日本銀行は、来年度株主総会に向けて、金融機関自らが必要と考えるガバナンス改革の検討を進めるよう「金融機関のガバナンス改革」フォローアップ・セミナーを開催した。
日銀は昨年4月に高度化セミナーを開催し、金融機関にグローバル・スタンダードを踏まえたガバナンス改革を促していた。今回は、3つのテーマで講演・パネル討議を行い、先進事例の紹介や実務上の課題について検討を深めた。2日間にわたる大規模セミナー開催は今回がはじめて。全国から上場銀行・証券の関係者ら約300人が参加した。
初日は、「攻め」と「守り」の強化、中長期的な企業価値向上を実現するため、取締役会の「モニタリング・ボード」への移行をテーマに議論。
池尾 和人 慶応大学教授(金融庁・東証フォローアップ会議座長、日本金融監査協会・顧問)は「日本の銀行はコーポレートガバナンス・コードの趣旨とバーゼル銀行監督委員会「ガバナンス諸原則」の双方を満たす必要がある」と指摘。社外取締役を選任するだけでなく、モニタリング・ツールとして「リスクアペタイト・フレームワーク」(RAF)を導入し、専門職化された内部監査部門を社外取締役の指揮下に置く必要がある。そのため、少なくとも「国際標準の監査等委員会設置会社への移行は不可避的」とした。
川本 裕子 早稲田大学教授は「多様な取締役によるチーム・プレーによるモニタリング」の重要性を強調、フィデア・ホールディングス 里村 正治社長は、国際標準のガバナンス態勢の下で「経営トップこそ、チェック・アンド・バランスに心掛けるべき」と述べた。エゴンゼンダー 岩田 健一氏は、「取締役会評価によるPDCA、指名委員会による経営トップの選任と人事制度の改革」などが今後の課題とした。
2日目は、「RAFの導入」と「内部監査の独立性・専門性の確保」をテーマに、先進的な実践事例の紹介にもとづき、実務上の課題に関する議論が行われた。三菱UFJフィナンシャル・グループ、東京海上グループ、滋賀銀行がRAFの取り組みを紹介。また、日本の銀行では、最も国際標準に近いガバナンス態勢をとるりそなホールディングスと第三銀行の2行が社外取締役の実質的な指揮下で内部監査を実施する方向で態勢強化していることを、また、新生銀行は内部監査人の専門職化を進め、監査機能を強化していることを紹介した。
なお、当日参加した銀行・上場会社96先に事前アンケートを実施。1月初時点で、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社へ移行済み、今後、移行を予定・検討中の先を含めると3割を超えることが分かった。「日本独自の監査役設置会社から国際標準のガバナンス態勢への移行は今後も大きく進み、過半を超えるのも遠くない」見通し。
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