アジアを中心に日本企業の海外進出・国際化が進むなか、本社・現地間の会計・税務管理はいかにあるべきか?
IIJグローバルソリューションズと東洋ビジネスエンジニアリングは2017年5月18日(木)、東京・飯田橋グラン・ブルームにあるIIJグループ本社会議室で「GLASIAOUS 第3回 合同ミーティング」を開いた。
GLASIAOUS(サービス紹介:IIJグローバルソリューションズ、東洋ビジネスエンジニアリング)は日本企業の海外現地法人向けに、クラウドサービス「IIJ GIOサービス」上に構築された会計情報プラットフォームを使用し、世界各国の会計事務所が顧客の海外現地法人の会計業務を代行する会計/税務のアウトソーシングサービス。本会議はGLASIAOUSの立ち上げをリードしてきた会計事務所の取組状況や、GLASIAOUSの事業構想/製品構想などを共有した上で、国際会計事務所を横断化したサービスの実現可能性を探るために開催されている。
※IIJ GIOサービス
インターネットイニシアティブ(IIJ)が提供するクラウドサービス。東洋ビジネスエンジニアリングは2015年度IIJ GIOパートナーアワードを受賞しており、IIJグローバルソリューションズと共同でGLASIAOUSを展開している。
IIJグローバルソリューションズ 営業本部 事業開発部 サービス&ソリューション推進グループ グループリーダー 中馬 直哉氏の進行のもと、今回で3回目となるGLASIAOUS合同ミーティングではまず、東洋ビジネスエンジニアリング常務取締役の羽田 雅一氏が挨拶に立ち、会議のアジェンダである「①我が国を代表する国際会計事務所とIT企業が一堂に会する意味・意義」、「②会計事務所間の連携上の課題と展望 」、「③IT技術を背景とした次世代コラボレーションによる解決策」について紹介するところから始まった。
続いて当日参加した各事務所・企業の紹介、初参加事務所・企業の紹介が行われた。
続いて、名南経営グローバル・パートナーズ 代表取締役 佐分 和彦氏をモデレーターに①我が国を代表する国際会計事務所とIT企業が一堂に会する意味・意義についてプレゼンテーションが行われた。
NAC Global グループ 代表取締役社長 中小田 聖一氏は海外展開を図る日系企業の現状と環境について、「チャイナプラスワン」の動きは一段落し、横並び進出から国内回帰・海外展開を再考する動きが広がっていることを指摘。そうした中でも、急速な海外事業拡大に管理体制が追い付かず、海外子会社のリスクが増していると述べた。また、グローバル人材の不足は依然として解決されず、特に会計業界では人材不足が目立つとした。
辻・本郷税理士法人 マネージングディレクター 佐藤 洋史氏は同社が進出しているタイ、カンボジア、ミャンマー、バングラディシュの4カ国について、各国の発展段階の相違とその対応策を解説した。さらに、会計事務所の役割として現地の会計・税務情報を提供する際の現地語の重要性を指摘した。これは英語での情報提供は翻訳に時間を要するためだ。また、現地子会社の財務状況を本社へ報告する際にGLASIAOUSによる日本語での情報提供が大きな役割を果たすことを明らかにした。
インターネットイニシアティブ 金融システム事業部 FinTech推進室長の葉山 揚介氏はFinTechの概要と人工知能(AI)の事務作業への活用について紹介。意思決定・行動の繰り返しパターンがAIにより自動化される可能性について解説した。
「②会計事務所間の連携上の課題と展望」については朝日税理士法人 シニアマネージャーの高尾 英一氏が、会計事務所の差別化として海外進出支援は有力であるが、顧客の海外進出が直ぐに国内の業務につながらないため、新規開拓に消極的であることが課題であると述べた。また、全国の拠点代表者を集め、GLASIAOUSサービスに関する営業戦略を共有していること、海外拠点との連携時の問題点として勘定科目の違い、月次を締める概念が希薄なことなどが指摘された。
「③IT技術を背景とした次世代コラボレーションによる解決策」についてはBDO税理士法人 統括代表社員の長峰 伸之氏が、7月に外部発表を予定している「GLASIAOUSコンソーシアム構想」についてクラウド型国際会計サービスのデファクトスタンダードを目指すと解説した。
同構想については東洋ビジネスエンジニアリング マーケティング部長の山下 武志氏が、コンソーシアムを支えるマーケティング施策を紹介。東洋ビジネスエンジニアリングA.S.I.A事業部長の関口 芳直氏とクラビス CTOの横井 朗氏がGLASIAOUSの技術基盤について解説した。
ここでは「①グローカリゼーション(グローバリゼーションとローカリゼーションを組み合わせた造語)に対応した機能基盤」、「②ユニバーサルデザインを基本」、「③クラウド、AI、APIエコノミーを実装」の3つの技術コンセプトが紹介された。
また、STREAMED連携による経営処理の自動化では国内2600の金融機関明細が取り込み可能なこと、各国からはインボイスや領収書をスキャナやスマホで取り込み、国内で確認、現地に均一品質で会計情報を即時フィードバック可能なことなどがデモンストレーションを交え、強調された。
続いてモデレーターを務めた名南経営グローバル・パートナーズ 代表取締役の佐分 和彦氏がGLASIAOUSによる地域金融機関との連携について解説した。
銀行冠のGLASIAOUSログイン画面を設置し、顧客了解のもとに海外子会社財務情報を会計事務所と共有し、顧客グループの与信管理を行う狙い。TV会議によるコミュニケーションの円滑化も予定されている。翻訳作業など事務処理の効率化とともに、事業性評価など金融庁重点施策への対応も視野に入れている。
続いて東京海上日動火災保険 グローバル営業グループ 担当部長の吉井 信雄氏がコンソーシアムと連携した海外現地法人支援として、中国、タイ、ベトナム、インドネシアの各国別に災害・事故、経営、政治・経済・社会のリスクについて紹介した。
第3回のGLASIAOUS合同ミーティングの最後にIIJグローバルソリューションズ執行役員の米村昭氏が参加への御礼と、コンソーシアムへの今後の関与を依頼して閉会の挨拶とした。
合同ミーティングが終了後は飯田橋グラン・ブルーム内のレストランで懇親会も行われ、参加者は情報・意見交換をしながら歓談時間を過ごした。冒頭でも紹介したが、GLASIAOUSのサービスの詳細については両社の紹介ページをご参照いただきたい。
・IIJグローバルソリューションズ
・東洋ビジネスエンジニアリング
(記事:丸山隆平 / 撮影、編集・制作 : GoodWayメディアプロモーション事業部 @株式会社グッドウェイ )