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2015/08/27

【ファイナンシャルリサーチ】深野 康彦さんに聞く、これからNISA(少額投資非課税制度)で投信への投資を始めよう、と考えている人へのメッセージ(ネット証券4社資産倍増プロジェクト)

| by:ウェブ管理者


 NISA(少額投資非課税制度)がスタートして2年目ですが、NISA口座の稼働率はようやく5割を超えた程度。半分は、まだ口座を開いただけです。また、2年目になって新たにNISA口座を開設する人が増えているかというと、特にそういう印象もありません。

 NISAの裾野をもっと広げるには、今まで投資をして来なかった層をいかに取り込んでいくかが、これからの課題だろうと感じています。

 私は、NISAという支援制度ができたことに限らず、最近は投資を始めやすくなったと考えています。まず、最低投資金額が少なくて済むようになりました。投資信託であれば、ネット証券の場合、500円や1000円といった1日の小遣いより少ない金額で購入できます。「投資はまとまった金額がないとできない」というのは、過去のことです。

 また、投資する際のコストも下がりました。ネット証券なら、ノーロード(購入時の手数料無料)の投信も増えていますし、株の取引手数料も手数料自由化以降、大幅に安くなっています。

 さらに、国がデフレ脱却を掲げて今年で3年目。基本的に物価は上昇傾向ですから、貨幣価値の目減りによる購買力低下を防ぐには物価の上昇以上に収益を上げる――つまり投資が必要になってきていると言えます。

 相場は上がり続けることはないので、この先どこかのタイミングでは株価が下落する局面もあるでしょう。そうなると、なかなか投資を始める気持ちにはならないものです。しかし、投資はこれからは生きていくための「たしなみ」と言ってもいいもの。できるだけ早く始めたほうがいい。だからこそ、NISAという制度ができたことをきっかけに、環境もいい今の時期に投資を始めることは非常によいことだと私は考えています。




■初心者が間違えがちな、NISAの「100万円」の非課税枠

そもそも「NISA」は、年間100万円(2016年からは120万円)までの投資から得られた利益が全額非課税になるという制度です。非課税投資枠は最大で500万円(100万円×5年)。注意したいのは、あくまで年間「100万円まで」投資できるというだけで、毎年100万円ずつ投資しなくてはいけないわけではないという点です。

 実は、初心者の方の中には「100万円×5年分=500万円」を投資するものだと勘違いしている方もいらっしゃるようです。家計調査の最新データでは1世帯あたりの平均貯蓄額は1798万円ですから、もし夫婦2人の世帯で1000万円(500万円×2人分)をNISAで投資してしまうと、資産の半分以上がリスクにさらされてしまいます。

 「NISAは非課
税だから、投資したほうがいい」と、非課税のメリットに前のめりになり過ぎず、自分の資産全体の中でどこまで投資に回せるのか、まずはそこをよく考えることが重要です。また、すでに投資経験がある人は、これまでの投資金額に加えて、さらにNISAで投資をしてリスクを取り過ぎていないのかを確認したほうがよいでしょう。


■利益を確定してこそ、NISAにはメリットがある 

 もうひとつ、NISAで忘れてはいけないのは、あくまで利益が非課税になるという点です。利益が出なければ、NISAのメリットはありません。逆に、損失を被った場合は、通常の株や投資信託の取引では可能な利益と損失の相殺(損益通算)ができませんから、デメリットしかなくなってしまいます。

 そのため、「NISAは損失に弱い」という意識を持っておくことが大切です。初心者にはなかなか難しいかもしれませんが、できるだけきちっと戦略を持って、どんなスタンスで投資をするのか考えていく必要があります。

 たとえば、投資期間。NISAは投資した年を含めて5年間、ロールオーバー(次の非課税期間への乗り換え)をすれば10年間、保有し続けることが可能です。そのため、「NISAは中長期に向く」と思っている人は少なくないでしょう。ただ、上がり続ける相場はないし、先ほど言ったように利益を確定しなければ非課税のメリットは受けられません。

 そこで、NISAで投資を始める初心者の人こそ、一度どこかで利益を確定して、非課税のメリットを実感してほしいと思っています。もし大きな利益が上がっているなら、NISAの2年目に売ってしまってもまったく構いません。利益確定で成功体験ができれば、お金が増えてうれしいのはもちろんのこと、さらなる投資のモチベーションにもつながり、結果的に長期でお金とうまく付き合えるようになるのではないでしょうか。

■NISA口座は、ネット証券に開くのがよい理由

 さて、NISA口座は、1人1金融機関でしか開設できません。今年から、その年にNISAの取引をしていなければ、1年ごとに、金融機関を移すことも可能になりましたが、変更するとロールオーバーができない可能性があるなど、使い勝手は悪くなります。

 では、どこにNISA口座を開けばいいかというと、私のおすすめはやはりネット証券ですね。なぜかというと、まず証券会社はNISAで取引可能な商品が多い。投信のほか、ETFやREITを含めた日本株、外国株などを扱っていますが、銀行にNISA口座を開いた場合は投信しか買えないからです。

 また、証券会社の中でもネット証券なら、自分のパソコンやスマートフォンがそのまま「支店」になって、場所や時間にとらわれず、いつでも情報を収集したり注文を出したりできます。「隙間時間」の効率的な利用が可能になります。

 投信に関して言えば、ネット証券は取り扱い本数が非常に多く、さまざまなタイプの投信が揃っています。投信の絞り込み検索機能もあり、商品ごとの詳しい評価などを確認しながら希望に合った商品を選べるのがメリットです。

 サイトの情報を活用するには一定の知識があることが前提で、まったくの初心者にとっては、豊富な商品や情報の中から自分で選ばなくてはならないのは、ややハードルになるかもしれません。とは言え、能動的に動きたいと考える人にとっては、ネット証券ほど生活に密着した金融機関はないと言ってよいでしょう。 

■投資対象が広く、小口から買え、一部だけ売れるのが投信のよさ

 ネット証券でNISA口座を開いた場合、先ほどお話したとおり、投資信託のほか株式も取引の対象になります。その中で、特に投信のよさとしては、投資対象の広さと少額資金から投資できる点が挙げられます。

 投信は、株、債券、REIT、商品指数など非常に幅広い資産が投資対象で、投資地域も日本だけでなく、先進国、新興国、あるいはひとつの商品でそれこそ地球儀全体をカバーできるものまであります。また、少額で始められることに加えて、積立投資がしやすいのもメリットと言えるでしょう。少額や積立投資なら、途中での方向転換もしやすい。

 売却時の使い勝手も、実は投信は優れています。株の場合は、1単元しかなければどんなに値上がりしても、売るか売らないかの二択しかありませんが、投信なら一部分だけを売ることもできます。たとえば、倍額になったら半分だけ売って元本を回収すれば、あとはどこまでも利益を追っていけばいいんです。この「分割売り」については、投信をすでに保有している人でも知らなかったりしますが、投信の持つスペックのよさですから、ぜひ覚えておいて欲しいですね。

■初心者は、上昇基調の日本株ファンドから始めるのもひとつの手

  新興国の中では、年内にも中国の経済成長率を上回るとみられているインドに注目しています。

 次に、投資初心者がNISAで初めに買うなら、という視点で投信を考えたいと思います。私がいつも初心者の方に言っているのは、「興味のあるものから始めればいい」ということですね。自分で興味を持った投信なら、月次レポートや運用報告書を読んで、自分から積極的に理解しようとするインセンティブが働くからです。

 それでも、何から買えばいいかわからないという人に提案するなら、今は日本株ファンドがいいのではないでしょうか。私は、日経平均が2万円を回復した今の相場環境と、NISAの運用期間が「5年」であることを考えると、素直に好調な日本株のファンド――たとえば、日経225やJPX日経400に連動するようなインデックスファンドを買うというのはひとつの手だと思っています。5年後に、ちょうど東京五輪が開催されるので、日本株はそれまでの値動きのイメージを持ちやすいでしょう。

 もちろん投資に「絶対」はありませんが、オリンピック前に狙い通り値上がりしたら、NISAの非課税の利益でテレビを買い替えて、より大型のテレビでオリンピックを見るとか考えてもいいかもしれません(笑)。

 また、ロールオーバーして保有し続けても構わないということなら、中長期で高い成長ストーリーが描ける新興国の株式に投資するファンドを買うのもよいでしょう。個人的には、新興国の中でも、年内にも中国の経済成長率を上回るとみられているインドに注目しています。

■NISAで「毎月分配型」を買うなら、複雑な仕組みのものは避ける

 投資のセオリーから言うと、国際分散投資が望ましいと言われています。たとえば、内外の株式や債券、REITなどに投資する「バランス型」と呼ばれる投信なら、1本で国際分散投資が可能です。

 ただ、「バランス型」は各社で資産の配分がまちまちなど、初心者には少々複雑でわかりにくい。興味があって仕組みがわかる人は、バランス型でも構いません。ただ、今まで投資をしていなかった人は、最初はもっとわかりやすいほうがいいと思うんですね。

 だから、最初は興味の持てる投信をひとつ買って、徐々に投資対象を広げて資産全体のバランスが整っていくことで、最終的に国際分散投資のポートフォリオが構築できればいいのではないでしょうか。

 また、値動きが安定していて初心者におすすめと言われることが多い債券ファンドは、今は控えたほうが無難です。世界的に債券市場はバブルっぽくなっていて、今後は一時的に売られる可能性があるためです。アメリカの利上げ動向を確認してから、買うかどうか決めても遅くないと考えます。

 ところで、NISA口座で買われている投信では、年金で生活するリタイア層を中心に「毎月分配型」も人気です。毎月分配金が支払われる投信は、長期で資産形成をしていきたい現役層には向きませんが、リタイア層であれば悪くはないと考えます。

 ただし、分配金については注意してください。分配金には、利益から出す「普通分配金」と元本を払い戻す「元本払戻金(特別分配金)」の2種類があります。普通分配金なら、NISAの非課税の恩恵を受けられますが、もともと自分のお金(元本)から出ている特別分配金ではNISAの意味がありません。


 そこで、毎月分配型の投信をNISAで買う場合は、なるべく「利益から分配金を出せる」投信を選んだほうがよいでしょう。分配金が高い投信は、分配金確保のために、信用リスクや為替変動リスク、金利変動リスクなど複数のリスクを取っていますが、思惑通りに動かなければ、逆に特別分配金になるリスクも高いと言えます。

 たとえば、「信用リスクは取るけれど、為替リスクはヘッジするタイプを選ぶ」といったように、取っているリスクが少ないものを選ぶことで、ある程度、基準価額のブレを抑えて安定した収益を得られるのではないかと考えます。






深野康彦(ふかの・やすひこ)
ファイナンシャルリサーチ代表


1962年生まれ。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。FP業界歴27年(2015年4月現在)を誇る。金融資産運用設計を研鑽して1996年に独立。現在の有限会社ファイナンシャルリサーチは2006年に設立(起業2社目)。さまざまなメディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、あるいは税金や年金などのお金周り全般についての相談業務や啓蒙を幅広く行っている。日本経済新聞夕刊「投信番付」のほか連載多数。新聞・マネー雑誌、経済誌などへの執筆・取材協力および金融商品などのデータ提供を行いながら、テレビ、ラジオにも多数出演している。

主な著書:『これから生きて行くために必要なお金の話を一緒にしよう』
     (ダイヤモンド社)
     『会社が傾いても自分だけは大丈夫病』(講談社)
     『あなたの毎月分配型投資信託が危ない!』(ダイヤモンド社)
     『1万円から始めるETF投資』(日本経済新聞出版社)など多数



(取材・記事:肥後 紀子 / 撮影:村上 遥 / 編集・制作:グッドウェイメディアプロモーション事業部)

(オリジナル記事掲載元:ネット証券4社共同プログラム「資産倍増プロジェクト」ネットで投信を買う! )




15:25 | 写真:投資家向け




 

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