先日開催されたFXウィークUSAカンファレンスにおいて、何度も取り上げられたテーマは、FXトレーディングプラットフォームの増加だった。 少なくとも8つの新しい取引プラットフォームが、過去数か月の間に発表された(Tabbフォーラムの“Is FX Hot? The Marketplace Says Yes”より)。 これは果たして良い事なのだろうか? 人々の見解は分かれる。
“The Changing Frontier in FX Trading” というパネルディスカッションで、何人かの参加者はプラットフォームのこのような増加傾向は、持続不可能であり、流動性にネガティブなインパクトをもたらすと言及した。 他の参加者は、それぞれのプラットフォームは独自の価値提供を謳っており、新しい市場参加者をFX市場に引き寄せることにより、市場全体の流動性を増加させることになると感じている。 講演者の一人は、プラットフォームの増加により、FXのような店頭市場において、流動性を発見することを更に困難にするのではないかと言及した。 プラットフォームのいくつかは、ある特定の市場参加者グループを引き寄せるように特化しているように見える。
私はFX市場を、グレート・バリア・リーフ(オーストラリア北東岸に広がる世界最大のサンゴ礁地帯)のように、生命体が織りなすエコシステムとみなすことができると考えている。 私がグレート・バリア・リーフでダイビングをした時、一番印象的だったのはあらゆる種類の生物が自然によって課された己が目的のために生存しながら、同時に共存しているその多様性だった。 このような多様性の力が、グレート・バリア・リーフを世界最大の生命体による構築物にしたのだ。
同様にFX市場は、シングル・バンク・プラットフォーム、ECN、顧客向けのカスタマイズされた取引プラットフォームなど、生命体(私達)によって築き上げられた複雑な構築物である。 これは異なった生命体(取引市場・プラットフォーム)が、「礁」に根付こうとする進化の過程と言える。 ここで質問として、彼らは生き残ることができるだろうか? 生物界と同じように、全てが生き残ることは無理だろう。
市場が生き残っていくためには、当然顧客が必要だ。 顧客にとって多様性というのは、すばらしいことだが、同時にあらゆる流動性のソースにアクセスできるかどうかが鍵になる。 つまり、銀行や他の市場参加者は、今まで以上に更に多くの流動性を提供するソースと接続する必要に迫られることになり、市場の分裂や統合のサイクルが、すでに稼働限界となりつつある、対外接続チームやITチームに更に負荷をかけることになる。 多くの新しいプラットフォームにとって、顧客や銀行を接続し終わる頃には、勢いをなくしているということになりかねず、この要因がプラットフォームのリスク要因となる可能性が高い。
奇妙なのは、対外接続インテグレーションのパイプラインの滞留の原因はテクノロジーではないということだ。 ほとんどのプラットフォームはFIXプロトコルを採用しているし、FIXによる接続は容易だ。 しかし、実際には新しいプラットフォームとの接続には、様々な困難が付きまとう。 IT側にはキューがあり、一つの変更はそれに関連するワークフローの変更が必要となり、慣習は変更を困難にすることもある。 また、たとえトレーダーが新プラットフォームに対して魅力を感じて利用したいと願っても、ITリソースを確保できなければ、そのプラットフォームを利用することはできない。 いずれにせよ、ほとんどの組織において、外部接続は時間がかかる。 これは質問に値する: 外部接続のパイプラインをもっと効率良く運用する方法はないのだろうか?
いくつかの銀行は、すでに彼らの外部接続機能をアウトソースし始めている。 FX SpotStreamはその一例だ - 単一のAPIで複数の流動性プロバイダへのアグリゲーションとアクセスを提供している。 スマートトレード社のLiquidityFXは別の例だ。 スマートトレードのようなベンダに接続とワークフローを任せることにより、市場参加者は新しいプラットフォームへの接続をより早くより確実に行うことができる。
FXエコシステムの中で誰が生き残るのか、それは誰にもわからない。 ただ言えるのは、「顧客」がいる限り異なるFXプラットフォームが共存することができるということだ。
Peter Atkinson,
FX Product Manager,
SmartTrade Technologies
ピーターは、FX Eコマースのスペシャリストです。 彼の経験は、いくつかの投資銀行における低レイテンシープライシング、マーケット・メイキング、トレーディングおよびリスク管理機能などの提供によって、培われてきました。
彼はビジネスとシステムの両方に明るく、30人以上の世界各地域に散らばった開発チームとの連携で仕事をしてきました。 彼の得意な分野は、金融機関のアーキテクチャに対する現実的なアプローチをすることにより、ビジネスとしての結果にフォーカスすることです。
彼は、金融市場におけるクロス・アセットのフロントからバックオフィスまで、フロー商品(FX、株式、債券)のみならず複雑な商品(金利デリバティブ、エクイティデリバティブなど)の各分野で経験があります。
◎コラムの原文
http://www.smart-trade.net/blog/biodiversity-and-the-fx-ecosystem/