1.日本クラウド証券株式会社(以下「当社」という。)に対する検査の結果、以下の法令違反の事実が認められたことから、証券取引等監視委員会より行政処分を求める勧告が行われた。(平成27年6月26日付)
(1)分別管理を適切に行っていない状況
当社は、グリーンシート銘柄(日本証券業協会により創設された、非上場株式等の取引制度に基づく銘柄)の売買等及び募集の取扱いに係る業務(以下、当該行為に係る業務を「第一種業務」という。)並びに匿名組合の出資持分に係る募集の取扱いに係る業務(以下、当該行為に係る業務を「第二種業務」という。)に関し、顧客から金銭の預託を受け(以下、当該金銭を「顧客預り金」という。)、業務システムを使用して両業務に係る顧客預り金の管理を行うとしていた。
しかしながら、当社経営陣は、法令遵守の意識が不十分であったことから、顧客預り金を正確に算定するために必要となる社内規程や業務システムを整備するなどの内部管理態勢を構築しないまま、第一種業務及び第二種業務を運営していた。
このため、当社は、下記ア及びイのとおり、第一種業務及び第二種業務に係る顧客預り金残高を正確に把握できておらず、遅くとも第二種業務を開始した平成25年12月10日から検査基準日(同27年2月24日)までの間、顧客預り金について適切な分別管理ができていない状況を継続させていた。
ア 第一種業務に関し、業務システムへの入力作業において多数の遅延等を発生させているところ、それらの補正を完了させておらず、顧客預り金残高を正確に把握していない。
イ 第二種業務に関し、上記アと同様に業務システムへの入力作業の遅延等に係る補正を完了させていないほか、顧客の出資金を匿名組合の営業者名義の銀行口座に送金するまでの間、当社銀行口座に滞留させている状況にあるにもかかわらず、顧客預り金として管理すべき金額に含めていない。
当社における上記(1)の状況は、金融商品取引法第43条の2第2項に違反するものと認められる。
(注)上記イの状況は、金融商品取引法第2条第8項本文に基づく金融商品取引法施行令第1条の8の6第1項第4号に規定する内閣府令(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第16条第1項第14号)に定める金融商品取引業から除かれる要件(第二種金融商品取引業を行う法人であって、資本金5千万円以上である者が、同法第2条第2項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利の募集の取扱いに関して、顧客から預託を受けた金銭を、同法第42条の4に規定する方法に準ずる方法により、当該金銭と自己の固有財産とを分別して管理するもの)を満たしていないため、当社が顧客から金銭の預託を受ける行為は、同法第28条第5項に定める「有価証券等管理業務」に該当することとなり、当該業務を営む第一種金融商品取引業者に課される同法第43条の2第2項に違反するもの。
(2)顧客に対し必要な情報を適切に通知していないと認められる状況
当社は、第一種業務又は第二種業務において成立した取引について、金銭の受渡年月日等を記載した取引残高報告書を業務システムにより作成し、四半期ごとに顧客に交付している。
しかしながら、当社は、取引量の増加等に伴い業務システムへの取引内容の入力遅延が発生したことにより、平成26年1月から同年9月までの3四半期において、第一種業務及び第二種業務について、金銭の受渡しに係る事項を正確に記載していない取引残高報告書を交付しており、受渡状況等につき不適切な情報を顧客に通知している。
当社における上記(2)の状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第8号に掲げる「顧客の有価証券の売買その他の取引等に関し、受渡状況その他の顧客に必要な情報を適切に通知していないと認められる状況」に該当するものと認められる。
2.以上のことから、本日、当社に対し、下記(1)については金融商品取引法第52条第1項の規定に基づき、下記(2)については金融商品取引法第51条の規定に基づき、以下の行政処分を行った。
(1) 業務停止命令
1]平成27年7月10日から平成27年10月9日までの間、匿名組合の出資持分の募集の取扱い業務のうち、新規の勧誘を伴う業務を停止すること。
2]平成27年8月10日から平成27年10月9日までの間、グリーンシート銘柄の売買等業務のうち、新規の勧誘を伴う業務を停止すること。
3]平成27年7月10日から平成27年10月9日までの間、匿名組合の出資持分の募集の取扱い業務及びグリーンシート銘柄の売買等業務以外の金融商品取引業に係る新規の業務を行わないこと。
(2)業務改善命令
1]本件法令違反の状況について、システムの見直しを含む抜本的改善策を策定し、平成27年10月9日までに実施すること。
2]金融商品取引業務を適切に行うための経営管理態勢、業務運営態勢及び内部管理態勢を整備すること(本件に係る責任の所在の明確化を含む。)。
3]正確な顧客預り金残高を早急に把握し、全顧客に対して、本件経緯を説明のうえ残高照合を行うとともに、顧客分別金信託額の適切な管理を行うこと。
4]当社が取扱会員となっているグリーンシート銘柄の発行会社と今後の対応について早急に協議し、発行会社の意向を最大限尊重した措置を講じること。
5]上記1]~4]について、その対応・実施状況を平成27年9月25日まで(上記1]の改善策に係る実施計画については、平成27年8月3日まで)に書面で報告すること。
原文はこちら
http://kantou.mof.go.jp/rizai/pagekthp032102500.html