2017年6月25日(日)~7月2日(日)、グッドウェイは、これまで過去複数回実施した米西海岸シリコンバレー「Fintech海外最前線 新金融サービス事業創造ツアー」の訪問先となるグローバルエリアの拡大に向けて、欧州の視察先としてロンドンとルクセンブルクを訪問。
今回は、6月28日(水)~29(金)にルクセンブルクのスタートアップ企業やイノベーションエコシステム団体との個別セッション「Fintech Business Tour Luxembourg」について紹介したい。
4社目の面談は、Hunz Lee氏(APS Card, Director)。不正利用を回避すべくクレジットカード番号やセキュリティコードの記載の無いクレジットカードを目指し、スマートフォンとのペアリングにより都度カード番号を生成するクレジットカードを開発。ボタンやディスプレイにかかる省電力技術開発と合わせサービス化を進めている。元パイロットだったというLee氏が日本人とルクセンブルクでスタートアップを設立した経緯と所感など話を聞いた。
ランチを取り、午後の打ち合わせのために中心街を抜けて移動。ルクセンブルクの市内はバス(2€)か徒歩で移動することが多い。タクシー代金(近場でも10€~、車で15分ほどの空港まで40€~)は高く、主に外国人や急ぐ場合に限られる。
5社目の面談は、Gilles Feith氏(CTIE(政府ITセンター), Director Government IT Centre)。世界で最も進んだ電子政府先進国のエストニア政府における国民の重要データやサービスのバックアップを、国外であるルクセンブルク政府と設置するデータ大使館に保管することで電子行政サービスの継続性強化を目指す取り組みのほか、ルクセンブルク国民の電子政府サービスの最新動向について話を聞いた。
ルクセンブルク駅はルクセンブルク市の南に位置し、ベルギー、フランス、ドイツなど周辺国を結ぶ列車のターミナル。日中の多くの就業者が国外からルクセンブルクに通勤しているという。路線の起終点となっており、市内での移動には使用しない。
7社目の面談は、Olivier Portenseigne氏(FundSquare, Managing Director & Chief Commercial Officer)、Paolo Brignardello氏(FundSquare, Head Product Management and Marketing)、Bernard Simon氏(Luxembourg Stock Exchange, CIO, Member of the Executive Committee)。FundSquareが開発し新たに提供を始めた「FundsDLT」は、分散型元帳技術(DLT)を活用し、運用会社から取引所までファンドの注文処理の効率を飛躍的に向上させることでファンドの手数料を下げると共に、規制対応や流通ネットワークをデジタルで最適化するプラットフォーム。
取引所のあるルクセンブルク市の西側エリアから市内中心地までは徒歩10分ほど。その通りには公園があり、緑に囲まれた落ち着いた家並みが広がっている。
8,9,10社目の面談は、Nasir Zubairi氏(LHoFT, CEO)、Raoul Mulheims氏(jeelis(Digicash), Co-founder & CEO)、Bert Boerman氏(GOVERNANCE.IO, CEO)の同時対談。
LHoFTは、ルクセンブルグのFintechエコシステムコミュニティ全体(金融機関、Fintechスタートアップ、IT業界、研究機関、規制当局および公的機関など)と専門家や投資家をつなぎ、金融サービスの革新的なソリューションを創り出すためのコワーキングスペースなどインキュベーション施設を運営。世界中の主要なFintechハブと連携し、金融サービス業界のイノベーションを推進している。
jeelisは、ルクセンブルグのリテール銀行のモバイル決済サービスDigicashを展開し、デジタル化する世界の中でユーザーエクスペリエンスの創造と体験を生み出すツールやサービスを提供している。
Governance.ioは、規制対応やデータや文書を収集し高い透明性を確保して管理するガバナンスプロセスを実現するサービスを提供している(昨年の「FinTech Awards Luxembourg 2016」の優勝企業でもある)。
対談後に記念撮影。Sarah Haunert氏(Ministry of the Economy, Directorate General for Foreign Trade and Investment Promotion)、Manon Loisin氏(LHoFT, Head of Marketing)も一緒に加わる。
11社目の面談は、Laurent Kratz氏(Scorechain, Chairman, Founder)、Lisa Boussard氏(Scorechain, Marketing Executive)。コンプライアンス、フォレンジック、CRMのための「Bitcoin Analytics」サービスを提供。Bitcoinユーザーの詳細分析や、コンプライアンス管理、販売戦略とマーケティング戦略を支援するという。また、分散元帳技術(DLT)を活用した次世代の資金管理サービスを模索するFUNDCHAINプロジェクトを手掛けている。
12社目の面談は、Tom Theobald氏(Luxembourg for Finance, Deputy CEO)。Luxembourg for Financeは、Agency for the Development of the Financial Centreとして、ルクセンブルグの金融サービス業界の発展のため、ルクセンブルク政府とルクセンブルグ金融産業連合が2008年に設立。さまざまな専門家団体や投資家と協力し、ルクセンブルグで利用可能なリソース(商品、サービス、イベント、メディアニュースなど)を駆使してビジネスチャンスを創り出すべく活動している。
ルクセンブルクは、ドイツ、フランス、ベルギーと隣接し、ヨーロッパにおけるEU市場5億人の消費者に向けたビジネスプラットフォーム拠点として、世界的な大手企業がヘッドクォーター拠点を置くなど、金融サービスやICTインフラを強みとしている。国土が小さいがゆえに政府との距離も近く、スタートアップを含めた金融機関やフィンテック企業による新規事業化、イノベーションを強力にバックアップする専門家やインキュベーション施設など充実したエコシステムが形成されている。
今回の「Business Tour」は、今後のGoodWay欧州Fintechビジネスツアー企画・実施に向けたリサーチ、取材、リレーション構築のための事前準備活動として行われ、まさに百聞は一見に如かず、大きな一歩を踏み出すことができた。
ロンドンでは、金融機関が集まる再開発地域 Canary Wharf にある施設 Level39 に入居する日本のFintechスタートアップ Doreming 、そして、ロンドン中心部の金融センター City にオフィスを構える Wirex を訪ねた。
ルクセンブルクでは、「Fintech Awards Luxembourg(個別レポート)」に参加。14社が登壇、キプロスの AIFMaps(RegTech)が優勝、イスラエルの ClickIns(InsurTech)と PayKey(Payments)が準優勝。会場にはグザヴィエ・ベッテル首相やグラメーニャ財務相などルクセンブルク政府・金融分野のエコシステムを形成する主要メンバーが一堂に会した。
「Fintech Awards」以外でも、Rakuten Europe Bank、ルクセンブルク証券取引所、FundSquare、CTIE(政府ITセンター)のほか、iDetect、Investify、APS Card、Scorechain、jeelis(Digicash)、governance.io、LHoFT、Luxembourg for Finance など10社以上のベンチャーや施設運営団体と個別ミーティングの機会に恵まれた。今回の訪問先のアレンジにあたり、ルクセンブルク経済省 東京貿易投資事務所および現地の関係者の皆さまにはこの上ない力添えを頂き、心より感謝申し上げたい。
これを機に、今後の欧州と日本のFintechビジネスの関係強化に向けた実効性あるエコシステムの形成と運営に向けて、より一層取り組んでいきたい。
(取材、撮影、記事、編集・制作 : GoodWayメディアプロモーション事業部 @株式会社グッドウェイ )