分析、FIXネットワークをはじめとするキャピタルマーケッツを構成する参加者の誘致・誘引によりプラットフォームに集約されていくことで、金融市場プラットフォームにおける社会インフラそのものとなり、そのコミュニティーへの参加者は今後も増加していくことだろう。
金融業界では、NTTコミュニケーションズ、KVH、アット東京のほか、昨今の金融ベンチャー企業などFintechの分野のクラウドサービスにおいても、アマゾン(AWS)、マイクロソフト(Azure)、日本IBMなど多くのIT企業が参入する激戦エリアになっている。今後のデータセンター事業者による、金融業界の課題に対する解決策、グローバル化やビジネスニーズに応じた事業展開に注目していきたい。
(インタビュー:藤野 宙志、香澄ケイト / 記事:香澄ケイト / 編集:藤野 宙志 / 撮影、制作:柴田 潔 @株式会社グッドウェイ)