(物価) ・消費者物価の前年比は、当面、感染症や原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられる。その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。 ・やや長い目でみた物価の動向については、現時点では、需要の急速な回復が期待しにくいもとで、予測可能な将来に、物価がモメンタムをもって2%に近接していく姿を予想することは難しい。 ・物価上昇につながる好循環を支えてきた雇用・所得環境に、弱めの動きがみられる。リスクシナリオとして、消費者物価の低迷が長引く場合、予想物価上昇率の適合的形成に及ぼす影響が懸念される。 ・現時点では企業倒産の急増や深刻な雇用調整は発生していないが、中小企業を中心に雇用や設備の余剰感に強まりがみられる。今後、感染症の第2波により景気回復が遅れれば、雇用や資本ストックの調整を通じて、物価の下落に波及するリスクには留意が必要である。 ・新型コロナウイルス感染症の深刻な影響が続いており、今後は流動性から支払能力へ課題がシフトする。感染症拡大の影響は、製造業からサービス業、大企業から中小企業・個人事業主まで広範囲に及んでおり、過去の危機でいわれた「too big to fail」というよりは「too many to fail」が懸念される。企業の倒産・休廃業の増加は、雇用、物価と金融に悪影響をもたらしかねず、再びデフレに陥らないように警戒すべきである。