投資信託は一度にまとめて買うこともできますが、定期的に一定額を購入する「積立投資」も利用できます。昨年2018年からは、年間40万円までの積立投資から得られる運用益が非課税になるという「つみたてNISA」制度も始まり、投信積立にますます注目が集まっています。今回は、カブドットコム証券で各種商品の企画や戦略を担当している安藤大輔さんに、投資信託の積立投資の特徴やメリット、注意すべき点などを教えてもらいました。
■Q1:投資信託の積立投資の特徴ってなんですか?
■A1:まずは、少ない金額から分散投資ができることです
まず、投資信託の積立投資(投信積立)とは、名前のとおり、投資信託を定期的に一定額ずつ買い付けていくという投資手法です。「一定額」がいくらからなのかは金融機関によって異なりますが、カブドットコム証券の「プレミアム積立」の場合は毎月100円から積立てることができます。
少額から積立てられるので投資のハードルが非常に低く、投資初心者の方でも始めやすいことが投信積立の大きな特徴です。もちろん、投資信託は複数の銘柄で構成されている商品ですから、たとえ100円分を買い付けたとしても、多くの銘柄に分散投資されています。
また、一度手続きをしてしまえば、あとは毎月自動的に積立が行なわれるので、投資の手間を最小限に抑えられることも特徴と言えるでしょう。自動での積立には、ほかにもいい点があります。タイミングを計って自分で購入した場合には、どうしても目先の値動きに一喜一憂しがちです。ときには、ほんの少しプラスになっただけで利益確定したり、逆に値下がりが怖くてすぐに損切りしてしまったりするかもしれません。けれども、積立投資ではいちいち自分で買付をするわけではないので、よい意味で日々の値動きを気にせずに長期投資が行なえます
●投資信託の積立の主な特徴
■Q2:投信積立のいちばんのメリットは何ですか?
■A2:定額を買付けることで、平均購入単価を下げられる可能性があることです
「A1」で説明した、少額から始められることや手間がかからないことも投信積立のメリットと言えますが、いちばんのメリットとしては「ドル・コスト平均法」によって、平均購入単価を下げられる可能性が挙げられます。ちなみに、「ドル」と付いていますが為替とは関係ありません。
「ドル・コスト平均法」とは、投資信託に限らず、値動きのある商品を定期的に一定額で購入していく方法を指します。定額で買い付けるということは、価格が高いときには少しの口数を、逆に価格が安いときには多い口数を買うことになります。投資信託の評価額は、基準価額×口数なので、安いときにたくさんの口数を買っておくことは非常に合理的だと言えます。
●ドル・コスト平均法の例
■Q3:投信積立の短所やデメリットも教えてください
■A3:タイミングを計って「安いときに買いたい!」ということはできません
短所やデメリットではありませんが、「安いときを見計らって買いたい」と考える人には投信積立は向いていません。理由は、ここまでですでに説明したとおりですが、安いときでも高いときでも決まった日にちに淡々と買っていくという仕組みだからです。
タイミングを見て買いたいという「株式取引のマインド」が強い人であれば、積立ではなくその都度買っていくか、あるいは投資信託の中でも株式市場に上場していて個別株と同じように取引きできる「ETF(上場投資信託)」や「リート(不動産投資信託)」のほうが満足度が高いかもしれません。
ただ、実際には最も安い時期を見計らって買うのは簡単ではありませんし、相場の状況を調べたりするためには手間や時間もそれなりにかかります。繰り返しになりますが、積立投資なら一度設定すれば手間がかからず、「A2」で説明したようにドル・コスト平均法で取得コストを下げられる可能性があります。投信積立は、非常に合理的な買い方で、かつパフォーマンスも狙いたいという人には向いている、と言ってよいでしょう。
■Q4:「つみたてNISA」など投信積立がお得になる制度があるそうですが…
■A4:「つみたてNISA」や一般の「NISA」では、運用から得られた利益が全額非課税になります
「つみたてNISA」(積立専用の少額投資非課税制度)や「NISA」(少額投資非課税制度)を利用して投信積立を行なうと、投資から得られた利益が全額非課税になります。通常の課税口座では利益に20.315%の税金がかかるので、ご自身の使い方に合致するようであれば間違いなく利用したほうがよい制度です。
「つみたてNISA」は名前のとおり積立投資のための制度で、購入できるのは基本的には金融庁が定めた一定の条件を満たす投資信託のみ、購入方法は積立のみです。一般の「NISA」の場合は、投資信託のほか、個別株やETF、リートなども取引が可能です。投資信託については、積立投資だけでなくスポットでの購入もできます。
投資初心者であれば、商品数が絞られた「つみたてNISA」で投信積立をするほうが使い勝手はよいでしょう。ただ、「つみたてNISA」の年間の非課税投資枠は最大40万円で、1カ月では約3万3000円までしか積立ができません。一方、一般の「NISA」は年間の非課税投資枠が最大120万円なので、1カ月10万円までの積立が可能です。運用期間は「つみたてNISA」のほうが長期にわたりますが、トータルの期間は短くても毎月数万~10万円まで投資信託を積立てたいときには、一般の「NISA」のほうが向いています。
●「つみたてNISA」と一般「NISA」の投信積立に関する違い
なお、「iDeCo」(個人型確定拠出年金)でも投資信託を積立投資することができ、節税メリットも「つみたてNISA」や「NISA」以上にあります(運用益が全額非課税、掛金が全額所得控除の対象、受取時に退職金所得控除や公的年金等控除が受けられる)。ただし、「iDeCo」はあくまで老後資金を作るための制度です。通常の投信積立とは分けて考えたほうがよいでしょう。
■Q5:投信積立をする際には、何に注目して商品を選べばいい?
■A5:まずは、コストを意識して商品を絞り込んでみましょう
投資信託を選ぶポイントはいくつもありますが、まず注目したいのが「コストの低さ」です。投資信託によっては買付時に「購入時手数料」がかかる商品もありますが、定期的に買付を行う投信積立では、基本的にノーロード(購入時手数料ゼロ)の商品を選ぶのがおすすめです。現在は、ノーロードの投資信託が非常に多くなっていて、選択肢も豊富にあります。
また、コストのうち最も重要なのは信託報酬(運用管理費)です。なぜなら、信託報酬は投資信託を保有している間、継続的にかかってくるからです。投信積立に限らず投資信託を選ぶ際には、信託報酬の料率を必ず確認しましょう。信託報酬は、投資対象や運用手法によって変わってきますが、たとえば同じ指数に連動するインデックス型投資信託であれば、一般的には運用管理費が低い商品のほうがおすすめです。
ちなみに、「つみたてNISA」で購入できる投資信託は、すべてノーロードで、信託報酬も「国内株のインデックス型投信なら0.5%以下」など資産や運用手法ごとにそれぞれ水準が定められています。「つみたてNISA」の対象商品であれば、どれを選んでもコストが高すぎるということはありません。
■Q6:投信積立では、どんな投資信託を買えばいいですか?
■A6:手間をかけたくなければ「バランス型」1本でも構いませんが…
「何を買えばいいですか?」という問いに対して、答えは一つではありません。なぜなら、お客様の年齢や職業、保有資産額、投資経験の有無など、一人ひとりの状況によって選ぶべき商品は変わってくるからです。そこで、ここからは商品を選ぶ際のいくつかのヒントをお伝えしたいと思います。
なるべく手間をかけたくないのであれば、1本で株や債券など複数の資産に分散投資する「バランス型」の投資信託を選ぶのもよいでしょう。バランス型なら、資産の配分比率が当初とは変わって来たときに調整する「リバランス」も、自動的に行なってくれます。ただし、バランス型投資信託も、4資産(国内外の株と債券)もあれば8資産(国内外の株と債券とリート、新興国の株と債券)もあるなど非常に種類が多く、結局は「どのバランス型投信を選ぶか」という問題は避けて通れません。
個人的には、「ベースになる商品」「それより高いリターンが期待できる商品」「ベースよりリスクが低い商品」の3本程度でポートフォリオを組むことをおすすめします。積立投資の場合は、ある程度価格の変動があったほうが中長期ではリターンを狙えるので、「高いリターンが期待できる商品」では、たとえば海外の株式に投資する商品を選ぶとよいかもしれません。また、「リスクが低い商品」では値動きが小さい債券に投資する商品が考えられます。
では、「ベースになる商品」は何を選ぶのか。私は、ここに「バランス型」を置くとよいのではないかと思います。先ほど、バランス型なら1本でいいと説明しましたが、バランス型を中心に置いた上で、それより高いリターンを目指すもの、よりリスクの低いものでポートフォリオを組むという考え方です。もちろん、これが絶対にいいということではありませんが、投信積立で商品を選ぶ際のヒントとして活用していただければと思います。
また、方向の違う話ですが「ファンドを選ぶツール」を活用して、具体的な商品を選ぶという方法もあります。たとえば、いくつかの質問に答えることでその人のリスク許容度に合った投資信託を提示するといったツールですが、実はカブドットコム証券ではさらにユニークなツールを用意しています。それが、直感でドレスを選ぶだけでその人にピッタリの投資信託を提示する「FUND DRESS(ファンドドレス)」です。「何を選べばいいかわからない」というときは、そうしたツールも活用してみてはいかがでしょうか。
【まとめ】
「A6」では、投信積立の際に複数の商品でポートフォリオを組むことを提案しましたが、それは複数保有したほうがさまざまな「気づき」があると思うからです。投資信託で積立投資をするのは、当然ながら資産を増やすことが第一の目的でしょう。ただ、それだけではありません。ご自身で何を買おうか研究したり検討したりすることで、経済を知ることにつながります。もう少し具体的な話をすると、「今は金利がこんなに安いのか(だったら住宅ローンを検討してみよう)」「為替が反対方向に動いてきている(次回の海外旅行をどうしよう)」などさまざまな気づきにつながり、実生活にメリットをもたらすという副産物も得られるかもしれません。
もちろん、個別株投資でもFX(外国為替証拠金取引)でも同様の経験はできますが、投信積立の場合は、個別株やFXよりはリスク管理の手間がかからず、一度の投資金額も少額で済みます。また、商品自体はご自身で選ぶ必要がありますが、投資信託の運用はプロに任せるので他の投資に比べると手間がかかりません。それでいて、たかが毎月100円であっても、国内外の経済に間接的に関わることができるのが投信積立の「もう一つの魅力」と言えるのではないでしょうか。
(取材・記事:肥後 紀子 / 撮影:柴田 潔 / 編集・制作:グッドウェイメディアプロモーション事業部)