<デリバティブ市場拡大、市場急変ショック後の心得>
◎2011年4月4日(月)更新
2011年4月1日、東京金融取引所は、3月の「くりっく365」の取引数量は 1,587万0,475 枚(前月比 50.8%増)、3月の「くりっく株365」の取引数量は 19万6,286 枚(前月比 96.1%増)、また、2010年度の「くりっく365」合計の取引数量は1億2,343万2,149 枚(前年度比 53.6%増)、2010年度の「くりっく株365」合計の取引数量は44万7,814 枚となったと発表した。
2011年4月1日、大阪証券取引所は、3月の「大証FX」の取引数量は 113万7,558 単位(前月比 64.1%増)、3月の「日経225先物」の取引数量は 352万1,832 単位(前月比 152.4%増)、3月の「日経225先物mini」の取引数量は 1,807万9,706 単位(前月比 109.2%増)、また、2010年度のデリバティブ取引高は2億1,440万8,892 単位(概算対前年度比 25.5%増)と初めて年間2億単位を超え、2002年度から8期で約10倍の市場規模に拡大、イブニング・セッションの対日中取引比率は23.3%と年度ベースで初めて20%を超えたと発表した。
2011年4月1日、大和証券は、3月の取引所FX「ダイワ365FX」の取引数量は 297万5,855 枚と過去最高となり、2010年度下半期(10月~3月)の取引数量シェアが 21.21 %となったと発表した。口座を持つすべての顧客を対象とした取引手数料割引キャンペーン『みんな割引』を延長し、2011年5月31日まで(1 枚あたり52円(税込))で提供するという。
これらデリバティブ商品の取引は市場規模の急拡大が続いている一方、2011年4月1日、SBI 証券は、震後の市場変動に伴う、先物・オプション取引、株式信用取引および外国為替保証金取引にかかる顧客の決済損に関し、2011年3月期連結決算において約11億円程度の貸倒引当金を計上する見込みだと発表した。この顧客の決済損については、ひまわり証券(約80億円)、トレイダーズ証券で(約11億円)、岡三オンライン証券で(約18億円)、マネックス証券(約13億円)、カブドットコム証券(約39億円)、松井証券(約35億円)など各社で相次ぎ発生している。
それを受け、大阪証券取引所が毎週公表し週替わりで適用される先物・オプション取引に係る取引証拠金の算定根拠となる「プライス・スキャンレンジ」や証券会社が個別に設定する「掛目」が大幅に引き上げられ、多くの投資家は急遽、追加証拠金(追証)に備えた追加資金とポジション調整が必要となる事態が発生した。
ここで、証拠金の最低基準額「プライス・スキャンレンジ」についてもう少し詳しく見てみたい。
大阪証券取引所の「プライス・スキャンレンジ」の算出方法は過去4週の変動率1位と過去24週の変動率2位のいずれか大きいものと基準日(毎週最終営業日)の日経平均株価の終値を掛け合わせ30の倍数に切り上げた額が基準日の翌々週に適用される「プライス・スキャンレンジ」となる。今回の大幅な市場変動により、過去4週の変動率1位は(3月15日)、過去24週の変動率2位は(3月14日)となった結果、以下のとおり発表されている。
「日経225先物mini」
2011/04/04 (月)~2011/04/08 (金) 102,000円
2011/03/28 (月)~2011/04/01 (金) 99,000円
2011/03/22 (火)~2011/03/25 (金) 27,000円
2011/03/14 (月)~2011/03/18 (金) 27,000円
一方、東京金融取引所の株価指数証拠金取引「くりっく株365」の計算方法は、変動率ではなく清算価格の前日比(価格変動幅)をもとにしており、以下のとおり発表されている。
「日経225証拠金取引」
2011/04/04 (月)~2011/04/08 (金) 63,000円
2011/03/28 (月)~2011/04/01 (金) 63,000円
2011/03/21 (月)~2011/03/25 (金) 33,000円
2011/03/14 (月)~2011/03/18 (金) 27,000円
投資家にとって実際の取引に必要となる証拠金はこれに「掛目」の考慮も加わるが、「プライス・スキャンレンジ」に差があることも取引を行う上で知っておいたほうがよさそうだ。
個人投資家へのデリバティブの認知向上と普及に伴いレバレッジを効果的に活用した資金効率の高い取引を求める投資家も増えてきた一方、相場の動向次第では追証や強制決済などによる損失の拡大に対するリスク管理や備えをどうするか、取引所や証券会社の取引ルールをしっかり理解した上で取引するという原則をあらためて確認すると共に、発注時に想定を超えた市場の動きと照らした損失額の予測可能性を意識付けられる仕組みやロスカットの精度向上など、金融機関側で見直しの動きも出てきそうだ。今後の「プライス・スキャンレンジ」と「掛目」の推移や新たな投資家保護に向けたサービス内容の登場に注目していきたい。
(参考)
大阪証券取引所
日経平均株価グループに係るプライス・スキャンレンジ基準値
http://www.ose.or.jp/market/about_trading/span_parameter_setting
東京金融取引所
「くりっく株 365」証拠金基準額について
http://www.click365.jp/cfd/service/margin.shtml
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