【日本銀行】【挨拶】白川総裁 デフレ脱却の道筋~名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121126a1.pdf
1.はじめに
日本銀行の白川でございます。本日は、中部経済界を代表する皆さま方とお話しする機会を賜りまして、誠にありがとうございます。また、皆さまには、日頃より、日本銀行の名古屋支店が大変お世話になっており、厚くお礼申し上げます。
本日は、まず私から、内外経済の動向や日本銀行の金融政策運営についてお話しし、その後、デフレ脱却の道筋についてご説明致します。
2.海外経済および為替レートの動向
当地には毎年ほぼ11 月のこの時期にお邪魔していますが、最初にこの1年間の日本経済を取り巻く外的経済環境、とりわけ、海外経済と為替レートの動向を振り返ることから話を始めたいと思います。
まず、海外経済です。世界経済の最大のリスク要因であった欧州債務問題については、昨年の今頃は不透明感が強く、ユーロの崩壊といった最悪シナリオも意識されるなど、金融市場では緊張度が非常に高い状況にありました(図表1)。当時との比較でいうと、現在は欧州中央銀行による新たな国債買入れプログラムの導入やESM(欧州安定メカニズム)の稼働開始といった安全装置の整備が進んだ結果、欧州債務問題からグローバルな金融危機が起こるといった極端な事態が発生するリスクは後退しました。しかし、欧州では依然として周縁国を中心に財政、金融システム、実体経済の間で負の相乗作用が働いており、最近ではコア国にも影響が及び始めています。このため、欧州経済は昨年第4四半期以降連続してマイナス成長を記録するなど、緩やかな景気後退局面に入っています。米国経済については、家計部門を中心に緩やかな回復過程にあります。1年間の変化という点では、住宅投資について、水準はなお低いとはいえ底入れ感が窺われるのは明るい方向の変化です(図表2)。ただし、1年前も指摘されていた「財政の崖」を巡る状況に変化はなく、むしろ、崖が近くなった分だけ、この問題がより意識されるようになっています。この1年間という点で、地域別に最も変化が大きかったのは中国経済でした(図表3)。成長率はなお高水準であるとはいえ、実質GDPの前年比は昨年第1四半期以降7期連続で低下しており、欧州向け輸出の減少や素材産業における在庫調整などから減速が長引いています。また、そうした短期的な動きとは別に、高度成長から中程度の成長軌道へ円滑な移行ができるかどうかが、政策運営を巡る大きな関心事項になってきているように思います。
詳細
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121126a1.pdf