<SaaS型モデルへのシフト、身軽な高度化と中身の把握>
◎2012年10月31日(水)
2012年10月30日、野村総合研究所(NRI)は、野村證券に対して、投資信託の販売会社と投信運用会社の間で投資信託の取引データや基準価額データ等の受け渡しを行うためのSaaS型ネットワークソリューション「FundWeb Transfer(ファンドウェブ・トランスファー)」の提供を10月22日から開始したと発表した。
投信運用会社については既に2012年6月までに全72社への導入が完了しており、現在FundWebを利用している200社以上の販売会社に対しても順次FundWeb Transferを導入していくことで、これまでFAXやe-mail等で行っていた連絡業務の効率化、投信販売に関わるオペレーショナルリスクを低減し、投資信託の運用会社と販売会社を結ぶ情報インフラとして、投資信託業界の発展に貢献していくという。
2012年10月30日、インターネットイニシアティブ(IIJ)は、ソニー銀行が取り扱う外貨預金の為替レート生成システムの基盤として、SaaS型のディーリングシステム「IIJ Raptor(ラプター)サービス」を提供し、2012年7月30日より運用を開始したと発表した。
IIJ Raptorは、一つのプラットフォームで、くりっく365、大証FX、店頭FXの3市場に対応した取引システムをSaaS型で提供するFXサービスで「投資家向け機能」「業務管理者向け機能」「ディーラー向け機能」から構成されており、それぞれの機能を自由に導入できるという。
2012年10月29日、ビリングシステムは、預貯金口座からSMBC日興証券に振込・振替が簡単・即時にできるサービスクイック入金サービスの提供を開始したと発表した。
これにより、インターネット決済サービス管理コストの低減および業務の効率向上を図ることができるという。
技術革新に伴うセキュリティー対策の高度化、免震対策、制度対応、インフラ資源の有効活用、インターネットサービスの24時間化による運用監視など、金融サービスや業務運用を取り巻く環境は、以前より広い範囲で責任が求められている中、ビジネスライフサイクルに応じた期間とコストの最適化という板ばさみの課題を抱えており、その結果としてSaaS型モデルへの業務基盤のシフトにより、身軽な業務システムの導入と高度化が進んでいる。一方、SaaS化が広がることでその仕組み仕掛け構造および運用実態の多くがブラックボックスしてしまう懸念もあり、金融サービスの事業提供主体の中身への把握・熟知度合いの衰退が課題となる恐れもある。付加価値の高いサービス資源を有効に活用していきながらも、サービスに対する事業主体の一定の理解度を維持し、ビジネスモデルの変革への発想を欠如させないナレッジシェアの仕組みづくりとその取組みにも注目していきたい。
-以上-