2013年12月5日(木)、クラウドファンディングに特化した日本初の証券会社である日本クラウド証券は、貸付型クラウドファンディングサービス「クラウドバンク」の営業を開始することに伴い、東京・六本木の本社にいて報道関係者向け説明会を開催した。
クラウドファンディングとは群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、インターネットを活用した資金需要者の資金ニーズと小口資金拠出者をマッチングするプラットフォームを提供するサービスを指し、一般にそのモデルは「寄付型」、「購入(報酬)型」、「貸付型」、「ファンド型」「株式型(エクィティ型)」の5つに分類される。
日本クラウド証券は、1997年7月に設立されたディー・ブレイン証券が2013年4月に商号変更。ベンチャー企業から成熟企業まで非上場企業への資金調達を円滑にすべく日本証券業協会がスタートさせた制度「グリーンシート」を活用した募集銘柄の取扱実績No1(募集全銘柄数148社中、140社で主幹事)の証券会社でもある。現在、日本国内でも様々な企業がクラウドファンディングに参入している中、同社によれば発表時点で証券会社(第一種金融商品取引業者)として“貸付型”クラウドファンディングに参入するのは国内初になるという。
先ず、記者会見に登壇した同社代表取締役 大前 和徳 氏より会社概要の紹介、クラウドファンディングのモデルや世界全体の市場規模(5,000億円 2013年見込み)とプレイヤー(米LendingClub、英ZOPA、など)およびクラウドバンクについて解説。続いて登壇したマーケティング戦略担当執行役員 藤田 雄一郎 氏によると、投資家は日本クラウド証券の証券口座を通じて「クラウドバンク」が提供する多種多様なテーマのファンドに投資することで、国内外の資金需要者を応援することで社会に貢献することができると共に銀行預金よりも有利な利回りが期待できるという。
今回、その第1号となる取扱い商品「新興国マイクロファイナンスファンド(ファンド規模 US 500千ドル程度、募集期間は2013年11月25日~12月18日)」では、マイクロファイナンス運用に特化したDeveloping World Markets (本社 米コネチカット州)との連携により、新興国の優良なマイクロファイナンス機関(融資先のひとつである カンボジアTPC)に融資を行うことで税引き前予想年間利回り5%(為替の影響などによる変動あり)と設定し、幅広く投資家が参加できるよう、最低投資金額は3万円、投資期間は約6ヶ月、分配金の支払いは3ヶ月毎にしたという。なお、同商品のスキームについては、営業者であるクラウドバンク・インキュラボが、募集取扱金融商品取引業者である日本クラウド証券が保有する貸付債権を買い取る形となる。
日本クラウド証券は、今回の「新興国マイクロファイナンスファンド」に続く新商品として、「中小企業支援型ローンファンド」、「不動産担保型ローンファンド 」、「代替エネルギー特化型ローンファンド 」、「中小企業向け担保型ローンファンド」、「新興国不動産担保型ローンファンド 」などの取扱いを予定しており、今後とも、監督官庁とも議論を進めながら多様なクラウドファンディングサービスを展開していくという。
2013年12月20日(金)、金融庁は、金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」(第11回)を開催、その報告案の中では、「日米の文化的差異による要因もあるものと考えられるが、我が国における起業や新規ビジネスの創出を活性化させていく観点からは、政策面において、アーリーステージの新規・成長企業に対するリスクマネーの供給を促進するための取組みを、これまで以上に幅広く展開していくことが重要である。」とし、投資型クラウドファンディングに係る制度整備に向けた検討を行い、その普及に向けた規制緩和や特例について法改正、および自主規制機関による適切な自主規制機能の発揮を進めていくという。
インターネットの普及により設備投資のハードルが下がり、以前に比べると起業しやすくなった外部環境をフルに活用すべく、創業初期の資金調達を可能とするクラウドファンディングのサービスの行方に注目したい。
(取材、撮影、記事: 藤野 宙志 / 編集・制作: 柴田 潔)