オンライン証券事業を中核とし、SBIマネープラザといった実店舗網も保有するSBIホールディングス傘下の証券会社・SBI証券と、投資信託ほか各種金融商品の中立・客観的な評価情報を提供するモーニングスターは、2013年8月31日(土)、NISA(小額投資非課税制度)のメリットとデメリットを正しく理解し賢く活用することをテーマとした個人投資家向けセミナーを新宿・京王プラザホテルで開催した。
軽減税率の終了に伴って、2014年1月から導入される新しい証券優遇税制であるNISAは、英国で普及しているISA(Individual Savings Account : 個人貯蓄口座)を参考にしており、1年間の投資金額100万円分までの株式投資や投資信託にかかる値上がり益や配当金(分配金)が非課税になるというもの。NISAについては既に広くその概要や仕組みについて報道されているため、ここでの詳しい説明は割愛したい。今回主催したモーニングスターもNISA特設サイトを開設して様々なNISA関連情報を提供しているので、詳しくは、そちらを参考にされたい。
今回のセミナーの主なテーマは、大きなメリットを享受できるNISA制度のメリットとデメリットを正しく理解し、賢く活用することを学ぶこと。会場には残暑厳しい中、およそ250名もの個人投資家が来場し、熱心に講演に耳を傾けた。
講演は午前と午後の部(いずれも同じ内容)の2回に分けて行われ、基調講演には東京大学大学院 経済学研究科 教授 伊藤 元重 氏が登壇、「世界から見た日本経済、今後の行方」と題した講演を行った。
国際経済学、ミクロ経済学を専門とする経済学者でもある伊藤氏は、税制調査会委員、復興推進委員会委員長、経済財政諮問会議議員等の重職を務め、政府審議会ならびに首相の諮問機関など政策の実践現場でも多数の実績を有するほか、経済学、ビジネスに関する多くの解説書も出版している。また、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」のコメンテーターとしての出演、日本経済新聞や様々なビジネス誌・経済誌への寄稿もおこなうなど、多方面で活躍する著名な経済学者だ。
伊藤氏 曰く、ポイントは、これまでと違い長期国債を大量に購入したことで背水の陣をかまえ、簡単にはExitしないというコミットメントを示したこと。そして、第三の矢となる”(民間投資および個人消費を喚起する)成長戦略”の重要エリアとして、①電力、②TPP、③女性の活躍を挙げ、今起きている危機やリスクをチャンスと捉え、ソフトバンクの孫氏の言葉を引用しながらリスクをとって成長を目指していくことが日本にとって重要であるとした。
基調講演の休憩時間には、会場後方に設置された各協賛企業のブースに多くの人が訪れ、投資信託に関する様々な質問を投げかけ、商品の説明を受けるなど賑わいを見せた。なかにはノベルティグッズを受け取るため、長蛇の列ができたブースもあった。
そして、投信運用会社による特別講演(2社)が行われた後、最後はファイナンシャル・プランナー 花輪 陽子 氏とモーニングスター 代表取締役社長 朝倉 智也 氏による特別対談「NISAを使った賢い資産運用術とは?」。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、NHK「ドラクロワ」などにも出演し、『夫婦で貯める1億円!』など著書多数の花輪氏と朝倉氏による対談では、単にNISA制度のメリットのみを理解して投資するのではなく、デメリットについても正しく理解した上で制度をうまく活用する方法について、実践的な説明が行われた。
また、一人一口座のみとなるNISA口座は当初4年間は他社に変更できないため、NISA口座開設時のチェックポイントとして、①提供商品のカバレッジ、②手数料などコストインパクト、③使い勝手、などを挙げた。また、新規の投資のみならず、既に保持している金融商品についてこのNISAの活用の機会にどのようにリバランスすべきか、目標と期間を定めることで年間利回りを重視したポートフォリオを構築することの重要性に触れた。
NISA制度の報道がまだ今ほど多くなかった2012年11月2日、日本証券業協会は日本版ISAの手本となった英国のISA(Individual Savings Account)の実施状況等について「英国のISAの実態調査報告」として報告書を公表している。(当日のグッドウェイ・ニュース配信記事)
要約によれば、英国のISA は1999年に個人持株制度と免税特別貯蓄口座を整理・統合することにより導入され、現在では幅広い英国居住者に利用されており、非常に人気が高いブランド化された貯蓄・投資に係る制度として認知されているという。その要因としては①長期にわたる当局のコミットメント、②制約が少なくシンプルであること、③官民の協働によりブランド化されたこと、が挙げられている。
また、英国居住者については、確定申告などの手続を行わずとも利益が非課税となるメリットのほか、年間の拠出限度額は翌年に持ち越せないため「利用するか、無駄にするか」の観点から、取りあえずはISAに資金を拠出するという動きも多いという。英国証券業者等においては、税務年度末までにISAの申込を行わなければ、非課税メリットを享受できないというカウントダウン効果を利用し、1月から4月初旬までのISAシーズンに集中したマーケティングも実施している。
示唆に富んだこうした取り組みを参考に、NISAも単なる軽減税率の代替措置としてのみならず、当初10年の予定が恒久的な制度となった英国のように、国民に根ざした制度となっていけるかどうか、今後の官民の取り組みが注目されるところだ。
(取材:藤野 宙志、柴田 潔 / 撮影、記事、編集・制作:柴田 潔)
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