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2017/04/11

【モーニングスター】2016年の人気ファンドは?トランプ相場でどう変わった?最近のファンド動向を踏まえて、個人投資家が今考えるべきこととは~モーニングスター プロダクト開発本部ファンド分析部マネージャー 坂本浩明さんに聞く~(ネット証券4社協同プロジェクト)

| by:ウェブ管理者

■リートなどに投資する高利回りの毎月分配型が人気だった2016年

 2016年は、相場の変動が厳しい1年でした。そんな中、どんなファンドが人気を集めたのか、高いリターンを上げられたのはどのようなカテゴリーのファンドだったのか。この1年のファンドの動向と、直近で見られた変化についてお話したいと思います。


 最初に、2016年の純資金流入額上位10本のファンドを見ていきましょう。傾向を一言でまとめると、海外リート(不動産投資信託)の人気が高かったと言えます。1位の「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」の純資金流入額7189億円をはじめとして、10本中7本が海外リートのファンドでした。

 この背景には、2016年1月の日銀のマイナス金利導入決定があります。マイナス金利導入で利回りを得ることが難しくなる中、少しでも利回りの高いファンドに投資したいというニーズが高まってきたと言ってよいでしょう。また、3位の高配当株ファンドも、海外の高い利回りを狙うという点ではリートと共通しています。 

 そして、上位10本のうち、グローバルAIファンドを除く実に9本が毎月分配型というのも、大きな傾向として見て取れます。2014年にNISA(少額投資非課税制度)がスタートして、長期投資で分配頻度の低いファンドにシフトしていくといったことが言われましたが、現状はやはり高齢の方を中心に、年金代わりになる毎月分配型ファンドのニーズが高いということです。



■2017年1月に、大型リートファンドへの資金流入が減少した理由

 一方、2017年1月の純資金流入額のトップ10を見ると、状況は大きく変わっています。2016年の1年間では7本もあった海外リートのファンドが、ランキング上位からすべて姿を消してしまいました。理由のひとつは、昨年の後半から、毎月分配型の大型リートファンドで分配金の引き下げが立て続けに起こったことです。分配金の引き下げが嫌気されて、資金が流出しました。背景には、金融庁が過度の分配金支払いを問題視していることの影響もあると考えられます。

 また、もうひとつの理由としては、トランプ相場以降、米国の金利が上昇してきたことが挙げられます。金利上昇によりグローバルリートの利回り面での魅力が相対的に低下して、資金流出につながったと言えるでしょう。

 とは言え、毎月分配型ファンドが10本のうち8本を占めていて、高リスクの毎月分配型が資金を集めているという状況は変わってはいません。金融庁の方針もあり、過度な分配金を出すファンドは減っていくかもしれませんが、毎月分配型の人気はこれからも続いていくと考えています。年1回決算のファンドに、いきなり資金がどんどん入っていくという状況にはならないと考えます。

 さて、リスクの高いファンドが人気を集める中で注目したいのが、2016年の純資金流入額で6位、1月も2位に入った「円資産バランスファンド(毎月決算型)」です。名前のとおり、国内の株と債券、リートにだけ投資するファンドで、毎月決算型ではありますがリスクとしては低い部類に入ります。

 市場動向に応じて日本株とリートの比率を調整しますが、シンプルでわかりやすい点が評価されました。パフォーマンスもよく、モーニングスターのレーティングでは星5つとなっています。2016年の相場にはマッチした商品で、また2017年も年初から円高が進んだため、為替の影響を受けないところが好まれたと思われます。

 投資家の関心は相場状況に合わせて変わるため、こうした低リスクのファンドが常に評価されるとは限りません。積極的にリスクを取っていこうという局面では、バランス型でも海外資産に投資するようなものが選ばれる傾向にあります。しかし、相場が荒れた昨年のような状況では、分散投資の重要性が意識され、その中でこのファンドに資金が流入したと考えます。

■トランプ相場前は「為替ヘッジ付」のパフォーマンスがよかった

 続いて、投信のパフォーマンスを振り返ってみましょう。表の項目は、モーニングスターの投資信託の分類に基づくカテゴリーで、数値は各カテゴリーのリターンの平均値です。1年間の区切りですが、米国大統領選でのトランプ氏勝利以降、相場が大きく変わったため、この表に関しては2015年10月末~2016年10月末までで区切っています。

 この表を見てまずわかるのは、エマージングのパフォーマンスがよかったということです。この前年に原油価格の急落があってエマージング各国はその影響を受けましたが、そこからの反発局面になりました。投資家としては、「新興国がよかった」という印象はあまりないかもしれませんが、数値で見ると実はよかったんです。

 また、この期間は円高が進んだため、「為替ヘッジあり」のファンドのほうが総じてパフォーマンスがよかったということも言えるでしょう。国内株は全体的には軟調でしたが、「国内小型グロース」はリターンが2位となっています。小型株は内需系が多いため、大型株のように円高の影響を受けなかったことがプラスに働きました。また国内小型株の中には、バイオなどテーマ株関連で値上がりしたファンドもありました。

 ちなみに、表の中では、「国際株式・ブラジル(為替ヘッジなし)」のリターンが35.03%と突出していますが、これについてはエマージング全体の反発に加えて、大統領の弾劾といったブラジル関連の悪材料出尽くしからの戻りの局面だと言えるでしょう。

 リターンのワースト10では、「国際株式・欧州(為替ヘッジなし)」や「国際REIT・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」など、海外資産に投資する為替ヘッジなしのカテゴリーのパフォーマンスが総じてよくありませんでした。ワースト1位の「国際株式・欧州(為替ヘッジなし)」は-18.05%となりました。また、国内資産に投資するものでは、為替の影響を受けた「国内大型バリュー」、バランス型では株とリートの比率が高い「バランス・成長型」のパフォーマンスが悪かったですね。

■トランプ相場以降、好調なファンドの顔ぶれが大きく変わった

 では、トランプ氏が大統領選に勝利してからはどう変わったでしょうか。2016年11月以降の3カ月間のリターントップ10を見ると、顔ぶれが大きく変わったことがわかります。トランプ相場で円安が進んだため、国際株式の為替ヘッジなしのカテゴリーが複数上位に来るというわかりやすい結果になっています。トランプ相場で米国株が上昇しダウが最高値を付けたことで、北米はもちろん、それ以外の国際株式も上昇しました。 

 あと、バリュー系も好調でした。トランプ相場で流れが変わって、それまで割安に放置されていたところに物色が向かうようになりました。低金利で苦戦していたメガバンクなども、割安だったことに加えて日米共に金利が上がってきたことで大きく戻してきたと言えるでしょう。

 この中では、新興国で唯一「国際株式・ロシア(為替ヘッジなし)」が上昇している点が目を引きますが、これはおそらくトランプ大統領とロシアとの関係というところで見直し買いが入ったと考えています。

 逆に、1月末までの3カ月間のリターンワースト10では、「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジあり)」など海外の債券のマイナスが目立ちました。米国の金利が上がり、金利上昇はご存知のとおり、債券価格の下落につながるからです。

 日本も米国の金利上昇につられて金利が上がる動きとなり、それまで比較的好調だった「国内債券・中長期債」も、直近3カ月間ではワースト10位となりました。さらに、トランプ相場では円安が進んだため、為替ヘッジありのものはパフォーマンスが悪化しています。

 ところで、「為替ヘッジあり」のファンドに関しては、今後皆さんに注意していただきたい点がひとつあります。それは、ヘッジコストの問題です。これまでは日米の金利差がなかったため、ヘッジコストはあまりかかりませんでした。しかし、日本とヘッジ対象通貨の間の金利差が開いてくると、ヘッジコストが上昇してパフォーマンスの下押し要因になってしまいます。

 株に投資するファンドなら、リターンが大きければヘッジコストが多少上がってもそれほど影響はないかもしれません。ただ、もともとリターンの水準が低い債券のファンドでは、ヘッジコストが上昇する影響は小さくないと言えます。為替ヘッジ付ファンドを検討するときには、その点も気にしたほうがよいでしょう。

■不透明な中で重要になってくるのは「コスト」と「分散投資」

 ここまで純資金流入額とリターンから、ファンドの状況を振り返ってきましたが、総括すると非常に難しい相場だったと思います。2016年1月には、日銀が(導入はないと見られていたにも関わらず)マイナス金利の導入を決定。6月のブレグジット(EUからの英国離脱問題)も11月の米国大統領選も、大方の事前予想を裏切る結果となりました。

 さらに、トランプ大統領の誕生で相場は下がると言われていましたが、実際にはトランプ相場で株価は大きく上昇。このようにサプライズの連続で、プロでも当てるのは難しい1年だったと言えるでしょう。

 2017年も引き続き難しい相場が予想されます。では、その中で個人投資家はどのように投資信託と付き合っていけばよいのでしょうか。最もよくないのは、直近のリターンを参考に好調なファンドを買ってしまうことです。逆張り指標とまでは言いませんが、一旦上昇したものがその後、逆の動きをすることはよくあることです。たとえば、今回のデータを見てそのまま買うようなことは避けてください。

 私は、まずベーシックなところに立ち戻ることが重要ではないかと考えます。そのひとつはコストを考えること。具体的には信託報酬ですが、一昨年あたりから信託報酬の低いインデックスファンドが次々と登場しています。さらに、既存のインデックスファンドでも信託報酬を引き下げる動きが出ています。

 長期で運用すればするほど、信託報酬はファンドのパフォーマンスに影響を及ぼします。よく言われることですが、リターンは事前に予想できませんが、コストはあらかじめわかっています。コストを下げることで、確実にその分はパフォーマンスにプラスに働きます。

 また最近は、インデックス型だけでなく、アクティブファンドについてもコストを見直す動きがあり、たとえばピクテ投信では低コストにこだわったアクティブファンド、iTrustシリーズを出しています。もちろん、いきなり低コストのアクティブファンドが、世の中の主流になるようなことはないと考えますが、個人投資家の選択肢のひとつとして低コストのファンドが増えてくるというのは魅力的と言えるでしょう。

 ということで、ご自身がお持ちのファンドのコストを確認して、コストの水準を引き下げるような行動が可能かどうか検討していくことをお勧めします。

 もうひとつ見ていただきたいいのは、ご自身のポートフォリオが本当に分散投資できているのかということです。「分散できている」という方の中には、ハイ・イールドやリートなど実は高リスク資産ばかり持っている方が意外に多くいらっしゃいます。いくら分散しているつもりでも、高リスク資産に偏っていては相関が高くなるため、下がるときには全部下がってしまいます。同様に、保有しているファンドが「為替ヘッジなし」ばかりだと、為替の影響をフルで受けてしまいます。分散投資は「値動きの異なる資産同士を組み合わせる」のが大原則。値動きの違いを意識して、ご自身の資産を一度見直すことが大切です。

 その次の段階として、具体的にファンドを探そうということであれば、モーニングスターの投信検索機能も活用していただければと思います。カテゴリーやコスト、パフォーマンス、決算頻度などさまざまな項目でファンドを絞り込むことができますが、総合評価として使えるのが「レーティング」です。レーティングの高いファンドを絞り込んでいただくと同時に、できるだけ長期の運用実績があるファンドを選ぶのがよいと考えます。

モーニングスターのサイト内にある投信検索ページ。レーティングは、リターンとリスクの差から算出した数値をカテゴリー内のファンド群の中で相対的に評価したもの。上位10%以内が★5つ。 ※クリックするとモーニングスターの上記ページが開きます。

 運用実績の長いファンドのよい点は、さまざまな局面を経験しているということです。たとえば2008年のリーマンショック時や2012年末からのアベノミクスなどで、どのようなパフォーマンスを上げていたのかを見ることができます。モーニングスターのサイトでは、年ごとのカテゴリー平均に対して、そのファンドが勝ったか負けたかという情報も見ることが可能です。そうした情報から、下げ相場を乗り切って、上昇相場に転じたときにしっかりリターンを取っていけるファンドを選んでいただければと思います。

(取材・記事:肥後 紀子 / 撮影:柴田 潔 / 編集・制作:グッドウェイメディアプロモーション事業部)

(オリジナル記事掲載元:ネット証券4社共同プログラム「資産倍増プロジェクト」ネットで投信を買う!



16:03 | 写真:投資家向け




 

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