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2015/08/07

【トムソン・ロイター】GMS2015、特別パネルディスカッション「FinTech革命が必要とする法規制とインフラ~仮想通貨をめぐる動向と展望~」講演レポート

| by:ウェブ管理者


 2015年7月2日(木)、トムソン・ロイター・マーケッツは、「
GMS2015:FinTechが導く金融サービスの未来~企業の経営モデルと人々のライフスタイル~」において特別パネルディスカッションを行った。トムソン・ロイター・マーケッツはGRC( ガバナンス、リスク、コンプライアンス) にかかる情報、ソフトウェア、プロフェッショナルサービスの提供、また、ビットコイン業者向けにも法規制情報サービス、マネーローンダリング対策情報、eラーニングなどの提供をしている。ここでは「GMS2015」におけるトムソン・ロイター・マーケッツ株式会社による特別パネルディスカッションを紹介する。

<パネリスト>
 bitFlyer 代表取締役 一般社団法人日本価値記録事業者協会 代表理事 加納 裕三 氏
 創法律事務所 弁護士 一般社団法人日本価値記録事業者協会 監事・顧問弁護士 斎藤 創 氏
 国立情報学研究所 情報社会相関研究系 准教授 岡田 仁志 氏

<モデレーター>
 トムソン・ロイター・マーケッツ GRC 事業部 事業開発部長 和田 雅憲 氏



◎仮想通貨 / ビットコイン とは何か?ビジネス動向(技術、ビジネス面)について

 仮想通貨とは何か。岡田氏は、米国法( 米財務省: Code of Federal Regulations ) における「通貨」の定義と、FinCEN による「仮想通貨」の定義を引用し、『仮想通貨= 通貨-強制通用力( legal tenderstatus ) 』からスタートすることがわかり易く、『みんなが受取る限りにおいて通貨となるもの』と解説した。また加納氏は、ビットコインについては、将来の新たな概念が生まれてくることを制限しないように、日本価値記録事業者協会(JADA)としても慎重にその定義について議論しているとした。発行銀行のないビットコインは世界中の誰かにより1 0 分毎に採掘(マイニング)されており、1回の採掘で新たに生まれるビットコインは25 BTC(BTC:ビットコインの通貨単位)(以前は50 BTC )、現在の流通時価総額はおよそ4,500億円という。

 加納氏は、ビットコインについて、『マイニング』と『流通』の二つに大分されるとした。ビットコインを無から生成する『マイニング』はコンピューターによる計算処理により行われるため、CPU / GPU といった、より高速なプロセッサへの設備投資と電気代が必要となり、もはや日本の電気代の水準ではペイできないため、最近は中国など電気代の安い国へシフトしていると述べた。

 一方、『流通』はマイナー(マイニングを行っている人)が保有するコンピューターパワーを借りることで、ビットコインを入れておくワレットを通じた支払いや受取りのほか、ATMや国際送金といった付随サービスを実現しているという。

 加納氏が経営するbitFlyer では、ビットコインの取引相手となる販売所としての役割のほか、ビットコインの売買を行う場所を提供する取引所としてのサービスを新たに開始した。
加納氏は学生時代にプログラミングに精通し、その後は外資系金融機関でトレーダーを経験。FinTech分野での起業にあたり、ビットコインに対して国家や人々の信認が高まってきたことで基礎要件が得られたと判断し、bitFlyerを設立したという。なお、bitFlyerと同じくビットコインを取り扱う取引所は世界に数十社ある。

◎ビットコインビジネスにおける法規制について


 斎藤氏によると、日本では、2014年2月にビットコイン取引所MTGOX(マウントゴックス)の破綻をきっかけに国会で審議され、自民党IT特命委員会での議論と中間報告(2014年6月)では、そのポテンシャルと成長に期待し、ビットコインについては規制が必要ないと判断。

 公表されたガイドラインの中では、最終的に「通貨」という言葉は使わずに規制や監督官庁を定めず、通貨でもなく物でもない新たな分類「価値記録」とし、出資法、銀行法、犯収法(犯罪収益移転防止法) など通貨に関する法律は原則適用しないこととした。一方、消費税・キャピタルゲイン課税とすることや、本人確認や消費者保護の観点から自主規制団体の設立が求められた結果、自民党IT戦略特命委員会のサポートを担う一般社団法人日本価値記録事業者協会(JADA)を設立(2014年9月) 。

 関係各省庁( 経産省、金融庁、国税局、警察庁、消費者庁、日銀など)と密に連携し、参加事業者に対して、本人確認、マネーローンダリング(資金洗浄)、セキュリティ、消費者保護などの自主規制ガイドラインの作成および各種情報の収集( 海外とのネットワークなど)を行っている。

 また最近の大きな動きの一つとして、2015年6月に資金洗浄・テロ資金対策の国際機関である金融活動作業部会(FATF) がビットコインをはじめとする仮想通貨の取引所に登録制や免許制の実施などを求める指針をまとめたことを受け、今後各国のガイダンスで議論が進んでいくと解説した。



◎ビットコインの利用拡大、金融機関や消費者へのインパクト


 岡田氏は、1990年代にイギリスで実証実験された電子マネーのモンデックス(Mondex)などが現金に代替することはなかったが、ビットコインにおいては、お金は天下の回りものというように発掘者の手を離れ、よりお金であるかのように動くようになってきたとし、ビットコインはインターネットが登場したばかりの頃(夜明け前の黎明期)のような状況にあり、香港やシンガポールで増えているオーストラリアワインの個人輸入での国際ECの活用事例や国際クレジットカードを持たない中南米の居住者からアメリカ本土への国際EC決済の利用が伸びていると
する見方を紹介。今後、日本でも東南アジアや東アジアとのEC開拓が進む可能性について言及した。

 また、加納氏は、ビットコインが与えるインパクトについて、これまでのSWIFTを使った海外送金では手数料が最低でも4,000円といった送金手数料や為替手数料が、ビットコインであれば数円~10円に数百円の手数料で国際送金ができるようになるため、これまでなかった数百円~数千円といった少額の国際送金の需要が新たに開拓されることが期待されるとした。一方、ビットコインでは間違った送金を元に戻せない、高額な送金においては手数料以上にボラティリティの影響が大きいといったデメリットについても触れ、決して既存の金融機関が取り扱う国際送金の全てを代替するといったものになるわけではないとした。むしろ、さらに大きな視点で捉えると、ブロックチェーンという技術そのものの活用に注目し、その利用の幅は、株、債券、不動産といった資産に関するものに留まらず、自動車のナンバープレート、法人登記、マイナンバーの管理までブロックチェーンを活用したイノベーティブなシステムが将来生まれてくる可能性があると語った。




◎仮想通貨に対する信認、発展する上での課題(法規制面、税制面など)

 ビットコインは、過去には1日で10~20%も動くほどの高いボラティリティがあったものの、最近では1BTCあたり28,000~32,000円と一定の水準を保ってきたことから決済に使いやすくなったと言える一方、取引対象としては値動きが減少したことでつまらなくなったとの声も聞かれるビットコイン。最近のギリシャの債務問題では銀行預金の引き出しに制限がかけられるなど、そのような状況下で仮想通貨をどのように捉えるべきか注目を集めている。加納氏によると、世界中の取引所で2 % 以上の価格の乖離が発生すると裁定取引が行われるとし、ドル、ユーロ、円に比べると信認が弱いビットコインも世界を見渡せば最近廃止されたジンバブエドルなど国家の信認の弱い国では、むしろ信用が高いという見方もある。

 ビットコインには、新しいものとして規制されたくない側面と、信認と安心が求められる二つの側面があるが、500種類以上ある仮想通貨において、ビットコイン業界である程度の利用が進む中で今後のビジネスの発展を考えるとある程度の規制は必要だとする声も高まっている。ものでも通貨でもないビットコイン。パソコンやスマートフォンでどこからでも簡単に扱えるにも関わらず、日本国内では消費税がかかるという世界との格差は今後の発展に与える問題も大きく、まだ少し時間はかかるかもしれないがこの格差を変えていく必要があるとした斎藤氏。ビットコインの現状と今後の展開から目が離せない。

(取材、撮影、記事、編集・制作:グッドウェイ メディアプロモーション事業部 )




18:59 | 取材:金融・IT業界向け

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