2011年7月22日に設定した、DIAMアセットマネジメントの「新興国中小型株ファンド」。資産倍増プロジェクト専用ファンド第1弾のうちの1本だ。
ファンドの直近1年の運用状況と今後の見通し、また好調なパフォーマンスを支える「低ボラティリティ戦略」など2つの運用戦略について、菊地尚文・DIAMアセットマネジメント株式運用本部上席ポートフォリオマネジャ-に聞いた。
◆落局面も2回あったが、この1年では+34.95%のリターンを達成
まずは、直近1年のファンドの値動きを振り返ってもらった。
「2014年は、9月から10月にかけてエボラ出血熱の感染拡大懸念で、また年末には原油安の影響で市場が不安定になり、その影響で基準価額が下がった局面がありました。ただ、その2回の下落を除けば、順調に伸びたと言えるでしょう」(菊地上席ポートフォリオマネジャー・以下、カギカッコ内同)
新興国全体としては、引き続き経常赤字とインフレの問題があり、さらに米国の金融引き締め観測の影響による資金流出などもあったというが、「そのため多くの国で通貨安が進み、一部の新興国で輸出競争力が回復するなどプラスに働いた部分もありました。また、原油安自体は、実は約85%の新興国にとってはメリットのほうが大きい。原油安がマイナスに働いたのは、ロシアやブラジル、マレーシアなどの原油輸出国に限られました」。
今年5月末までの1年間のリターンは、+34.95%(分配金再投資ベース)。参考指標であるMSCIエマージングマーケット中小型株インデックス(円換算ベース・配当込み・為替ヘッジなし)と比較すると、単月ではリターンが下回った月もあるというが、1年間のトータルでは上回り、設定来で見た場合は30%以上も参考指標を上回っている。
また、モーニングスターのデータによると、この新興国中小型株ファンドは、他社の新興国ファンドと比べた場合、運用のブレ幅が非常に小さい、つまりリスクが非常に低いことがわかるという。
「2015年3月末までの1年間になりますが、標準偏差(ブレ幅)がわずか8.25%で、これは新興国ファンド全170本の中で5位という結果でした。(注:モーニングスターの分類における、当ファンドと同じ国際株式・エマージング・複数国(F)のカテゴリにおいて。)もちろんリスクが低いだけではなく、リターンについても170本中、上位1/4という高い位置につけています」
新興国の株式に投資するファンドというと、高いリターンが期待できる反面、リスクも高いというイメージが強いが、この新興国中小型株ファンドの場合は当てはまらないようだ。「低リスクでありながら、中小型株式ならではの大きな上昇が取れるファンドであるという点は、ぜひ強調しておきたいですね」。
ちなみに、6月18日時点での設定来のリターンは+84.79%。「専用ファンドが生まれるきっかけとなったプロジェクトの名称でもある『資産倍増』までは、あと一息といったところです」。
◆新興国の中小型株に限定して投資する、他に類のないファンド
では、なぜリスクを抑えつつ、高いリターンが期待できるのだろうか。その理由は、このファンドならではの投資対象と、2つの運用戦略にあるという。
ファンドの投資対象は、名前の通り「新興国」の「中小型株」に限定している。新興国の株式に投資するファンドは少なくないが、中小型株に限っているものは日本のファンドではほかに例がないのではないかと菊地上席ポートフォリオマネジャーは語る。
「一般的に新興国の株式というと、挙がってくる銘柄はペトロチャイナのような誰もが知っている大型株になりがちです。しかし、それでは大きなリターンはなかなか挙げられません。中小型株はまだ成長ステージが浅い銘柄が多く、これからの大きな成長が望めます。また、銘柄の認知度が低く注目されていないため、株価もまだ安いことが多いのです」
業種に目を向けると、以前から生活必需品、一般消費財といった内需系に重点を置いているが、直近では「ヘルスケア」と「情報技術」のウエイトを意識して上げているそうだ。
「ヘルスケアは、バイオを中心とした新薬開発が盛んで、後発医薬品も活況、さらに世界的な業界再編も進んでいますが、先進国・新興国を問わず、いずれも高いリターンを挙げています。新興国では、韓国、中国、南アフリカなどにバイオメーカーや後発医薬品メーカーが数多くあります。また、情報技術では中国、韓国、台湾の東アジア3カ国で、スマホ向けの部材の受注が順調に伸びている点に注目しています」
2014年6月30日~2015年6月18日までのファンドの組み入れ比率上位10銘柄を見ると、一般の投資家には馴染みのない銘柄名が並んでいるが、1年弱の期間でいずれも大幅なリターンを挙げている。
「市場環境も堅調でしたが、中小型株には内需や消費の拡大の恩恵を直接受ける銘柄が多いことが理由です。加えて、低ボラティリティ運用戦略による銘柄選定、マルチファクターモデルによる組み入れ比率調整がしっかり効いています」
◆低ボラティリティ戦略+マルチファクターモデルの2段構えで超過収益を狙う
低ボラティリティ運用戦略とは、変動率の小さいポートフォリオのほうが高い投資効果を挙げられるという、比較的新しく生まれた運用戦略のこと。新興国中小型株ファンドの大きな特徴のひとつだ。
伝統的な資産運用における「リスクが高いほど、高いリターンが狙える」という考え方とは正反対だが、最初に取り上げた他社の新興国ファンドとの比較でもわかるとおり、実際に高い効果を上げている。
「ただ、低ボラティリティ運用戦略も万能ではなく、変動率の低い銘柄に投資することから、たとえば全体相場が暴落した後の急回復時などには、相対的に参考指標に追いつけないケースもあります。最初に、この1年でも単月ではリターンが参考指標を下回ったこともあると説明しましたが、それはまさに市場がリスクオフからリスクオンに変わり、株価が急回復した月でした」
とは言え、「下落相場では参考指標を上回るけれど、上昇相場では相対的に参考指標についていけない、では意味がありません」と菊地上席ポートフォリオマネジャーは続ける。
「そこで、このファンドで採用しているもうひとつの重要な特徴がマルチファクターモデルです。値上がり期待の高い魅力的な銘柄を選別する独自の計量モデルで、マルチファクターモデルに従って組み入れ比率を調整することが超過収益の獲得につながります」
つまり、低ボラティリティ運用戦略+マルチファクターモデルの2段構えの戦略によって、リスクを抑えながら高い収益獲得を目指せるというわけだ。
ところで、ここ1年ほど投資の世界では「スマートベータ(賢い指数)」と呼ばれる考え方が高い注目を集めているそうだ。
「スマートベータとは、簡単に言うと何らかの戦略や考え方を用いて、従来のインデックス型を上回る投資効果を狙うものです。当ファンドが採用している低ボラティリティ運用戦略もスマートベータのひとつで、前述のとおり、参考指標を上回る投資効果を上げています。
また、具体的な戦略の中身が同じということではありませんが、個人に身近なところでは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、公的年金を運用する際の投資基準のひとつとしてスマートベータを採用しています」
「スマートベータ」に注目が集まるにつれ、低ボラティリティ運用戦略の手法と新興国中小型株ファンドの認知度も今後ますます上がっていくのではないだろうか。
◆インドなど成長期待の高い新興国はこれからも有望
今後の新興国の動向については、どのように見ているだろうか。
「ひとくちに新興国といっても、経常収支や金融政策、政治の情勢、原油安の影響などで状況はさまざまで、『勝ち組』と『負け組』の2つに分かれると言えるでしょう。
具体的には、原油安がデメリットになる資源国のマレーシアや、資源国でさらに汚職問題や経常赤字を抱えるブラジル、インフレのインドネシアなどに関しては、たとえ株価に割安感があっても、今のところはわざわざ投資対象として選ぶべきではないと考えます」
逆に、それ以外の新興国は、それぞれ構造改革が進んでいたり、利下げによる景気刺激があったりと、株にとってプラスに効いてくるため「買い」と判断できるとのこと。
「中でも、注目しているのがインドです。GDPの成長率7%という数字も達成する確率が高いと見ていますし、景気拡大を背景に消費が伸びることで恩恵を受ける銘柄がたくさんあります。このファンドでは新興国の国別配分が非常に重要になりますが、インドに関してはすでに1年以上前からウエイトを上げてきています。今後も、重点的に投資を続けていきたいと考えています」
新興国に関しては、米国の利上げによって資金が流出するという懸念も相変わらず指摘されている。しかし、菊地上席ポートフォリオマネジャーは、次のように述べていた。
「前回2004年に米国が利上げした際、利上げ前は確かに米国株も新興国株も株価は調整しました。しかし、利上げ後は米国株が1年で約20%、新興国株に至っては60%近くも上昇しています。そもそも、景気の回復と拡大が見込まれるからこその利上げであり、利上げ後にはそれまでに売っていた分を買い戻す流れが予想されます。
米国の利上げはおそらく今年の9月か12月に実施される可能性が高く、そういう意味では、新興国中小型株ファンドなどを活用して資産ポートフォリオの中で新興国の株の比率を今から増やしておくことで、よい結果が得られる可能性が高いのではないでしょうか」
最後に、新興国中小型株ファンドのコストは、購入時はノーロード(手数料無料)で、信託報酬は2.052%(税抜1.90%)、また解約時には0.3%の信託財産留保額がかかる。ファンドの詳しい内容については、こちらのページでも確認可能だ。本サイトでは、直近の運用状況を動画で解説する「運用報告会」も行なっているので、そちらも参照して欲しい。
(取材・記事:肥後 紀子 / 撮影:村上 遥 / 編集・制作:グッドウェイメディアプロモーション事業部)
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