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2018/06/12

【金融庁】店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会(第4回)議事録を公表しました。

| by:ウェブ管理者
【池尾座長】  
 それでは、松井メンバーはちょっと到着が遅れておられるようですが、定刻になりましたので、ただいまより店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会第4回会合を開催いたしたいと思います。皆様にはご多用中のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
 初めに、今回の会合に参考人としてご参加いただく方を事務局よりご紹介していただきます。お願いします。

【御友市場業務監理官】  
 それでは、私からご紹介を申し上げます。メンバーの皆様方の右側にお座りいただいております、学習院大学大学院法務研究科教授の神田秀樹様です。

【神田参考人】  
 よろしくお願いいたします。

【御友市場業務監理官】  
 また、今回メンバーやオブザーバーの中に所属や社名の変更があった方がいらっしゃいますので、資料の中に資料1として、メンバー等名簿をお配りしておりますので、ご確認いただければと思います。
 以上でございます。

【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。私自身も所属が変わっております。それでは議事に移らせていただきます。
 本日は、引き続き、関係者からのヒアリングを行いたいと思いますが、前回、前々回に比べたらヒアリング時間は短目にして、その分、議論、討論のほうに時間を取りたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、まず時間の都合から、神田教授よりご説明いただいて、その内容についての質疑を先に行わせていただきたいと思います。その後、これまでのヒアリングの際にいただいたご質問に対するご回答を金融先物取引業協会の山﨑オブザーバー、それからセントラル短資FXの松田オブザーバー、東京金融取引所伊藤オブザーバー、それから三菱UFJ銀行星野オブザーバーからそれぞれ補足いただいて、その後、先ほど言いましたように、まとめて討論をしたいと思います。なお、討論に当たりましては、今回の分だけということではなくて、今回に限らず前回までのヒアリングの内容も踏まえて、できるだけ幅広く議論していただければと思っております。
 それでは、早速ではございますが、神田教授よりご説明をよろしくお願いいたします。

【神田参考人】  
 本日はこのような場にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。お手元に資料2として、私の意見の骨子というのでしょうか、レジュメを用意させていただきましたので、それに沿って、この分野で皆様方がご検討しておられると私が理解しているところに関する私の意見めいたものを申し上げたいと思います。皆様方の今後のご審議の参考にしていただければ大変光栄です。
 資料2をご覧いただきますと、最初に「問題があるとした場合におけるそれに対する処方箋」と書かせていただきました。時間の関係もあると思いますので、私はこの店頭FX取引について、仮に問題があるとした場合に、どういう制度的あるいはルール等による対応が考えられるかということをお話しさせていただきたいと思います。
 最初の項目ですけれども、システミックリスクという問題です。これを私が最初の項目に挙げさせていただきましたのは、この検討会の名称が「店頭FX業者の決済リスクへの対応」となっておりますので、おそらくこの観点が、少なくとも検討会が設置されたときには重要な観点だと考えられていたのではないかと思うからであります。
 このシステミックリスクの問題ですけれども、置かれている状況を一言で申しますと、現在の日本の店頭FX取引の市場規模等に鑑みますと、店頭FX取引が決済不能を起こしますとシステミックな問題を惹起する可能性を否定できないということではないかと思います。
 ではどういう対応が考えられるかということですけれども、処方箋の例といたしましては、業者に対する財務規制を強化する、そしてまたストレステストの頻度その他を強化するということで臨むということが考えられると思います。また、取引データ等の情報の協会や当局への報告義務を強化して、いわば早期是正措置というのでしょうか、必要な場合の措置等が発動されることを期待することが考えられるかと思います。
 3番目に、スワップ取引などのいわゆる店頭デリバティブ取引につきましては、G20やFSBにおける提言を踏まえて、日本でも金融商品取引法の改正が既に行われてきたところであります。そこでの処方箋を一部または全部、参考になる部分があれば、こちらにも適用するというか、採用するということが考えられると思います。詳細は省略させていただきますけれども、そこに書かせていただきましたように、電子取引基盤を利用する、それから取引情報の保存と当局への報告を求める、そして、CCPというのでしょうか、中央清算機関を通すか、あるいは通さないものについては証拠金を強化するということであります。
 具体的に最後の点について申しますと、FX取引の場合で言えば、例えばということですけれども、カバー取引についてCCPを通すということを求めるといったことが考えられるのではないかと思います。
 なお、システミックリスクの問題ですけれども、守るべきものは言うまでもなく金融システムであります。決して個々の業者ではないということは強調しておきたいと思います。
 次に、2番目の「ありうる問題」ですけれども、システミックな問題までは惹起しない場合であっても、仮に業者が破綻いたしますと、問題が生じ得るわけです。もちろん、業者さんには破綻していただきたくはないわけですけれども、この場合にも守るべきものは、これから申し上げますけれども、取引の履行の確保でありまして、個々の業者ではないということは、そこには書いていないですけれども、前提として申し上げておきたいと思います。
 よくこういう店頭取引は自己責任だということが言われます。ただ、一般に、自己責任という場合には、2つのことが区別されてしかるべきものと思います。第1は、その締結した契約が履行された場合における相場変動による損失であります。これが本来のいわゆる投資家の自己責任などと呼ばれているときのものだと思います。それとは別に、そこに②と書かせていただきましたけれども、締結した契約が履行されないことによる損失ということも起き得るわけです。すなわち、業者が破綻すれば、約束した取引は行われないわけですから、この2つは別でありまして、①のほうの損失は仮に自己責任と言えるとしましても、②のほうも自己責任だということになりますと、要するに「業者を選んだのもあなただから、その業者が破綻したら、あなたの自己責任です」と、簡単に言うと、こういうことになるわけです。そこにちょっと書かせていただきましたように、業者としては、「当社が締結する契約は履行されないかもしれません。そのことによる損害も当社が破綻したらとれません」というように、業者さんも一般にはこういう説明はされていると理解していますけれども、説明義務みたいなものを業者に負わせたとしても、ちょっとそれだけでは不親切ではないかというか、ルールということで言うと、やや不十分なような気がいたします。
 それで、どうしたらいいかということです。処方箋ですけれども、証拠金の保全ということはあるわけですけれども、それに加えて何らかの措置が必要なような気がいたします。
 2つ目の「・」に書かせていただきましたが、セーフティネット――補償基金制度みたいなものは、おそらく実現しないというか、現実的ではないと考えられますので、業者が破綻した場合であっても何事もなかったかのごとく取引が履行されるような仕組み、ポジションの移管とか、その他の方法で契約の履行が確保されるような制度の整備をご検討いただくのがいいように思います。
 なお、レジュメに書いていないのですけれども、ちょっと分別というか、証拠金の保全ということについて一言だけ補足させていただきます。証拠金が保全されていれば何か起きたときにそれが返ってくるという話ですが、ちょっと取引の履行とはイコールではなく、分野は異なりますが、リーマンのときの経験で2つのことが明らかになっております。釈迦に説法かとは思いますので、そうだったらお許しいただきたいですけれども、1つは、業者が司法上の倒産処理手続を開始した場合、例えば破産手続で言いますと、この分別管理をしていても、顧客の資産を顧客に返すという業務というか、行為をする人がいないという問題が生じます。破産の場合で言いますと、破産しますと、破産管財人が業者の経営管理権、財産管理権と言ってもいいのですけれども、を取得することになるのですけれども、破産管財人は通常、破産財団に属する財産について責任を持つので、分別されている顧客の資産はそれに属しない資産ですので、それを顧客に返すという仕事はなかなかやっていただけないというのがリーマンのときに起こったことで、リーマンのときは民事再生手続だったのですけれども、そういう問題があります。
 それから2番目に、この破産手続のようなものが開始した後に、店頭FXの場合はイコールではないのですけれど、リーマンの場合で言えば、例えば、デリバティブ取引が行われていて、その清算金みたいなものがリーマンに入ってきます。これが顧客の資産なのか、よくわからないという問題があります。より具体的に言うと、分別管理義務は倒産処理手続が始まった後も存続しているのか、すべきなのか、誰がそこの分別の業務をするのかという問題になります。やや細かくて恐縮ですけれども、ご参考までに、業者が破綻すると、いろいろ難しい問題が出てくるということであります。したがいまして、何事もなかったかのごとく、既に締結された契約あるいはその取引の履行を確保するということは、言うはやすく、実際にはあまり簡単ではないとは思うのですけれども、しかしお考えいただく一つの論点にはなるのではないかと思います。
 2ページ目に行かせていただきます。3番目ですが、段々とより基本的な話になっていって恐縮ですけれども、3番目の「ありうる問題」というのは、私もこの検討会の過去の資料とか議事録のうち公表されているもの等を拝見したのですけれども、個人顧客にとっての取引の不透明性ということがあると思います。状況を2つに分けてそこに書かせていただきました。1つは、業界の言葉ではマリーとかスリッページとかという言葉が使われているかと思いますが、より一般的な概念で言えば、バケットショップという概念がいいかと私は思っているのですが、要は顧客を相手方として自分が取引することが自由だというのがこの分野であります。そのためいろいろな懸念が生じているのではないかというのが私の理解です。
 それからまた非対称性が業者と顧客の間にありますので、その結果として不公正な取引が行われやすいという問題があろうかと思います。
 少し非対称性のところを具体的に、状況その2としてそこに書かせていただきました。1つは、取引価格は業者側が提示しますので、リアルタイムで、しかも顧客側の取引に応じて変動できるようなプログラムを自ら構築して取引を実行することができます。しかし、顧客側は、今の顧客側というのは個人顧客の話を想定していますけれども、そのようなプログラムの詳細な内容を知ることはできません。
 それから、2つ目の「・」ですけれども、業者側は顧客の全ての注文状況を把握できるため、顧客側には業者側の提示する仕組みや業者のポジションがわからないようなプログラムを使って取引を実行することができます。
 3つ目の「・」ですけれども、そもそも業者と顧客間の取引を実行するネットやコンピューター上のプログラムは業者がつくったものでありまして、それが透明で公正なものであるかどうかというのは、当局であってもなかなか把握しにくいということではないかと思います。
 ではどう対応するかということですけれども、もちろん、バケットショップを原則禁止するというアプローチもあり得るかとは思います。
 それから、2つ目の「・」ですけれども、プログラムや取引データ等の情報を協会や当局へ報告することを強化することにして、不公正取引のチェック体制を強化するということが考えられると思います。
 3つ目ですが、情報開示を強化するということが抽象的には考えられるのですけれども、個別の取引から業者が上げる利益の額を開示していただくというのが一番いいと思うのですけれども、ただ原価不明というか、これはなかなか実際問題としては業者さんには受け入れてはいただけないのではないかと思います。
 そういう中で、証拠金の強化ということは、多分理屈の上ではファーストベストにはならないのですけれども、やむを得ない規制として、この3番目の問題に対する対応としてもあり得ると言うことができると思います。
 大体以上ですけれども、4番目に、その他の「ありうる問題」として、1行だけ書かせていただきました。この種の取引は、射幸性というのでしょうか、そこに参照と書かせていただいた刑法の条文は賭博罪の条文です。抽象的に言えば、賭博ではないかという、根本論と言うとやや言い過ぎですけれども、論点は諸外国でも昔から、この分野だけではありませんけれども、金融分野の取引について指摘されてきたわけでして、この分野のルールのあり方を考える際にも基本的にこの取引の社会的有用性というのでしょうか、射幸性、賭博ではないのか、というあたりについては、ある程度共通の認識を持った上でご議論いただくことが必要ではないかと考えています。
 簡単ですけれども、以上、私の意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。


原文はこちら
https://www.fsa.go.jp/singi/otcfx2018/gijiroku/20180413.html

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