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2017/08/29

【ファイナンシャルリサーチ】「毎月分配型投資信託は、ストレスなくお金を取り崩す『仕組み』。上手に使えば、リタイア世代には非常に便利な商品です」ファイナンシャルプランナー 深野康彦さんに聞く~(ネット証券4社共同プロジェクト)

| by:ウェブ管理者


■毎月分配型投資信託の人気の背景にあるのは「低金利の蔓延」

 人気が高い一方で、ネガティブな評価を受けることも少なくない毎月分配型投資信託。しかし、毎月分配型投信に向いている人が適切に使う分には、とても便利な金融商品です。改めて、その特徴や魅力から、ネガティブな評価を受ける理由、商品を選ぶチェックポイントまでお話していきたいと思います。

 まず、毎月分配型投資信託とはどのような商品でしょうか。簡単に言うと、毎月決算を行ない、その投信の分配方針に従って月々分配金を支払う投資信託のことです。

 国内籍の毎月分配型投信が初めて発売されたのは、今から20年前です。その後、新しい投資対象や投資手法を取り入れながら、毎月分配型投信はどんどん売り上げを伸ばしていきました。ピーク時には投信全体の純資産総額の約7割、現在も純資産総額の約4割を毎月分配型投信が占めています。毎月分配型投信は「投資信託の一分野を築いた」と言ってよいでしょう。

 その背景にあるのは、低金利の蔓延です。日本では低金利が長らく続いているため、行き場がなくなったお金が毎月分配型に流れているのです。特に、日本の金融資産は6割以上を高齢者が保有していますが、そうした高齢者層――リタイア世代に毎月分配型投信は支持されています。

 ここで、リタイア世代のお金事情に目を向けてみましょう。総務省の統計データによると、ざっくりした数字ですが無職の高齢者世帯では、毎月6万~7万円程度、家計がマイナスになっています。年間だと70万~80万円超というところです。その不足分をどこでどのように補うのかは、リタイア世代にとっては重要な問題です。

 20年ほど前は10年物国債の利回りが2%を超えていたため、当時のリタイア世代は退職金などで国債を買っておけば、その利子だけで不足分のほとんどを補うことができました。しかし、現在の国債の金利は0.05%。21世紀になってからリタイアした世代は、先輩世代のように国債の利子に生活費の不足分を頼ることはできません。そこで注目されたのが、月々分配金を受け取ることができる毎月分配型投資信託だったというわけです。

■毎月分配型投信が「悪者扱い」されてしまいがちな理由とは?

 リタイア世代が毎月お金を受け取る仕組みとして、毎月分配型投資信託は優れていると私は考えています。しかし、冒頭で触れたとおり、毎月分配型投信はときに「悪者扱い」されることもあります。

 その大きな理由は、「複利効果が望めない」というものです。今の投資の考え方は、どちらかというと「複利効果を狙って資産形成をする」が主流となっています。毎月分配金を出し続けていると投資元本が増えていかず、「よくない」というわけです。

 しかし、毎月分配型投信はそもそも複利効果で資産形成を目指す商品ではありません。前述のように、リタイア世代が運用しながら取り崩し、定期的に分配金を受け取って豊かな生活を過ごすために向いている商品です。実際にはすべての投資家が資産形成のために投資信託を使っているわけではないのに、「資産運用=複利効果」というところにばかりフォーカスが当たってしまっていると感じています。

 「悪者扱い」される理由は、ほかにもあります。運用会社の企業努力によって、毎月分配型投信はこの20年の間に投資対象を増やし、最近では通貨選択型やコール・オプションを組み合わせたものなどラインアップを充実させてきました。それ自体はよいことですが、どうしても分配金を多く払うという方向ばかりに商品設計がいってしまったのではないかという点です。

 分配金が多いということは、裏を返せばそれだけ高いリスクを取っていることでもあります。そこから、「毎月分配型投信はリスクが高い」とネガティブにとらえられてしまったという面は大きいと思います。

■毎月分配型投信なら、ストレスなく資産を取り崩せるのが利点

 毎月分配型投信の分配金は、運用が順調であれば利益の中から支払われますが、運用が悪いときには元本を取り崩すことになります。たとえば、10年間同じ投信を保有していたとして、10年間の分配金がすべて利益から出ているというのは考えにくいでしょう。

  ただ、10年間定期的に分配金を受け取って、それを不足している生活費やレジャー費などに充てて豊かな老後を過ごし、結果として何割か減っていたということに納得できるのであれば、これほど便利な商品はないと私は考えています。何割か減った分というのは、貯蓄を取り崩しているのと結局は同じだからです。

 「それなら、最初から自分で貯蓄を取り崩せばいい」と考える人もいるかもしれません。しかし、私がこれまでお会いしたリタイア世代の多くは、自分で取り崩すのは難しいということでした。つまり、毎月分配型投信はリタイア世代の中でも、資産を自分で取り崩すことに抵抗がある人が、ストレスなくお金を使うための「仕組み」を買う商品だと言うことができます。

 また前述のとおり、国内投資信託の純資産総額の約4割は現在でも毎月分配型が占めています。それほど多くの人が、「悪い金融商品」を買っているはずはありません。商品性をよく理解して、毎月分配という仕組みが気に入って買っている人も大勢いるはずです。

■減配リスクを避けるには、分配金が高すぎないものを選ぶこと

 さて、毎月分配型投信を保有している人のほとんどは、分配金が目的で、安定的に払われることを望んでいると考えられます。そうであれば、やはり分配金が減額されにくい商品を選ぶことが重要です。運用である以上、「絶対に減配しない」とは言えませんが、次に挙げるような点に注目することで減配リスクはある程度減らすことが可能です。

 まず、分配金が高すぎないこと。大雑把に言うと、分配金が多いものほど高いリスクを取っている可能性が高く、状況が悪くなれば減配リスクが高まるからです。投資家側も、分配金は「なるべく高いもの」と考えがちですが、安定を好むのであれば「身の丈に合った」分配金を選びましょう。

 実は、毎月分配型投信を保有している人の中には、高い分配金を受け取ってその分配金を貯めて別の商品に再投資している人もいます。それは、分配金の本来の使い方とは言えません。投資に回すのなら、そもそもそこまで高い分配金は必要ないでしょう。生活費や旅行のためなど、自分はどのくらい分配金が欲しいのかを考えることも大切です。

 では、分配金の金額はどの程度を目安とすればよいでしょうか。分配金の原資は、投資対象資産の利子や配当金、あるいは売却益、為替差益といった利益からなっています。このうち、売却益や為替差益は不確定要素ですが、利子や配当金といったインカムゲインは確定要素です。私は、このインカムゲインが占める割合が高いほど減配リスクが低いと考えます。

 そして、今の金利水準から見ると、3ケタ(100円以上)の分配金というのは無理がある…つまりリスクが高いと考えています。具体的な金額は投資対象資産によって変わってくるとは思いますが、「安定」というキーワードでは、分配金は50~60円以下が目安になるのではないでしょうか。

■分配金に占めるインカムゲインが低すぎるものは見直しも検討

 先ほど、分配金の中で利子や配当金など確実に入ってくるお金の割合が重要になるという話をしました。この「分配金に占めるインカムゲインの割合」は、簡単な計算で概算値を知ることができます。すでに保有している商品、あるいはこれから購入を検討している商品については一度計算してみることをおすすめします。

 計算する際は、手元にマンスリーレポート(月報)を用意してください。マンスリーレポートには、投資元本に対する利子や配当収入の割合を示す「直接利回り(平均直利)」が掲載されています(掲載がない場合もあります)。この直接利回りに基準価額をかけると1年あたりのインカムゲイン、それを12で割れば1カ月分のインカムゲインがわかります。最後に、1カ月分のインカムゲインを毎月の分配金で割れば、分配金のうち利子や配当収入で賄われている割合が計算できるというわけです。

  この割合が10~20%台などあまりに低い場合は、分配金の健全性が高いとは言えません。将来の減配リスクを低く抑えたいと考えるなら、もう少しインカムゲインで賄われている割合の高い商品に乗り換えることを検討したほうが安心です。

■海外資産に投資する商品では、「為替ヘッジあり」を選ぶこと

 どの資産に投資する投信を選べば減配リスクが低いのか、そこが気になる人もいるかと思います。しかし、実は資産によってというよりも、運用成績に与える影響は為替の変動のほうが大きいのです。毎月分配型投信は、増配ラッシュと減配ラッシュを繰り返してきましたが、過去の減配の大きな理由となっているのは為替の変動と見て取れるからです。

 毎月分配型投信は海外の資産で運用しているものが大半で、海外資産は原資産の価格変動やインカム収入以上に為替の影響を大きく受けます。簡単に言うと、円安傾向なら運用成績にフォローとなりますが、逆に円高が続くと分配金の減額につながる可能性があるのです。もちろん、円安が続けばプラスに働きますが、安定的に分配金を受け取ることを重視するのなら、為替の影響を受けない「為替ヘッジあり」の投信を選んだほうがよいでしょう。

 ちなみに、国内の資産に投資する商品なら為替リスクは発生しませんが、ご承知のとおり日本は今マイナス金利政策を取っていて国内債券に投資してもほとんど利息は出ませんし、Jリートも今はあまりよい状況とは言えません。やはり、為替リスクを取らずに海外債券などに投資する商品を選ぶのが現時点ではよいと考えます。

 また、通貨選択型やコール・オプションを組み合わせたものなど、いわゆる「2階建て」「3階建て」のような複雑な仕組みの商品は基本的には控えたほうが安心です。通貨選択型の場合は、安定的な分配を望むなら「円コース」を選んでください。

■毎月分配型投信でも「分散投資」を検討する意味はある

 もうひとつ、分配金の減額リスクをトータルで下げる方法として、分散投資も検討の余地があるでしょう。毎月分配型に限らず投資信託は、あらかじめ決められた運用方針に沿った運用しかできません。相場の状況などが変わったとしても、途中で投資対象や運用のやり方を変えることはできないのです。そのため、1本の商品で万能なものというのはほとんどないと言ってよいでしょう。バランス型投信なら、「1本で万能」に比較的近いかもしれませんが、バランス型で毎月分配型というのは非常に少ないのが現状です。

 であれば、毎月分配型投信を保有する際にも分散投資を考えることは有効だと思います。投資対象の資産を分散させることで、全体として見たときに安定して分配金を受け取れる可能性があります。最初は1本で構いません、買い増すときなどには別の資産に投資する商品を選んでみるとよいでしょう。

 繰り返しになりますが、毎月分配型投信は現役世代には不向きです。現役世代は、毎月分配型投信での運用を考える必要はありませんし、もし勧められたとしても断わるべきです。しかし、資産を運用しながら取り崩してきたいと考えるリタイア世代にとっては、正しく使えば非常によい仕組みです。

 日本の公的年金は、偶数月にしか入金がありません。また、株式の配当金やリートの分配金も年に2回程度です。毎月のようにお金を受け取れる仕組みは、基本的には毎月分配型投信だけです。毎月いくらかの分配金を受け取るとかなり楽な気持ちになると、多くの高齢者の方から聞きました。ご自身で預金を取り崩すのが難しいというリタイア世代の方は、豊かな老後を過ごすための選択肢として毎月分配型投信を検討してもよいのではないでしょうか。



深野康彦(ふかの・やすひこ)
ファイナンシャルリサーチ代表

1962年生まれ。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。FP業界歴29年(2017年4月現在)を誇る。金融資産運用設計を研鑽して1996年に独立。現在の有限会社ファイナンシャルリサーチは2006年に設立(起業2社目)。さまざまなメディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、あるいは税金や年金などのお金周り全般についての相談業務や啓蒙を幅広く行っている。日本経済新聞夕刊「投信番付」のほか連載多数。BSジャパン「日経モーニングプラス」毎月1回出演。新聞・マネー雑誌、経済誌などへの執筆・取材協力および金融商品などのデータ提供を行いながら、テレビ、ラジオにも多数出演している。

 主な著書
『1万円から始めるETF投資』(日本経済新聞出版社)
『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)など多数

 新著
『55歳からはじめる、長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版)  
『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)



(取材・記事:肥後 紀子 / 撮影:柴田 潔 / 編集・制作:グッドウェイメディアプロモーション事業部)

(オリジナル記事掲載元:ネット証券4社共同プログラム「資産倍増プロジェクト」ネットで投信を買う!




13:13 | 写真:投資家向け




 

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