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2019/04/11

【三井住友トラスト・アセットマネジメント】「SMTアジア新興国株式インデックス・オープン」 1本でアジア新興国の成長を丸ごと取っていけるインデックスファンド ~「資産倍増プロジェクト」発のファンドの現状をレポート【4】~

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 三井住友トラスト・アセットマネジメントの「SMTアジア新興国株式インデックス・オープン」は、アジアの新興国に幅広く分散投資できるインデックスファンドだ。資産倍増プロジェクトの専用ファンドとして2011年11月に設定され、現在は同社の「SMTシリーズ」の中の1本となっている。同ファンドの直近11カ月の運用状況と運用の概要、さらに、米中貿易摩擦問題など気になる今後のアジア新興国の見通しを、古賀幸治郎・三井住友トラスト・アセットマネジメント総合運用グループ株式運用チーム シニアファンドマネジャーに聞いた。

■米中貿易摩擦の問題が長引く中、11カ月間で▲4.2%の下落に

 「SMTアジア新興国株式インデックス・オープン」は、アジア新興国の株価指数である「MSCIエマージング・マーケット・アジア・インデックス(円換算ベース)」に連動する投資成果を目指している。
2018年は、この指数の内容に変更点があったという。

 「2018年5月から、中国A株の指数への組み入れを開始しました。これまで指数に採用されていた中国株は、香港市場に上場している銘柄と、米国株市場に上場している米ドル建の銘柄(預託証券(DR))でしたが、ここに中国本土の中国A株が加わったということです。ただ、後ほど詳しくお話しますが、中国A株のウェイトは現段階では1%に過ぎず、指数への大きなインパクトはありません」(古賀シニアファンドマネジャー、以下カギカッコ同)。

 では改めて、2018年3月末~2019年2月末までの「MSCIエマージング・マーケット・アジア・インデックス(円換算ベース)」の推移とファンドの運用状況を振り返ってもらおう。古賀シニアファンドマネジャーは、「米中の貿易摩擦問題に終始した11カ月間でした」と語る。「他に、2回にわたる米朝の首脳会談もありましたが、北朝鮮そのものは投資先ではないため、どちらかというと米朝問題はセンチメント的な話だったと言えるでしょう。ただし、北朝鮮と停戦合意がなされていない韓国にとっては直接的な関わりがあり、米朝協議が進まないことで軍事費が削減できず、本当に必要なところに予算が使えないといった厳しさがあると思います」。

 2018年3月末に2万3514円だったファンドの基準価額は、2019年2月末には2万2521円となり、11カ月間の騰落率は▲4.2%だった。ちなみに、指数ベースでは2018年3月末が590.52、2019年2月末は529.32となっている。「結果的にマイナスではありますが、米中貿易摩擦問題が進展せず、それ以外にもいろいろニュースがあった割には、11カ月間を通して見たときの下落率はそれほど大きくはなかったという状況です」。

 ●基準価額の推移

 11カ月間を4つの期間に分けて、指数に影響を及ぼしたアジア新興各国のニュースをいくつか取り上げてもらった。まず、2018年3月末~6月末にかけては、最初に触れた米中貿易摩擦に対する懸念の高まりが挙げられるという。

 「1年前のこのインタビューでも、米国の保護主義的な政策が進めば、貿易依存度の高いアジア新興国への影響は大きいとお話しましたが、残念ながら実際そういう動きが出てきました。この期間には、トランプ大統領が2000億ドル規模の輸入品を対象とする新たな対中制裁関税や中国企業による対米投資を制限する措置の検討に入りました。具体的には、4月に中国通信機器大手ZTEに対してイランと取引したという理由で、米国企業との取引を禁止しました(7月に解除)。このことは、米国が本気であることを感じさせました」

 6月末~9月末の期間には、インドで大手ノンバンクのデフォルト(債務不履行)があった。「インド市場は、主要企業の好決算を受けて過去最高値圏まで上昇していましたが、大手ノンバンクのデフォルトがあったことでここから一気に相場が崩れました。とは言え、インドの指数は11カ月間で+5%と、期間全体ではプラスで着地しています」。

 続く9月末~12月末には米国市場が主導する形で世界的に株価が下落したが、アジア新興国指数も▲9.9%と大きく下落した。11月末のG20で関税の引き上げを90日間先延ばしにすると発表され、貿易摩擦緩和の期待が高まったが、一方で、12月に入ると中国通信大手ファーウェイの幹部がカナダで拘束されたという報道が出た。古賀シニアファンドマネジャーは、この報道が嫌気された可能性があると指摘する。

 「さらに、米国向けの中国製ハードウェアに『スパイ半導体』が組み込まれていたといった報道も出ました。また、中国のマクロ景気に目を向けると、景気先行指数と言われる製造業PMI(製造業購買担当者指数)が、2018年5月以降は下落基調でしたが、12月末についに50を割り込みました。ただし、50を下回ったため中国が景気対策に本腰を入れてくるということを見越してか、2019年1月に入ると相場は急反発しました」

 2018年12月末~直近の2月末まででは、前述のとおり、中国株指数は15%を超える上昇となり、アジア新興国指数も+9.5%と急反発したという。「FRB(米国連邦準備理事会)議長が追加利上げに慎重な姿勢を示したことで、新興国からの資金流出懸念が後退したことも要因の一つに挙げられるでしょう。また、MSCIがアジア新興国指数での中国A株のウェイト引き上げを発表しました。ウェイトの引き上げは、事前に投資家とのコンサルテーションによって決まるため、それほどインパクトが大きいわけではないはずですが、中国A株への資金流入は年初から増えています」。

■アジア新興9カ国の多様な約616銘柄に1本で分散投資できる

 次に、「SMTアジア新興国株式インデックス・オープン」の概要を改めて見ていこう。冒頭で説明したように、このファンドは「「MSCIエマージング・マーケット・アジア・インデックス(円換算ベース)」に連動する投資効果を目指している。このファンド1本で、アジア新興国9カ国の多様な業種・銘柄に分散投資することが可能です」。

 具体的な9つの国・地域の構成比は以下の通りだ。

●指数の国・地域別構成比
  
 「指数に採用されているのは872銘柄ですが、当ファンドではそのうちの約616銘柄(ETFを除く)に投資しています(数値は2019年2月末時点)。理由は、極端に流動性が低く取引コストが割高な銘柄は外しているためです。顕著な例としては、昨年5月に採用された中国A株があります。指数に採用された中国A株は234銘柄ですが、指数でのウェイトは約1%です。1%で234銘柄を分け合うので、1銘柄あたりのウェイトは非常に小さく、すべて買っていてはコストがかかり過ぎるので、中国A株は影響度の観点から銘柄を絞り込んで組み入れています」。

 もちろん、銘柄数を絞っても、指数との連動性は保てるようにポートフォリオ全体を調整している。「これまでもそうでしたが、中国A株採用前と採用後でも、トラッキングエラー(指数との乖離)は変わらない水準を保っています」。

 アジア新興国指数の中国A株については、今年以降、段階的にさらに組み入れる銘柄を増やしていく見通しになっているという。「市場へのインパクトを考えて、初期段階では銘柄数を抑えていますが、MSCIのリバランスのタイミングに合わせて、少しずつウェイトが引き上げられる予定です」。

 現在、MSCIアジア新興国指数に占める中国株は全部で約43%だが、中国A株の組入れ銘柄数が徐々に増えていくことで、中国株全体の比率は限りなく50%に近づいていく。この点について、古賀シニアファンドマネジャーに聞いた。

 「ウェイトが上がれば、当然、中国の影響度合いは高くなります。たとえば、値動きのぶれが大きくなるといったことは、起こりやすくなるかもしれません。ただ、MSCIアジア新興国を見渡した場合、成長率が高いのはやはり中国です。アリババやバイドゥに代表されるIT系の新興企業なども、中国から多く誕生しています。一方、中国、台湾、韓国を除く、東南アジアの国々ではそうした産業は今のところあまり目立っていません。

 また、中国の経済成長の中身が変わってきていることにも注目しています。以前は大掛かりなインフラ投資で高成長を目指すといった姿勢が強かった中国政府ですが、最近は『成長の質』にも目を向けるようになってきています。たとえば、中国企業でもCSRレポートを出すところが増えてきたり、環境への配慮やガバナンスを重視した企業が出て来たりといった変化です。国レベル、企業レベルでリスクを抑える方向に変わっていけば、長期投資に向いた値動きになっていくということが考えられます」

■直近1年については、中国は安定成長を確保する可能性が高い

 今後のアジア新興国の動向については、どのように見ているだろうか。直近1年に関しては、中国の安定的な成長が貢献するのではないかと古賀シニアファンドマネジャーは語る。

 「政治的な話になりますが、今年10月には中華人民共和国が建国70周年を迎えます。さらに今年は、中国政府が『所得倍増計画』を打ち出して10年目、最後の年に当たるので、そのような節目の年に経済が減速することがないように、断固とした政策を打ってくるのではないかと考えるからです」

 また、もう少し長いスパンでは、米中貿易摩擦問題が決着を見た後の中国の変化に注目していきたいという。「たとえば、これまで中国は安い労働力を背景に高い経済成長を遂げてきましたが、国内の労働賃金が上昇したことで、今後は国外に労働力を求めて行かざるを得ません。さらに、中国では高齢化が急速に進んでいて、その対応も求められていくことになります。そうした中で、新たに付加価値の高い産業が出てくるのか、そこは一つの注目ポイントになると思います」。

 ところで、MSCIの指数にはアジア新興国指数のほかに、単なる新興国指数(MSCIエマージング・マーケット・インデックス)もあり、後者に連動するインデックスファンドもある。新興国全体ではなく、あえてアジア新興国に投資する意味はどこにあるのだろうか。

 「パフォーマンス自体には、実はそれほど大きな差はありません。なぜなら、新興国全体の中で約70%がアジアの国だからです。逆に、アジア以外の新興国ではブラジルやロシアなどがありますが、日本人にとってはアジアの国々のほうがやはり身近なのではないでしょうか。新興国全体のほうがより多くに分散投資できるという面はありますが、日本にとってアジア新興国の重要性は増していて、アジアの企業のファンドは日本の投資家にとっては理解しやすいのではないでしょうか」

 最後に、「SMTアジア新興国株式インデックス・オープン」のコスト面を確認しておこう。ネット証券5社で購入した場合の購入時手数料はノーロード(0円)で、信託報酬は0.648%(税抜0.6%)。なお、換金時には0.3%の信託財産留保額がかかる。ファンドのより詳しい情報はこちらのページで確認できるので、ぜひ参照して欲しい。

(取材・記事:肥後 紀子 / 撮影:藤野 宙志 / 編集・制作:グッドウェイプロモーション事業部)






11:51 | 写真:投資家向け




 

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